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コラム

コラム:上場目指すグラブ、複雑な事業構造はチャンスの源

[ムンバイ 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 東南アジアのテクノロジー企業は、同じ分野の米企業よりも複雑な事業構造を持っている。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、シンガポールを拠点とする配車・料理宅配サービス会社グラブは、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じてニューヨーク市場に上場し、その際に企業価値が最大400億ドルと評価される可能性がある。しかしアンソニー・タン氏が10年前に創業したグラブは、金融など新たな分野へと事業を広げており、同業者であり支援者でもある米ウーバー・テクノロジーズに比べて黒字化への道筋がより曲がりくねったものになっている。

 3月15日、東南アジアのテクノロジー企業は、同じ分野の米企業よりも複雑な事業構造を持っている。写真はグラブのロゴ。シンガポールで2019年3月撮影(2021年 ロイター/Anshuman Daga)

新型コロナウイルスの世界的大流行でタクシーと配車サービスの需要が打撃を受け、グラブは事業の少なくとも半分を料理宅配サービスが占めるようになった。足元では金融サービスへの事業展開を加速、単なる決済サービスの領域を超えて、保険、富裕層向け資産運用商品や融資などの事業も手掛ける。銀行の少ない地域や金融サービスが行き届いていない地域では大きなチャンスだ。さらにグラブはホテルの予約サービスを提供、日用雑貨事業も強化している。

こうした事業の多角化により、グラブはあらゆるサービスを一元化した「スーパーアプリ」を提供するという立ち位置が鮮明になり、ウーバーとは異なる経営路線に乗っている。ウーバーは2018年に東南アジア事業をグラブに売却。ウーバーが利益を追求して事業領域を縮小しているのに対し、タン氏はグラブを多額のコストを要する新たな試みへと向かわせている。その結果、格付け会社ムーディーズはグラブが利払い・税・償却前損益(EBITDA)ベースで損益分岐点に達する時期をウーバーよりも1-2年先の2023年以降と予想している。

グラブの事業により近い比較対象は東洋の企業ではないか。例えば時価総額が2530億ドルと評価されている中国の電子商取引プラットフォームの美団は、料理宅配サービスに加えてホテルと映画館の予約、自転車のシェアリングなどのサービスを提供し、新興電気自動車(EV)メーカーの理想汽車に出資している。リフィニティブのデータによると、美団は12カ月後の業績予想に基づく株価収益率が9倍強と、ウーバーよりも3分の1ほど高い。

タン氏にとっては事業の多角化のほか、東南アジアで大手の上場テクノロジー企業が少ないことによるプレミアムも追い風になりそうだ。こうした恩恵を享受している企業のひとつがシンガポールの電子商取引会社SEAだ。SEAは2017年のニューヨーク市場上場以降、株価が約15倍に上昇した。業績予想に基づくPERは約13倍と、米アマゾン・ドット・コムや中国のインターネット企業、騰訊控股(テンセント)を大きく上回っている。グラブは複雑と見られている事業構造を最大限に生かすことができるのだ。

●背景となるニュース

*シンガポールを拠点とするグラブは、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じた上場に向けた話し合いを行っている。合併でグラブの企業価値は最大400億ドルと評価される可能性がある。WSJが11日、関係筋の話として報じた。

*WSJによると、グラブはアルティメーター・キャピタル傘下のSPACと合併について協議を進めている。グラブの企業価値は350億-400億ドルと評価される見込み。グラブは合併に際して、「公開株式への非公開投資(PIPE)」により30億-40億ドルの資金を調達する見通しという。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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