for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

アングル:利下げ期待捨てた投資家、成長株からバリュー株に軸足移行

[ロンドン 6日 ロイター] - 株式市場の投資家は、米連邦準備理事会(FRB)をはじめとする主要中央銀行の政策を当てにするのをやめる時期が到来したと宣言しつつある。

 株式市場の投資家は、米連邦準備理事会(FRB)をはじめとする主要中央銀行の政策を当てにするのをやめる時期が到来したと宣言しつつある。写真はニューヨーク証券取引所で2021年1月撮影(2023年 ロイター/Mike Segar)

足元でFRBなどが年内に利下げするとの期待は雲散霧消している。実体経済の底堅さを示すデータや根強いインフレを背景に、主要中銀は政策金利を2007年以降で最も高い水準にしばらく据え置くとみられるからだ。

そこから資産運用担当者にどんなメッセージをくみ取るのか。答えは、ハイテクなどのいわゆる成長株から手を引き、安価に資金調達できる局面の幕切れを乗り切れる事業を持つ銘柄に投資の軸足をシフトすることだ。例えば、金利上昇の恩恵を受ける銀行や、インフレに見合う販売価格を設定できる資源や生活必需品といったセクターがこれに該当する。

将来の成長に投資するよりも、株価に比して配当金が高額な企業も人気となっている。

UBSの欧州株戦略責任者ゲリー・ファウラー氏は「何年もの間、われわれは中央銀行の政策と『FRBプット』への依存度が高い世界に生きていた」と述べ、景気が悪化すればいつでも中銀が金融緩和で支えてくれるという考えがあったと説明した。

しかし情勢は急速に変わりつつあるという。

<バリュー株の復活>

株価収益率(PER)が低く、配当水準が比較的高いので非常に値ごろ感があるとみなされていた欧州の銀行株は今年になって24%も上昇した。

モーニングスターのデータに基づくと、グローバル株式インカム・ファンドは昨年の資金フローが2014年以降で初めて流入超となり、今年もこの流れが続いている。

一方、足元まで世界の株式市場を席巻し、イノベーションの資金を得る上で金融緩和マネーを頼りとするハイテク株は今年初め、堅調な値動きになった。景気減速が進んで主要中銀の急激な利上げが近く終わるとの観測が広がったからだ。

ナスダック総合指数は年初来でなお12%上がり、STOXX欧州600種テクノロジー株指数の上昇率も15%を記録している。ただし2月以降、米国の強い雇用統計や物価、ユーロ圏のインフレ高止まりなどに伴って値上がりは勢いを失ってしまった。

<変わる勝ち組>

中銀がインフレとの戦いを優先し、短期金融市場が今年の米政策金利は5%を超えると織り込む中で、早期利下げの余地はなくなろうとしている。

ジャナス・ヘンダーソンのポートフォリオマネジャー、ロバート・シュラムフックス氏は「恐らく(中銀の)政策転換という追い風は吹かない」と語り、自身が買っているのは緩和マネーを原動力とするハイテクバブルで取り残された鉱業や工業製品サプライヤーといった成熟産業だと明かした。

シュラムフックス氏は「かつて投資していた分野に回帰しようとしている。選別投資には打って付けの環境だ」と話す。

英資産運用会社プレミア・ミトンのニール・ビレル最高投資責任者は、傘下のファンドがエネルギーや銀行の株を買い増しており、これらは過去半年における明らかな「勝ち組」だと指摘した。

これは近年の流れと対照的。例えば2020年は、コロナ禍から経済を守る目的で政策金利が引き下げられ、ずっと先まで高成長が展望されたハイテクなどの成長株へ緩和マネーが大量に流れ込んだ。同年のナスダック総合の上昇率は44%と09年以降で最大だ。

<冷めた熱狂>

つまり株式市場は熱狂的な雰囲気でリスクを背負う状況から、相応の配当を支払っている割安な銘柄をもう少し落ち着いて選ぼうとする動きに切り替わりつつある。

ロイターが世界中の資産運用会社300社を対象に実施した先月の調査によると、7割はいわゆるこうしたバリュー株が今年はアウトパフォームすると予想している。資産運用世界最大手ブラックロックの調査部門も、バリュー株を推奨する。

20年初めからこれまでMSCIのバリュー株指数は、ハイテク株主体の同成長株指数に値動きが大きく見劣りしてきた。しかしバリュー株指数は、中国経済再開の恩恵に浴すると目されるエネルギー企業、金利上昇で収益を得られる銀行、物価高を消費者に転嫁できるヘルスケアや家庭用品などが中心だ。

ジャナスのシュラムフックス氏は「中国経済が再開し、欧州経済は安定してきている。これだけでバリュー株が好調となるには十分な要素になる」と述べた。

投資家がバリュー株に向かいつつあるもう1つの兆しとして、成長株に支払われるプレミアムの縮小が挙げられる。

アップルやマイクロソフトなどのウエートが高いMSCI成長株と、同バリュー株の株価収益率(PER)の格差は20年12月に10年ぶりの大きさとなった。今はパンデミック前の水準に戻ったとはいえ、FRBの前回の利上げサイクルが終わった19年初めに比べるとなお高い。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの上場投資信託(ETF)ストラテジスト、ライアン・リアドン氏は「(成長株とバリュー株のバリュエーションの)収れんが、この先も基本シナリオになるはずだ」とみている。

(Nandita Bose記者)

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up