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コラム

コラム:自動車業界に衝撃、「EV電池不足」という新たな試練

[ロンドン 1日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 自動車メーカーは衝撃に打ちのめされてもおかしくない。既に半導体不足で苦しんでいるところに、バッテリーの供給ひっ迫という新たな試練に見舞われているからだ。

 自動車メーカーは衝撃に打ちのめされてもおかしくない。既に半導体不足で苦しんでいるところに、バッテリーの供給ひっ迫という新たな試練に見舞われているからだ。写真は米ミシガン州デトロイトにあるゼネラルモーターズの電気自動車組立工場。バイデン米大統領が視察している。2021年11月撮影(2022年 ロイター/Jonathan Ernst)

米ゼネラル・モーターズ(GM)は1日、リコールの影響対象車種にバッテリーを回した影響で、昨年第4・四半期の米国における電気自動車(EV)の新規販売がゼロになってしまった。EV市場シェアトップのテスラは、原材料の調達価格上昇に警鐘を鳴らしている。このままでは「EV革命」の到来は当初想定されたよりも遅くなり、業界にとって魅力も薄れてしまうかもしれない。

バッテリーパックは、リチウムないしコバルトといった金属の合成物質で構成されるセル(単電池)の集合体だ。これらの金属は、世界中の政治家が内燃エンジンの段階的禁止を打ち出す中で、需要が拡大し続けている。軽さとエネルギー密度の高さが評価されているリチウムの場合、採掘総量が世界全体の需要を割り込んでいるため、価格はうなぎ上りだ。昨年9月以降で水酸化リチウム先物の価格は2倍以上となり、1キロ当たり39ドル(約4500円)に達した。

価格上昇を受け、当然ながらオーストラリアからチリまで、豊富なリチウム鉱床を保有する国では採掘が拡大している。しかし急に増産するのは難しい。実際、1つの鉱山で採掘が完全に軌道に乗るには最長で10年かかる。UBSのアナリストチームの試算では、リチウム需要は2030年までに10倍近くも膨らみ、炭酸リチウム換算で年間5700キロトンを超える可能性がある。一方、供給量はその半分を賄えるかどうかというところだ。

バッテリー価格もそうした事情を織り込み始めている。ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンスによると、過去何年も下落していたバッテリーパック価格は今年、キロワット時当たり135ドルまで高まるかもしれない。昨年は132ドルだった。ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスは、リチウム価格が2倍になれば、セルのコストは10%上がる恐れがあると予想する。GMなどEV増産に乗り出している企業は、投入コスト増大という難題に引き続き対処しなければならない。

各メーカーにもさまざまな備えはある。例えば消費者、特に高価格車種を買う余裕がある富裕層向け販売価格へのコスト上乗せ幅を、より大きくしようと思えばできる。技術の進歩も続いており、テスラはコバルトなど割高な原材料に対する依存を減らせる新たな化学上の発見を追求しているところだ。フォルクスワーゲン(VW)は独自のバッテリーのサプライチェーン(供給網)構築に余念がなく、昨年12月にはバッテリー工場に陰極材を供給する合弁事業をベルギーのユミコアと立ち上げると発表した。

しかし、一般大衆向けに数多くの安価なEVが出回るという政治家の期待が実現する日は遠のくリスクがある。それはテスラのマスク最高経営責任者(CEO)が1月26日、まだ価格2万5000ドルの廉価版EV生産に着手していないと述べたことからも読み取れる。EV事業の収益性がなお内燃車事業ほど高くない既存メーカーにとっても、朗報とは言えない。これらのメーカーは、せっかくのEVブームにおいても、リチウムの採掘量が増えるまでは利益を得るのに苦戦するのではないだろうか。

●背景となるニュース

*国際エネルギー機関(IEA)は1月30日のブログで、炭酸リチウムとグラファイト(黒鉛)、ニッケルが2021年にそれぞれ150%、15%、25%上昇したと発表した。

*米ゼネラル・モーターズ(GM)は2月1日の昨年第4・四半期決算発表で、米国では第4・四半期の電気自動車(EV)販売が実質ゼロだったと明らかにした。バッテリー供給を、リコール問題が発生した「シボレー・ボルト」に割り当てたことが原因だ。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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