August 17, 2015 / 6:02 AM / 5 years ago

焦点:実態悪化のGDP、輸出・消費不振で政府に先行き懸念

[東京 17日 ロイター] - 2015年4─6月期国内総生産(GDP)は、成長率の数字自体よりも実態が悪い事を示しているとの指摘が民間エコノミストから相次いでいる。日用品価格の上昇による消費の弱さや中国やアジア向け輸出の急速な悪化がその要因として指摘され、政府内にも落ち込みが一時的なものに留まるかどうか、先行きを懸念する声が出始めた。

 8月2015年4─6月期国内総生産(GDP)は、成長率の数字自体よりも実態が悪い事を示しているとの指摘が民間エコノミストから相次いでいる。都内で6月撮影(2015年 ロイター/Thomas Peter)

<在庫増と輸入減のGDP押し上げ、喜べない内容>

「見かけの数字以上に内容が悪すぎる」──。今回のGDPを見て、民間調査機関からはこんな声が相次いでいる。年率1.6%のマイナス成長は、事前の平均的な見通しより多少良かったものの、在庫投資が予想より上振れ、輸入が思ったより減少した。

内需の低迷で在庫が溜まり、輸入量も需要減に対応して減ったとみられる。「在庫と輸入による成長率押し上げは決して喜べる話ではなく、消費の下振れも予想以上に深刻だ」(第一生命経済研究所 ・主席エコノミスト、新家義貴氏)との指摘が出ている。

多くの民間エコノミストによって注目されているのが、消費マインドの悪化だ。4─6月期の民間最終消費は、1年ぶりにマイナスとなった。政府内からも「デフレマインドが払しょくされていない」との声が上がる。

政府関係者からは、原油安や円安の恩恵を受けている企業が、賃上げや設備投資に対し、期待通り動いていないとの不満がくすぶる。

<停滞する消費性向>

今回のGDPの結果について、甘利明・経済再生相は17日の会見で「マイナス成長は、天候不順の影響など一時的な影響がかなり大きい」とコメントした。

だが、本当に7─9月期から景気が上向くのか、民間エコノミストだけでなく、政府関係者の一部からも懸念の声が漏れている。

例えば、政府が重視する個人消費。エコノミストの中には、猛暑効果や夏物セールの後ろ倒し効果、ボーナス支給といった追い風で持ち直すとのシナリオを描く声が多い。

だが、その一方で消費性向が低下しているために、回復は極めて緩慢との見方が広がっている。

安倍晋三政権発足以降、ほぼ74%以上で推移してきた消費性向は、今年4月と6月は73%台に低下。支出に慎重姿勢を強めていることがうかがえる結果となった。背景には、物価を差し引いた実質値でみた賃金の伸びが鈍い現実がありそうだ。

今年の春闘で、連合の参加労組のベアは平均0.7%、日本全体では概ね0.5%程度に過ぎず「まだまだ力不足」(内閣府幹部)という状況になっている。

政府内には今年秋からの最低賃金の引き上げ実施に伴い、その効果が勤労者全体に波及するはずとの読みもあるが、早くも「来年の春闘での賃上げにも、引き続き取り組むことになる」(政府関係者)との声が上がる。

<中国含めアジア輸出が不振>

ところが、賃金の原資となる企業収益の先行きに不透明感が出始めている。4─6月期GDPをみると、輸出の落ち込みが目立っている。前期比4.4%もの減少は東日本大震災でサプライチェーンが機能しなくなって以来の大きさだ。

中国やその他アジアの景気減速が明らかに影響しており、アジアの成長をテコに事業の拡大を図ってきた企業には痛手となった。

このため「輸出の低迷が長引く恐れがあり、在庫調整圧力の高さから生産活動の停滞が続く可能性があるなど、景気の下振れリスクは高い」(ニッセイ基礎研究所・経済調査室長・斉藤太郎氏)との見通しも出てきた。

輸出や海外生産の停滞は、国内生産や設備投資にも波及しかねない。4─6月期はマイナンバー対応のシステム投資や物流効率化、イノベーション投資など、老朽化設備の更新に加えて新たな投資の潮流が期待されていたが、ふたを開ければ3四半期ぶりのマイナスに落ち込んだ。

今回の結果は、内外需ともにしっかりと回復するというシナリオの現実味を問うものだ。本来であれば、原油価格下落に伴う海外からの所得流入が続き、企業収益から家計所得と設備投資へと好循環が働くはずだった。

ニッセイ基礎研によれば、交易利得は1─3月期の5.2兆円に続き、4─6月期も2.1兆円の改善となっている。

しかし、GDP統計から明らかになったのは、円安の副作用や企業・家計のデフレマインドにより支出に回っていない点だ。

この結果、7─9月期のGDPは回復力が弱くなると見るエコノミストが増えている。「15年度の成長率見通しはプラス1.0%を割り込む」(みずほ証券)との見通しも出てきた。

そうなれば政府、日銀のいずれの見通しも下回り、経済対策と年内の追加緩和観測が強まる、との声も市場で浮上してきた。

17日の日経平均.N225が取引進行につれて、上値を切り下げてきたのも、こうした「見かけよりも悪いGDP」の実態を織り込んできたからもしれない。

中川泉 編集:田巻一彦

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