September 6, 2018 / 11:13 PM / 2 months ago

コラム:巨大黒字国ドイツ、再びトランプ貿易戦争の標的に

[ロンドン 5日 ロイター] - 今週発表されるドイツ貿易統計は、世界の経済ウオッチャー、とりわけ米ホワイトハウスの住人にとって、巨大な経常赤字を抱えた国と巨大な黒字を享受する国にまたがる深い亀裂を改めて認識させるものになるだろう。

 9月5日、今週発表されるドイツ貿易統計は、世界の経済ウオッチャー、とりわけ米ホワイトハウスの住人にとって、巨大な経常赤字を抱えた国と巨大な黒字を享受する国にまたがる深い亀裂を改めて認識させるものになるだろう。ホワイトハウスで2018年4月、記者会見を終えて会場を後にするトランプ米大統領(右)とメルケル独首相(2018年 ロイター/Kevin Lamarque)

トランプ米大統領は先週、ドイツや欧州が、為替相場をユーロ安に操作して輸出や貿易を自国有利になるよう働きかけることで、米国企業に損害を与えている、と改めて攻撃した。

「ほぼ中国並みに悪い。ただ(中国より)小さいだけだ」と、トランプ氏はブルームバーグに語った。

実際には、対米や全体の貿易黒字額では、ドイツの黒字は中国よりも大きい。

もし、米国とドイツの溝が改められることなく拡大すれば、その反動で為替市場のボラティリティーが急上昇する事態が起きかねない。ボラティリティーは現在、史上最低に近い水準にあるが、それが急上昇するならば、世界金融市場の安定を脅かすことになりかねない。

ユーロ/ドル市場は、世界でもっとも取引が活発で重要な為替市場であり、取引高は1日1兆ドル(約111兆円)と、全世界の為替取引の4分の1近くを占めている。ユーロ/ドルが安定している理由は、まさにこの取引規模と流動性にある。

だがこの市場が、今後も静かなオアシスであり続ける保障はない。

ボラティリティーが新興国市場の大半を引き裂く中、先進国市場は、これまでほぼ無傷のままだった。だがユーロ/ドル相場における混乱やストレス、急変から影響を受けない市場は世界に存在しない。

ドイツは今年上半期、244億ユーロ(約3兆1600億円)と、どの国よりも大きな対米貿易黒字を記録、同国の総貿易黒字額も1215億ユーロに達した。

ドイツは2002年以降、毎年経常黒字を計上しており、2015年には国内総生産(GDP)の8.9%に達した。その後、この割合はやや減少しているが、それでも昨年はまだ8%台で、3年間の平均値は欧州委員会(EC)が上限として推奨する6%を大きく上回っている。

ミュンヘンのIFO経済研究所によれば、ドイツの経常黒字は今年2990億ドルに達し、3年連続で世界最大の貿易黒字国となると見込まれている。これは、約2000億ドル程度とIFOが予想する2位の日本の経常黒字を、約50%上回っている。

したがって、トランプ大統領が再びドイツに関心を向けたことも、何ら不思議ではない。昨年1月、ドイツ政府が「ひどく過小評価された」ユーロを使って米国から「搾取している」と非難したナバロ米通商製造政策局長の発言を、大統領は繰り返した。

外交的な表現をするなら、ドイツが何らかの手段でユーロ相場を操作しているとの指摘は疑わしい。実際、世界の3大経常黒字国の中で、ドイツは自国通貨相場に対する影響力が最も低いためだ。

中国は、以前より人民元の柔軟性や元建ての二国間貿易を容認しているかもしれない。だが、それでも人民元は、厳しい資本管理が敷かれた国の、厳密な管理下に置かれた通貨であることに変わりはない。人民元は基本的に、中国政府の意のままに動く。

そして日本は、この20年で世界のどの先進国よりも頻繁に世界の為替市場に介入しており、そのほとんどが、円安方向への誘導、または、少なくとも円高進行を阻止するためのものだった。

これら3大輸出国は、2002年以降、経常黒字を毎年計上している。2002年は、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した年であり、ドイツが経常赤字から黒字に転じた年でもある。

国際通貨基金(IMF)と世界銀行のデータによると、2002年以降にこの3カ国が計上した累計経常黒字の合算金額は、現在の為替レートで8.6兆ドルに達する。これは、同期間に米国が抱えた累計債務額8.3兆円に、ほぼ完璧に符号する。

米国の歴代政権は、日本や中国、またはドイツが、通貨操作や他の通商慣行を利用することによって、世界市場における自国製品の競争力を高めてきたと批判してきた。

1980年代に当時のレーガン大統領が標的にしたのは日本で、2000年代にジョージ・W・ブッシュ大統領が追及したのは中国だった。トランプ大統領は、中国とドイツに怒りの矛先を向けている。

レーガン大統領が就任した1981年以来、米国は、たった1年を除いて、毎年経常赤字を出してきた。その例外は1991年だが、IMFと世銀のデータによると、同年の黒字額はGDPの0.046%で、ほとんど意味がなかった。

世界貿易の舞台で「アメリカの敗北や失敗」だとみなしているものに向けるトランプ大統領の苛立ちは、自国に対して向けられるべきではないだろうか。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below