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インタビュー:GPIFの株式投資、著しい自国偏重はない=理事長

 大林 優香記者  程 近文記者

 3月31日、年金積立金管理運用独立行政法人の川瀬理事長はインタビューで、株式投資について、海外の公的年金と比べ、自国偏重度合いは低いとの認識を示した。2008年撮影(2010年 ロイター/Toru Hanai)

 [東京 31日 ロイター] 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の川瀬隆弘理事長は31日、ロイターとのインタビューで、現行ポートフォリオにおける株式投資について、海外の公的年金と比べ、自国偏重度合いは低いとの認識を示した。

 国内企業年金の間では分散効果の改善に向け、国内株を減らし、海外株を増やす「ホームカントリーバイアス(自国偏重)の修正」が徐々に広がりつつあるが、世界最大の公的年金はこの動きに追随しない見込み。

 GPIFは資産規模が120兆円を超える巨大な運用機関で、基本ポートフォリオにおける株式比率は20%。その内、国内株が55%、海外株が45%を占める。日本の株式時価総額が世界の約1割に過ぎないことを考慮すれば、年金の国内株比率55%は高すぎるとの見方もある。

 現在、企業年金の内外株比率は一般的に国内6割、海外4割と国内株が外株を上回っているが、自国偏重を徐々に修正する動きが出ている。

 川瀬理事長は「海外の年金基金も株式投資を開始した際に国内株からスタートした経緯があるため、自国の株式比率が高い。英国など他国に比べ、(GPIFの株式投資に)著しいホームカントリーバイアスはない」との見方を示した。業界関係者によると、フランスや英国などの公的年金は株式資産に占める国内株比率が5─6割で、各国の株式時価総額が世界に占める割合を大きく上回っている。ただし、今月開催の「GPIFの運営のあり方に関する検討会」で野村資本市場研究所が提供した資料によると、カナダやスウェーデンなどは海外株比率は国内株比率の2倍以上で、運用手法は国により多様化している。

 <新興国株投資について研究中>

 外資系投資顧問によると、企業年金などでホームカントリーバイアスの修正が続いているのは「日本経済に対する不安感が高まっていることが最大の理由だが、新興国の成長を取り組んで行きたいという意向から新興国に対する関心が昨年後半から急速に高まった影響も大きい」。例えば、中国、ブラジル、インドを含む22カ国の新興国株で構成するMSCIエマージング・マーケッツ(EM)など、新興国特化型の指標に連動するファンドの導入なども増えつつあるという。

 GPIFの川瀬理事長は、外国株に占める新興国株の比率を増やし「成長リターンを狙って行くという考え方は一理ある」としながらも、「中国やブラジルなど高成長中の新興国の恩恵を日米企業なども十分受けており、(GPIFの既存の運用が)新興国の成長を見逃しているとは言えない」と語った。また「新興国株投資は、カントリーリスク、為替リスク、財務指標の信憑性リスクなども考慮する必要があり、(投資を増やすべきかどうかについては)見方が分かれる」と述べた。

 さらに、日本の高度成長期のように、高成長を続ける新興国では成長が減速した場合は不況色が広がり、企業収益も落ち込むため、「GDPの成長率が高い国の企業に投資することが必ずしもいいわけではない」との見方を示した。ただGPIFとしては新興国株投資について「いろいろな研究をしている」と付け加えた。

 川瀬理事長は31日付けで任期を終えるため、新年度以降の運用方針について具体的なコメントは控えた。ただ、2010年度以降の年金給付に必要な流動性確保は重要な課題とみており、資産の管理ベンチマークとして採用中のTOPIX(国内株)、NOMURA─BPI総合(国内債券)について、「現金化する場合のコストや市場へのインパクトなどの観点から、国内株はTOPIXだけでいいのか、国内債券はNOMURA─BPIだけでいいのか、ということは引き続き研究課題になるだろう」と述べた。

 GPIFは先月、2010─2014年度の中期計画案の中で、上限2兆円の短期借入金の活用制度を盛り込む方針を示した。これも年金給付に必要な流動性確保のため「市場の価格形成に配慮しつつ、円滑に資産売却を行い、不足なく確実に資金を確保するための機能強化」(GPIFの玉木伸介審議役)で、有力な金融機関などを通じた調達を想定しているという。

 (ロイター日本語ニュース 編集 宮崎 大)

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