[東京 8日 ロイター] 米系投資ファンドのスティール・パートナーズは8日、今月30日に予定されているサッポロホールディングス2501.Tの株主総会でスティールが提案した10人の取締役候補が選任されるように、委任状勧誘を開始したと発表した。スティールは6日に全株主に対して委任状を勧誘する書類を送付したという。これに対し、サッポロHDは、主要株主に対して委任状勧誘を行う考えを示し、事実上の委任状争奪戦に突入した。サッポロとスティールが委任状争奪を行うのは07年3月の株主総会以来2度目となる。
スティールはサッポロHD株を約18%持つ筆頭株主。サッポロの経営計画の度重なる下方修正やシェア低下などを理由に、村上隆男社長ら現経営陣の退任を求める一方、現取締役4人の再任に独自候補6人を加えた計10人の取締役候補を株主提案している。一方、サッポロは「スティールの提案は企業価値をき損する」、「スティールの指摘は事実誤認が多い」として反対を表明。すでに交代を発表している福永勝サッポロビール社長を除く現経営陣10人中9人を再任する会社側の取締役候補案を出している。
スティールがサッポロ株主の委任状勧誘を行うのは07年以来2度目。07年には、大規模買い付けルールをめぐって対立したが、会社側提案が支持を受けた。今回は、個人株主向けの説明に力点を置いているという。スティール関係者は、破たんした際に株主責任が問われた日本航空(JAL)のようにはなりたくないとした上で、「債権者は保全されるが、個人株主は議決権行使しかできない。今回は個人株主がキャスティングボートを握っている」と述べている。今後、東京、大阪など7都市でサッポロ株主に向けた説明会を開催する予定。
これに対し、サッポロの上條努常務は記者団に対し「主要株主に対してわれわれの主張を説明し、理解を得て、委任状をお願いする」と述べ、今後、主要株主に向けた説明を行い、理解を求める方針を明らかにした。また、個人株主に対してはホームページや書面を通じて理解を求めていきたいとしている。
サッポロの株主構成は、09年6月時点で、金融機関34.3%、外国人31.8%、個人16.8%、国内法人14.9%などとなっている。
09年の株主総会では、サッポロが提案した取締役候補案と大規模買い付けルールの継続にスティールが反対したものの、株主提案は見送っていた。総会では、議決権行使率86%、取締役の選任は75%、買収防衛策の継続は64%の賛成票を得て可決された。
スティールは、09年5月に開かれたアデランスホールディングス8170.Tの株主総会で、外国人株主の支持を得て経営陣の交代を成功させた例がある。
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(ロイター日本語ニュース 清水 律子記者)
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