for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:金は輝き失い続ける運命か 実は弱いヘッジ機能

 9月27日、10年前に金マニアの投資家に、いずれ疫病が大流行し、欧州で戦争が勃発し、米国のインフレが8%になると告げたらどうしただろうか。写真は金の延べ棒。2014年3月、独ミュンヘンの貴金属業者の金庫で撮影(2022年 ロイター/Michael Dalder)

[ニューヨーク 27日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 10年前に金マニアの投資家に、いずれ疫病が大流行し、欧州で戦争が勃発し、米国のインフレが8%になると告げたらどうしただろうか。しかし金は夢のようなシナリオが現実のものとなったにもかかわらず、今の価格は1オンス=1635ドル前後と、2012年9月から7%ほど下げている。恐らく今後10年間も同じような流れが続くだろう。

金を信奉する投資家は、数千年にわたり価値保存の手段であり、インフレや社会的混乱のヘッジになると金の効用を説く。しかし最近2年ぶりの高値を付けたとはいえ、ヘッジ機能は他の資産に劣り、機会費用は大きい。10年前にS&P総合500種指数に投資していれば3倍になっただろう。

金の強気派は中央銀行の紙幣増刷で通貨価値が下落することを心配するが、鉱山業者も金を採掘し続けている。金の国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、これまでに採掘された金は約20万5000トン、およそ11兆ドル相当で、年間生産量は2010年以降26%増えた。生産量がこのまま増え続ければ問題になるかもしれない。国連の推計によると、この間に世界の人口は14%しか増えておらず、今後も増加ペースは鈍化し続けると予想されている。つまり金価格を安定させるには熱心な投資家が金の購入を増やさなければならない。

もっと大きな問題は、金は企業の利益や債券の利子と異なり、何も生み出さないという点だ。著名投資家ウォーレン・バフェット氏は10年前に、これまでに採掘された全ての金と同じ価格で米国の全農地とエクソンモービル社16社分を買うことができると指摘。農地の方が良い投資対象だと述べたが、実際その通りだった。エクソンモービルの株価は市場全体に出遅れたが、それでも株主総利回り(TSR)は50%を超えた。

インフレを懸念する人にとっては農地の方が金よりも輝きが強い。イリノイ大学の研究によると、米国の農地は運用成績が50年間にわたり金を上回っている。物価が上がると収穫物は値上がりする場合が多いため、農地の価値は物価と連動して上昇する。農地を直接購入することは難しいが、年金基金は農地を購入しており、農地に投資する不動産投資信託もある。

ハイパーインフレ、社会の大混乱、ファッション産業などによって金が復活する可能性もある。しかしこうした運命のいたずらが起きない限り、金はさらに輝きを失う定めにある。

●背景となるニュース

*金は26日のスポット価格が1オンス=1635ドルだった。ワールド・ゴールド・カウンシルによると10年前は1763ドルだった。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up