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G20声明に「反保護主義」明記せず:識者はこうみる
2017年3月19日 / 03:51 / 9ヶ月前

G20声明に「反保護主義」明記せず:識者はこうみる

[東京 21日 ロイター] - ドイツ南西部のバーデンバーデンで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は18日午後(日本時間同日深夜)、焦点だった「反保護主義」を共同声明に明記できないまま閉幕した。市場関係者のコメントは以下の通り。

 3月21日、ドイツ南西部のバーデンバーデンで開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、焦点だった「反保護主義」を共同声明に明記できないまま閉幕した(2017年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

<三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏>

20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、貿易赤字削減に固執する米国の強い要求で「保護主義に対抗する」との文言が声明から削除された。

米国第一主義という米国の「狭量」は、他の国々の「狭量」も招いていく。

中国は年明けから1月24日まで人民元高に誘導していたが、2月20日から態度を一変させて反撃モードとなり、中国製品への高関税の報復として人民元安を追求すると言わんばかりに元安誘導を続けている。

インフレ率が上昇してきたユーロ圏は事前の戦いの準備として、資産買入れを減らさずとも利上げを選択することも十二分にあり得るとアピールし、最近のユーロ高/ドル安に一役買っている。

また、ショイブレ独財務相はドイツの貿易黒字は不正な操作をした結果ではなく独製品競争力の賜物であるとし、トランプ政権の「ドイツが過小評価されたユーロを利用している」との批判を退けている。

一方、先の日米首脳会談で安全保障面で米国のお墨付きという成果を得た日本では、G20に向けて特に「企て」という意味合いでの準備はしていなかったようだ。

しかしトランプ政権は、選挙戦を通じて大げさな表現で白人中間層の期待を惹きつけたからには、職を与えたり為替相場で結果を出す必要に駆られるはずで、政治的な足跡を残すのに最も組しやすい国は、既に「アメ」を与えた日本ということになるのではないだろうか。

高官人事の遅れも目立ち本格始動できていないとなると、なおさらオカネをかけずに手軽にできる「為替政策」に逃げ込む可能性は十二分にある。

足元でできることは「ドル安」しかない米国にとって、円は格好のターゲットとなりそうで、ドル安/円高のリスクに注意すべきだろう。

ムニューシン財務長官は「強いドルは長期的によいこと」との発言を繰り返している。この発言には、米国は一方的な抑制の効かないドル安を指向するわけではない、とのニュアンスが込められているとみている。

ドル安のアクセルはトランプ氏や通商政策担当の要人に任せ、米財務省はたまにブレーキを踏むという役割分担ができているとも考えられる。

<HSBC 為替資金営業部長 花生浩介氏>

米連邦公開市場委員会(FOMC)やG20を通過し、短期的にドル/円相場はネタ不足気味といえる。目先は111─115円でのレンジ相場が継続しそうだ。

米10年債利回りは、2.6%前半を頭に従来レンジに戻ったようだが、これはある意味で仕方のない動きだろう。まだトランプ・プレミアムが数量化されておらず、どの程度の成長を織り込めばいいかが見えないためだ。

これからは、トランプ・プレミアムを査定する局面といえる。とりわけ税制の話では、オバマケアの扱いを決めなければ財源にめどがつかないため、改正案がどのように決着するかが市場で注目されるだろう。

次回の利上げの思惑もある6月FOMCにかけては、トランプ税制のある程度のスケジュール感も徐々に固まり、その効果を計量化できるようになるだろう。そうすれば、米利上げ軌道のイメージも出てきて、ドル/円も水準感が決まってくる。

この間にトランプ政策の進ちょくが伝わるようなら、ドル/円は材料次第でレンジ上振れの可能性があると見ている。

110円割れといった下方リスクもくすぶってはいる。ただ、これまでのところ新興国の株式市場が米利上げをバランス良く織り込んで、大崩れしていない。リスク回避の円高は、あまり警戒しなくてもいいのではないか。

リスクシナリオは、トランプ政策が議会で紛糾し、年内の実現が見込み薄となることだ。来年に持ち越しとなって、年内の利上げ見通しも2回に後退するようなら、失望感からドル/円は下げが強まるだろう。

<ニッセイ基礎研究所 シニアエコノミスト 上野剛志氏>

事前報道の内容と大きな違いはみられず、この意味では驚きは少なかったといえる。ムニューシン米財務長官からの他国批判も聞かれなかった。為替相場への短期的な影響は限定的ではないか。

ただ、長期的にはネガティブな面が意識されやすい。一番大きい論点だった保護主義に対抗するとの文言が削除されたことは重要だ。

これまでG20として保護主義反対の立場に強い異論はなく、声明にも反映されていたが、もはや大義名分を失った面がある。

米国は開かれた自由貿易の推進役で、保護主義反対の世界的なリーダーだった。保護主義への対抗姿勢を示す定番の文言が、その米国が主導するかたちで外された。

このため、世界が保護主義に傾くリスクが出てきた。米国が保護主義を強めれば他国に連鎖しかねない。貿易紛争が世界で多発することの歯止め役は、G20に期待できなくなった。

為替については、米国も通貨切り下げ競争への反対や、過度な変動・無秩序な動きが悪影響だという認識に異論がないことは変わらない。

ただ、米国はまだ政権の体制が整っておらず、政権内での為替に対する考え方がまとまっていないだろう。将来にかけて楽観していい話ではなく、これからも引き続き、米政権内部での議論や要人発言に警戒する必要がある。

<SMBC日興証券 金融財政アナリスト 末澤豪謙氏>

共同声明に関して、従来と大きな変更点が2つある。1つは「あらゆる保護主義に反対する」という文言が消えたこと。もう1つは、地球温暖化防止関連の項目が一切抜けてしまったことだ。

トランプ政権が掲げる米国第一主義と地球温暖化に対して、懐疑的なスタンスが基本的に表明されている。G20が協調しようとするベクトルが相当変化した印象を受ける。

今後の貿易に関してみると、米国は2国間の交渉を進める方向にあるので、日本にとってTPP(環太平洋連携協定)に代わるFTA(自由貿易協定)を実施することになったとき、自動車、農業など米国がターゲットにしている分野について、今より厳しい交渉にさらされる可能性が高い。

マーケットへの影響は、為替政策について従来の規定が盛り込まれているので、基本的には自由な貿易を尊重するというスタンスは残っているとは思う。

だが、今後、米株式市場が停滞したときに、トランプ政権が日本や中国に対して個別に要求を突き付けてくる可能性がある。

<みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト 三浦 豊氏>

「反保護主義」を共同声明に明記できなかったことは、ドル安・円高圧力になると見られる。米国との2国間協議で貿易協定を結ぶ際のプレッシャーとなってくるだろう。

半面、為替政策でこれまでの合意事項に変更がなかったことは、市場に安心感をもたらすだろう。週明けの東京外為市場は、ややドルが買い戻される動きとなりそうだ。だが、1ドル113円台を中心とした現在の水準に変わりはないと想定される。

日経平均株価.N225は、20日の米国市場次第だが、今回の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の結果により、大きく変動することはないと見込まれる。

株はG20よりも原油先物相場や米景況感の行方を注視しており、連休明けは17日の終値(1万9521円59銭)近辺で寄り付く公算が大きい。

目先の焦点は、23日に行われる学校法人「森友学園」の籠池泰典氏の証人喚問や、フランス大統領選を巡る報道となる。米国市場の水準に変化がなければ、来週は1万9200円─1万9600円内での値動きとなろう。

*内容を追加しました。

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