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不安高まる市場、緊急利下げで米株急落 日銀の「次の一手」は

[東京 4日 ロイター] - FRB(米連邦準備理事会)が緊急利下げに動いたことで、金融市場では日銀の「次の一手」に関心が集まっている。マーケットが予想する最有力候補はETF(上場投資信託)買い入れの目標額引き上げ。問題点も指摘される政策だが、マイナス金利深掘りのハードルが上がっており、株価下落を通じた経済への悪影響に不安が強まる状況では効果が大きいとみられている。

 3月4日、FRB(米連邦準備理事会)が緊急利下げに動いたことで、金融市場では日銀の「次の一手」に関心が集まっている。写真は都内にある日銀本店前で2015年6月撮影(2020年 ロイター/Toru Hanai)

<市場の「不安」を和らげる政策は>

米国が緊急に、それも0.5%という大幅利下げを決定したにもかかわらず、米ダウ.DJIは一時1000ドル近い下げ。「我々が知らない何かをFRBは知っているのではないか」(外資系証券)──。サプライズは、新型ウイルスに対して金融市場が抱く「不安」を増幅させてしまった。

株価の下落は逆資産効果を発生させ、消費の減退を通じ実体経済に悪影響を及ぼすおそれがある。株安に効果がある政策は何か。

市場では日銀の「次の一手」は、ETFの目標額引き上げとの見方が浮上している。シティグループ証券のチーフエコノミスト、村嶋帰一氏は、日銀が近く目標額を現在の6兆円から引き上げる可能性があると予想する。

実際、日銀は2日、通常のETFを1002億円買い入れた。1日の買い入れ額としては過去最大。同日前場のTOPIX.TOPXが上昇する中での買い入れは白川方明総裁時代を含めても2回目だった。

日銀は2018年7月に、ETF購入方針を柔軟化。19年は4兆3772億円の買い入れにとどまっており、明示せずに一時的に買い入れを増やすことも可能だが、市場では「アナウンス効果も含めて、金融市場を通じた経済への悪影響を防ぐという意味でも目標額を引き上げるのではないか」(村嶋氏)との見方が多い。

<危険なマイナス金利深堀り>

日銀によるETF購入は問題点も指摘されている。国債と違い満期がない株式は、いつまでも日銀のバランスシートの中に残る。将来の「出口」時にどうやって保有株を処分するのかは大きな課題だ。また株価下落時には含み損になるおそれもあり、債務超過の危険も伴う。

昨年の日本株の買い筆頭は日銀だ。海外勢(先物を含めれば買い越し)と個人の売りを日銀と企業(自社株買い)の買いで埋め合わせている構図は、決して健全とは言えない。

それでもETF目標増額が「次の一手」の最有力候補となるのは、マイナス金利深堀りのハードルが高くなっているためでもある。

マイナス金利は、預金金利をマイナス化させにくい金融機関にとって負担が大きい。特に地域金融機関は、現在、地元企業が中国経済減速や観光客減少の悪影響を受けており、マイナス金利の深掘りはダブルパンチとなりかねない。

金融システムの安定は経済の最後の砦だ。そこが崩れれば疫学的危機は金融危機へと変容してしまう「最も怖いシナリオ」(マネックス証券のチーフ・アナリスト、大槻奈那氏)と言える。

またマイナス金利深掘りの効果が確実に期待できるのであれば、円高進行時には選択肢にもなる。しかし、16年1月にマイナス金利政策を導入した際は、むしろ円高が進んでしまった。今回、米国が0.5%の大幅利下げを行ったのに、日銀はできてもせいぜい0.1%程度。日米の違いが浮き彫りとなれば、円高材料にされかねない。

<求められる「地味」な政策>

足元のリスクオフ状況でも円高は限定的だ。ドル/円は106円台まで一時下げているが、水準的には昨年10月のレベルにとどまっている。米中貿易摩擦への警戒感から付けた8月安値の104円台にも届いていない。このため、現時点ではマイナス金利深堀りの必要性は高くないとみられている。今の状況では、利下げなどの派手な政策よりも、資金支援といった地味な政策の方が効果的かもしれない。

みずほ総合研究所の上席主任エコノミスト、野口雄裕氏は、地域金融機関の資金繰りが滞るリスクを防ぐための資金供給策を日銀が打ち出すとの見方を示す。「新型ウイルスの影響で経済的な悪影響を受けている地方に対しての政府の財政支援措置などと一体化させれば、さらに有効になる」とみる。

短期金融市場への資金供給も引き続き厚めに行われそうだ。本日は見送られたが、日銀は前日まで2日連続で国債買現先を4年ぶりに実施。潤沢な資金供給姿勢を打ち出した。

パインブリッジ・インベストメンツの債券運用部長、松川忠氏は「地銀などの資金繰りは微妙なバランスの上に成り立っている。日銀は市場をジャブジャブにして調達リスクを防ぐだろう。短い金利が上がらない以上、長い金利も上がりにくい」と指摘。イールドカーブはフラット化していく可能性があると予想する。

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