January 8, 2018 / 11:03 PM / 14 days ago

コラム:北朝鮮問題、まだ残る「外交解決」の可能性

John Glaser

[5日 ロイター] - 北朝鮮の核兵器開発をめぐる緊張は高まる一方だが、ここへ来てようやく、外交面で明るい兆しが見えてきた。

北朝鮮は長らく停止していた南北国境における韓国側とのホットライン(直通電話回線)の運用を3日再開。前日には韓国政府が2国間協議を提案し、2日前には金正恩朝鮮労働党委員長が「新年の辞」において、韓国との対話に柔軟な姿勢を示した。

だが米国のヘイリー国連大使は、局面打開の可能性について質問されると、それを一蹴。「北朝鮮の核兵器全廃に向けて何らかの行動がない限り、いかなる協議も真剣に検討するつもりはない」と述べた。

ヘイリー大使のコメントは、トランプ政権の外交政策をこれ以上ないほど明確に示している。すなわち、外交は時間の無駄遣いであり、敵対国が一方的に屈服し、こちらの要求をすべて受け入れる場合に限り、協議に応じる、というものだ。

問題は、こうしたアプローチが功を奏することは、まれだという点だ。確かに外交努力が失敗に終わることもある。だが声高な恫喝は、ほぼ確実に、似たような恫喝と抵抗を引き出すものだ。

例えば、第2次世界大戦後の米国政府が使ったソ連に対するアプローチを考えてみよう。米歴史学者メルビン・レフラー氏によれば、「ソ連は拡張主義ではあるものの、いかなる意味でも米国への敵意一辺倒ではなく、交渉を拒絶しているわけでもない」というのが、軍や情報機関当局者の「ほぼ一致した共通見解」だったという。

だがこうした内部コンセンサスにもかかわらず、米国当局者は、ロシア政府のことを「一貫して懐柔不可能」であり「世界征服」に躍起になっているとの描写を強めていったと同氏は指摘する。

1947年7月、米戦争省の諜報レポートは、トルーマン政権が対決姿勢を強めることで「見解の対立の深刻さを強調し、どんな点においても合意に至る可能性を低下させた傾向があった」と述べている。レフラー氏は、結果として、こうした対決姿勢が「ソ連の対米姿勢をより攻撃的にさせ、緊張を激化させた」と説明する。

対照的に、巧みな政治手腕によって敵対国から大きな情報を引き出した例も、歴史上、数多く見受けられる。

キューバのミサイル危機は数十年にわたり、米国大統領の断固たる態度がソ連を怯ませて後退させた例として、誤って伝えられてきた。

だが、その後、機密指定を解除された文書により、真実が明らかになった。当時のケネディ大統領は米国のミサイルをトルコから撤去することを秘密裡に提案し、旧ソ連のフルシチョフ書記長はその見返りとしてキューバからのミサイル撤去に同意していたのである。

核戦争が回避されたのは、外交と相互の譲歩の賜物だった。

オバマ大統領のイランに対するアプローチが成功したのも、こうした外交モデルに倣ったからだ。

何年ものあいだ、米国政府はイランに対し、執拗な批判と過大な要求、そして本格的交渉への関心をほとんど示さないという方針で臨んできた。こうした「アメなし、ムチだけ」の姿勢は、双方にかたくなな敵意を生み出し、イランの核関連プログラムは拡大していった。

オバマ政権が、イランによる平和目的での民生用ウラン圧縮の権利を認め、制裁解除を提示して初めて、イラン政府は核開発プログラムに対する大きな制約を受け入れたのである。その結果、国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長の言う「世界で最も厳格な核査察体制」が実現したのだ。

では、なぜトランプ氏は前任者の成功例を無視しているのだろうか。

 1月5日、北朝鮮の核兵器開発をめぐる緊張は高まる一方だが、ここへ来てようやく、外交面で明るい兆しが見えてきた。写真は平壌で「新年の辞」を発表する北朝鮮の金正恩氏。KCNAが1日提供(2018年 ロイター)

北朝鮮との和解の可能性を否定する論拠として、よく引き合いに出されるのが、すでにわれわれは1990年代に外交による解決を試みたが、北朝鮮政府は米国側の提案を利用するだけで、その約束を守らなかった、というものだ。

