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焦点:独新政権へ連立交渉、左右どちらでも市場は歳出拡大を想定

[27日 ロイター] - ドイツでは26日の連邦議会(下院)選挙を受け、新政権樹立に向けた各政党の連立交渉が始まった。ただ投資家の見立てでは、誰が首相になっても財政を緩め、歳出を拡大する姿勢は継続されそうだ。

9月27日、ドイツでは連邦議会(下院)選挙を受け、新政権樹立に向けた各政党の連立交渉が始まった。写真はベルリンの党本部でブーケを手にする社会民主党(SPD)のショルツ氏(中央)ら(2021年 ロイター/Hannibal Hanschke)

今回の選挙ではショルツ財務相が率いる中道左派の社会民主党(SPD)が、メルケル首相が属する保守連合のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)を僅差で下して第1党の地位を確保。どちらの勢力も、第3党となった環境重視の緑の党と、第4党で企業寄りの自由民主党(FDP)に対して連立の働き掛けを行っている。

各党のシンボルカラーにちなんで、SPD(赤)と緑の党(緑)、FDP(黄)の連合は「信号」、CDU・CSU(黒)と緑の党、FDPの連合は国旗の色使いが同じであることから「ジャマイカ」と呼ばれる。

もっとも連立交渉を見守っている投資家にとって、この2つの連合の主な違いはそうした色の組み合わせぐらいかもしれない。財政規律維持を目的とする「債務ブレーキ条項」の早期復活を求めているFDPを除けば、他の政党は全て、より柔軟に歳出を行うことにある程度前向きな姿勢を見せているからだ。

フィデリティ・インターナショナルのグローバル・マクロ・エコノミスト、アンナ・ストゥプニツカ氏は「緑の党が連立の一角を担いそうなので、ジャマイカでも信号でも財政政策はより拡張的になることを意味する」と予想。それでも市場にとって最も好ましいのは、SPD、緑の党、FDPという「信号」の組み合わせで、過去数十年の政策が根本的に変わると指摘した。この連立政権による歳出拡大は、公共投資拡大を通じて経済成長を支えると見込まれている。

CDUが政権を主導してきた2005年以降はドイツ国内とユーロ圏が厳しい緊縮財政措置の下に置かれた期間が続き、公共投資が抑え込まれたとの批判がある。ただ昨年3月に新型コロナウイルスのパンデミックが発生した後は、歳出拡大への道が開けた。

昨年膨らんだ歳出は、過去最高の1300億ユーロの新規借り入れによって手当てされ、今年の借入額は2400億ユーロに増える見通し。憲法で義務付けられた借り入れ上限は来年まで適用が停止される公算が大きく、さらに997億ユーロの調達余地が残る。

アムンディのドイツ最高投資責任者を務めるトマス・クルーゼ氏は、SPD主導の連立なら政府支出がより増える可能性があり、CDU・CSU主導の政権は減税による民間投資の刺激を選択するだろうが、どちらにしても株式にとって追い風だとの見方を示した。

クルーゼ氏によると、緑の党が双方の連立で重要な役割を果たす以上、とりわけグリーン・トランジション(環境配慮や持続可能な社会への移行)加速で恩恵を受ける企業に関する投資機会を探っていくという。

<債券への影響>

もちろん各党間には、すり合わせが必要な幾つかの意見の違いがあり、特に緑の党とFDPは他党との協議に入る前に、妥協点を見いだすための話し合いを開催する予定だ。

緑の党は債務ブレーキ条項の「改革」を公約に掲げ、SPDと同様に富裕層への増税に賛成している。CDUは所得税を増税しないと約束するとともに法人減税を目指す構え。FDPは富裕層と企業向けの減税を提唱する。

住宅市場改革や脱炭素社会への移行ペースを巡る問題も、連立交渉の厄介な対立点になってもおかしくない。

NNインベストメント・パートナーズの投資戦略責任者マルコ・ウィルナー氏は「交渉結果は公益株や不動産株の変動につながる公算が大きい」と語った。

一方、欧州中央銀行(ECB)による買い入れという仕組みがある以上、歳出拡大は債券市場に深刻な影響を及ぼしそうにない、というのが投資家の見方だ。複数のアナリストによると、ここ数週間SPDの優勢が強まるとともに利回りは上昇したものの、これは物価指標や金融政策を巡る不安感も背景にあったという。

<親欧州は確実>

折しも欧州連合(EU)は財政ルールについて、2023年の再導入を前に見直し作業が行われている。この問題は多額の債務を抱える南欧諸国の国債に投資している人々にとって注目要素の1つだ。

FDPとCDUは、EUの財政ルールを厳格な内容に戻すことを望んでいる。SPDは、将来の危機に対処できるほどの柔軟性を与えるという条件で、やはり財政ルール維持を支持する。ただSEBのエコノミストチームは、SPDと緑の党が主導する連立政権ならば、「EU加盟国に対して速やかに財政赤字を縮小せよと要求する圧力を弱めるだろう」と述べた。

今回のドイツの選挙で、有権者が極左の左派党と極右のドイツのための選択肢(AfD)にいずれも拒否反応を示したのは、来年にフランス大統領を控える欧州の政治情勢にとっては好ましい兆しと言える。

アリアンツ・グローバル・インベスターズのシニア投資ストラテジスト、ハンス・イエルク・ナウマー氏は「連立政権がどんな形でも、親欧州姿勢にはなる。重要なのはドイツが欧州にとって信頼できるパートナーであり続けるということだ」と述べた。

(Yoruk Bahceli記者、Dhara Ranasinghe記者)

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