September 26, 2018 / 8:38 AM / 24 days ago

コラム:中銀の手足縛る巨額米債保有、価格低下でも逃げ道なし

[ロンドン 21日 ロイター] - 各国の中央銀行は、米国債市場において過去15年間、誰よりも大きな存在感を示してきた。自国の貿易黒字を米国債購入に回すことで強気相場を演出する立役者となり、何兆ドルもの外貨準備を構築してきた。

 9月21日、各国の中央銀行は、米国債市場において過去15年間、誰よりも大きな存在感を示してきた。2016年撮影(2018年 ロイター/Dado Ruvic)

だが、これは国債価格が上昇基調にある間の話だ。市場が反転し、価格が下がり始めれば、各国中銀には、大量保有する米国債を十分に保全する力に欠けるかもしれない。国債市場の反転は時間のかかるプロセスだが、今まさに、その初期段階にあると考える識者は多い。

米債価格が下がれば、各国中銀が抱える保有資産の価値は100億ドル(約1.1兆円)単位、いや1000億ドル単位で下落するだろう。だが、早めに売り逃げようとしても、ほぼ確実に価格下落を加速させることになるだけに危険な行為だ。

各国中銀は短期的なトレーダーではなく、市場の動きに脊髄反射的な反応を示すことのない長期投資家だ。外貨準備高に関しては、安定性と資本保全が最優先だ。

だが、米国のドルや国債、そして金融エコシステムとの関係を弱めたいと中銀が考える理由は増え続けている。最近の米債売りが本格的な市場反転の始まりだということになれば、なおさらだ。

注目されるのは、約1兆2000億ドルの米国債を保有する中国の動向だ。だが、かつて著名経済学者のヌリエル・ルービニ氏が「フリーライダー(ただ乗り)」と呼んだ、より小規模な国債保有者であっても、1つにまとまれば大きな打撃となる。

例えば、アルジェリアとトルコの外貨準備高はそれぞれ約1000億ドル、イランは1300億ドル超だ。こうした保有高の少ない中銀の多くは、ロンドンやルクセンブルクなどの保管センターに米国債を預けている。

中国が米国債を売る、あるいは新規に買わなくなるだけでも重大な展開であり、米国の借り入れコスト上昇を招き、経済成長を低下させる可能性がある。だが、ルービニ氏の言う「フリーライダー」たちによる類似の動きも、同じような影響を与えるかもしれない。

中銀がそうした動きを考慮すべき理由はお分かりだろう。米政府との貿易紛争に、中国と一緒に巻き込まれる可能性のある国々は多く、ドル依存を減らしたいと思う国や、ますます敵対的で予測が難しいトランプ政権と距離を置きたい国が出てきても不思議はない。

とはいえ、そうした国々も、引き続き保有する米国債や、自らの借り入れコスト、GDP成長率に与えるダメージを気にかけずにはいられまい。

「米国に何らかのダメージを与えるとすれば、それが自国や他の国々にも跳ね返ってくるため、実際にできることは限られている。オウンゴールのようなものだ」とスタンダード・チャータードのスティーブン・イングランダー氏は語る。

<縛られた手足>

金額が何しろ莫大だ。世界各国の外貨準備高を合計すると11兆5900億ドルに達し、その大半は石油産出国を含む新興市場諸国が保有している。

米国債市場は15兆7000億ドル規模だ。各国中銀が保有する米国債は4兆ドルに達し、うち3兆6700億ドルが長期国債だ。政府系ファンドを加味すれば、実際の数字は、さらに大きくなるだろう。

各国中銀が過去15年間、米国債市場で見せた強引さは、実に驚異的だ。特に目立ったのは、経常黒字や石油収入、外貨準備高が膨らんだ2003年から2008年に至る時期だ。

この時期、世界全体の外貨準備高は、総額3兆ドルから7兆3000億ドルへと2倍以上に膨らんだ。年間最大10%のペースで成長した中国は世界の経済大国として台頭し、同国の外貨準備高も4000億ドルから2兆ドルへと5倍に膨れ上がった。

新興市場諸国の経常黒字も急拡大した。サウジアラビアの経常黒字は、原油価格が2003年の1バレル30ドルから2008年には過去最高の147ドルに上昇したことを受けて、2005年には対GDP比で30%に迫った。

こうしたドルは、米国債などの米国資産へと還流し、2006年に対GDP比6%と過去最高に達した大幅な経常赤字を穴埋めした。

米国債市場は活況を呈し、グローバル金融危機後も、米連邦準備理事会(FRB)が行った3兆6000億ドル規模の量的緩和策によってその勢いは維持された。

だが、現在は様相が異なっている。

FRBはいまや、バランスシート縮小に取り組んでおり、10月1日以降は、月500億ドルの償還分について再投資を行わない予定だ。この額は年間では6000億ドルに達し、大きな需要ギャップになる。

米国債の供給は、減税と国防支出増大により財政赤字が膨らむ中で、急速に伸びている。証券業金融市場協会によれば、米国債発行総額は8月に、史上初めて月1兆ドルを超えた。

一方、米国政府は輸入関税を強化しており、ロシアに対しては経済制裁を発動、他の国にも同様の警告を発している。スーダン、キューバ、イランに対する米国の制裁措置に違反したとして2015年に司法省から90億ドルの罰金を課されたBNPパリバの二の舞いとなるリスクを犯すことなど、どの銀行も望んでいない。

米国債市場の需給ダイナミクスは変化しつつあるのかもしれない。

10年物米国債利回りは、今週、2011年以降の最高水準に近い3.09%まで上昇した。売りが加速すれば米国債から手を引きたいと考える国は多いだろうが、彼らの自由度は限られている。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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 9月21日、各国の中央銀行は、米国債市場において過去15年間、誰よりも大きな存在感を示してきた。2011年撮影(2018年 ロイター/Kacper Pempel)

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