だがこれは、1994年の米朝枠組み合意についての、ひどく誤解を招く説明だ。同枠組み合意は、北朝鮮政府がプルトニウムの核爆弾転用を凍結し、核開発プログラムを国連査察に公開することと引き換えに、米国政府が経済的・外交的な譲歩を示したものだ。

残念ながら、米スタンフォード大学のジークフリート・ヘッカー氏によれば、米議会の多くがこの合意に反対したため、「合意の主要規定に必要な予算を認めず、ほぼ発効直後から米国は自らの公約を十分に果たせない結果を招いた」という。

北朝鮮政府は、これを予備計画の必要性を示す兆候だと捉えた。ジョージ・W・ブッシュ政権の初期、北朝鮮は最初からひどく強硬な姿勢を示した。米情報機関は、北朝鮮政府が密かにウラン濃縮能力を開発しているとの結論に達した。

これは枠組み合意の文言には違反していなかったが、その精神を裏切るものだった。これに対して、ブッシュ政権は枠組み合意から離脱し、北朝鮮政府は国際査察官を国外追放するに至った。

 1月5日、北朝鮮の核兵器開発をめぐる緊張は高まる一方だが、ここへ来てようやく、外交面で明るい兆しが見えてきた。写真は2017年12月、韓国で行われた米韓軍事演習(2018年 ロイター/Kim Hong-Ji)

2002年、ブッシュ大統領は北朝鮮を「悪の枢軸」という不名誉な称号で呼んだ。これは、将来的に北朝鮮の体制転覆を試みることを強く示唆していた。その後まもなく、北朝鮮政府は核不拡散条約から脱退。そのわずか数年後、当時の金正日政権は最初の核実験を行った。

北朝鮮を相手にした場合でさえ、外交努力の方がまだ良い成果を挙げている。北朝鮮は、他国の厳しい姿勢や強制的な試みに対して、独自の好戦的な政策で対応する傾向がある。だが、戦略国際研究センターが行った研究によれば、過去25年間にわたり、外交主導の時期には、それに対応して北朝鮮側の挑発も減少している。

端的に言って、北朝鮮に関するトランプ政権の主要想定は誤っている。脅迫と圧力を強めても、北朝鮮政府の降伏を引き出すことはできないだろう。実際、戦争による推定コストは悲惨なほど大きいため、現時点での軍事的な脅迫は信憑性に欠ける。

米中央情報局(CIA)は「どれほど経済制裁を重ねても、北朝鮮の指導者である金正恩氏に核開発プログラムの放棄を迫ることはできない」と見込んでいる。

外交上のオプションを使うのは簡単だ。

北朝鮮との実務レベル協議に参加してきた米当局者は、北朝鮮政府には交渉の意志があると繰り返し述べている。

ロシアと中国は以前からずっと、建設的な外交への最善の第1歩は、当面の「相互凍結」合意だと主張してきた。つまり北朝鮮政府が、米韓軍事演習を全面的に中止することと引き替えに、核実験の凍結に合意する、というものだ。米軍司令部は演習の完全凍結に合意しないだろうが、韓国は冬季五輪終了までの延期を支持している。さらに米国政府は、北朝鮮に近い空域での挑発的な軍用機運用についても容易に中止できる。

詳細な合意内容は、双方がそれぞれの期待と柔軟さを示せるような交渉テーブルにおいて、決定されなければならない。

しかし米国側には、北朝鮮の安全保障上の懸念を和らげる、広い自由度があり、それには北朝鮮の言う米国の「敵対的政策」の終了、制裁緩和、駐韓米軍の削減などの提案も含まれるだろう。最後の1つは中国から見ても魅力的に映るかもしれず、北朝鮮問題に対する同国のより建設的アプローチを促す可能性もある。

現在の朝鮮半島情勢には、もっぱら強硬姿勢だけに固執すべき理由は1つもない。プライドと名誉心、そして外交に関するひどく間違った考え方が、より理にかなったアプローチを邪魔しているだけなのだ。

*筆者は米ケイトー研究所の外交政策研究担当ディレクター。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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