[ロンドン 3日 ロイター] - 米国とオーストラリア、英国、ノルウェーの中央銀行が今週、いずれも利上げを実施し、主要中銀が物価高騰抑制の引き締めモードを維持している様子が改めて示された。
主要10カ国・地域の中銀が今の引き締めサイクルで実施した利上げの合計幅は2365ベーシスポイント(bp)に達する。この中で日本だけは「ハト派」姿勢のままだ。
ただオーストラリアやカナダ、ノルウェーなど一部では利上げペースを緩め始めつつある。各国の現状は以下の通り。
(1)米国
米連邦準備理事会(FRB)は2日に4会合連続の75bp利上げを決め、政策金利は3.75-4.00%に達した。現行引き締めサイクルでの合計利上げ幅は約40年ぶりの大きさ。
投資家はこの結果を予想していたとはいえ、12月13-14日の次回連邦公開市場委員会(FOMC)でFRBが、よりハト派的になることも期待している。もっともパウエル議長は、利上げ停止を考えるのは「極めて時期尚早」とくぎを刺した。
(2)カナダ
カナダ銀行が先週発表した利上げ幅は50bpで、75bpという大方の予想よりも小さかった。また経済が今後数四半期で失速すると予想するとともに、引き締めサイクルは終わりが近いと表明した。
今の政策金利水準は3.75%。今年3月以降の利上げ幅は350bpで、同国としては過去最も急激な引き締めの部類に属する。
(3)ニュージーランド
ニュージーランド準備銀行は先月に8会合連続で利上げし、利上げ幅は5回連続の50bpだった。政策金利は3.50%と7年ぶりの高さに達した。同行は物価圧力の強さを受けて、75bpの利上げも検討していた。
(4)英国
イングランド銀行(BOE)は3日、政策金利を2.25%から3%に引き上げた。これは1989年以来の大幅な利上げだ。BOEは経済の見通しが「非常に厳しい」と警告し、物価上昇率が今年第4・四半期中に40年ぶりの高さとなる11%前後まで上振れるとみている。
(5)オーストラリア
オーストラリア準備銀行は物価上昇率が想定より高く推移している中でも緩やかな引き締め路線を堅持し、今週の会合では25bpの追加利上げを選択した。10月には主要中銀で初めて利上げペースを緩めている。
ロウ総裁は追加利上げが必要となる可能性は大きいとする一方、必要に応じて利上げ加速にも当面の利上げ停止にも対応できると強調した。
同行は5月以降の毎回の会合で利上げし、政策金利を合計で275bp引き上げて9年ぶり高水準の2.85%としている。
(6)ノルウェー
昨年に先進国で真っ先に利上げしたノルウェー中銀は3日、利上げ幅を過去3会合での50bpから25bpに縮小し、政策金利を2.50%とした。
同中銀は、12月も追加利上げの可能性は高いとする一方、金融政策経路は経済見通し次第であり、その見通しは「通常より不確実性が大きい」と表明している。
(7)ユーロ圏
欧州中央銀行(ECB)は先週、追加利上げを決定した上で、バランスシート縮小開始に積極的なシグナルも発信。歴史的な物価高騰を退治するための引き締め政策でさらに大きな歩みを進めている。利上げ幅はこれまでのわずか数カ月で計200bpに達した。
(8)スウェーデン
スウェーデン中銀は9月20日、政策金利を予想より大きく100bp引き上げて1.75%とした。次回会合は11月24日。中銀は、向こう半年でさらに利上げして物価高騰を抑えると警告している。
9月の利上げ幅は、中銀が1993年に物価目標を採用して以降では最大。欧州通貨市場混乱で自国通貨防衛のため政策金利を短期間で500%まで引き上げた1992年以来の大幅だった。
(9)スイス
スイス国立銀行は9月の会合で75bpの追加利上げに踏み切り、政策金利をマイナス0.25%からプラス0.5%に修正して、欧州のマイナス金利政策に終止符を打った。
12月の次回会合について市場は50bpの利上げを織り込んでいる。
(10)日本
日銀は先週の会合で超低金利政策とハト派的なガイダンスを維持。主要中銀で唯一、緩和路線を続けている。
黒田東彦総裁は、2%の物価上昇率を安定的に実現する目標達成に向けてある程度前進しているとする一方、数年以内の達成は見通せないため日銀が利上げする段階には全く近づいていないと発言した。
黒田総裁は2日、物価上昇率の上振れが続けば「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」の修正はあり得ると示唆した。
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