July 1, 2015 / 8:02 AM / 4 years ago

ギリシャとリーマン危機比較、共通する予想外の連鎖リスク

[東京 1日 ロイター] - ギリシャのデフォルト(債務不履行)危機が迫る中で、リーマン・ショックとの比較でこの先の変動を予想しようというムードが浮上している。

 7月1日、ギリシャのデフォルト(債務不履行)危機が迫る中で、リーマン・ショックとの比較でこの先の変動を予想しようというムードが浮上している。アテネで30日撮影(2015年 ロイター/Yannis Behrakis)

今のところ、危機の深刻度はリーマンが数段上との声が多数だが、「予想外の連鎖」は共通しているのではないかとの指摘も少なくない。リーマン並みの打撃を受けた場合、各国にマクロ政策の対応余力があるのかどうかも、今後の焦点になりそうだ。

<冷静なインターバンク市場>

リーマン・ショックは典型的な金融システミック・リスクの顕在化だった。米国の低所得者向けの住宅ローン、サブプライムローンが地価の下落で返済が滞り、そのサブプライム商品を組み込んだCDO(債務担保証券)など証券化商品が行き詰った。

それらの商品を大量に購入していた金融機関は大きな損失を抱えることになり、信用不安が拡大。銀行システムが痛み、インターバンク市場の機能が低下した。信用仲介機能が滞り、実物経済も悪化するという金融危機の典型的な経路をたどった。

リーマン・ブラザーズの、負債総額6000億ドルという過去最大の破綻のインパクトは大きかったが、「リーマン危機」の本質は、レバレッジを効かせてリスクを大量に抱え込んでいた民間の金融システムの機能マヒにある。

だが、今回はギリシャの政府債務(国債)を持っているのは、ほとんどがトロイカ(EU、IMF、ECB)で、民間銀行は20%程度。さらに民間の保有主体も、ギリシャの銀行か、ヘッジファンドとみられている。ギリシャの財政問題は5年にわたっており「売りたいところは、ほとんどが売った」(外資系証券)とみられている。

仮にギリシャがデフォルト(債務不履行)に陥っても、そのこと自体によって金融システムが動揺することはないと予想されている。実際、信用リスクも高まっていない。

インターバンク(銀行間)市場における上乗せ金利「Euribor-EONIA(3カ月物)」でみれば、足元は10ベーシスポイント(bp)程度。ギリシャ支援協議の難航が明らかになった後でも、依然として低位で推移している。リーマン時は200bp、欧州債務危機時は100bpのレベルまで拡大していた。

SMBC日興証券・シニアマーケットエコノミストの嶋津洋樹氏は「リーマン・ショック時は金融機関がレバレッジを効かせ、マネーフローが拡大させていたことが危機を拡大させた。現在は、やや強まる兆しはあるがまだ限定的。もしギリシャ危機が起きても、金融危機に発展はしないだろう」との見方を示す。

<不安は伝播(コンテイジョン)>

日経平均.N225は18年ぶりの高値を一時突破し、リーマン前の水準を大きく上回ってきているが、割高感が強いわけではない。予想株価収益率(PER)は、リーマン前の高値1万8300円を付けた2007年2月26日時点での20倍程度に対し、現時点は約16倍。

それでも市場には不安感が強いのは、今回も「連鎖反応」への警戒があるためだ。

リーマン・ショック時は、どこにサブプライム商品が隠れているかわからず、信用不安が伝播した。今回は、デフォルト(債務不履行)を機に、ギリシャがユーロを離脱すれば、追随する国も出てくるかもしれないことが、市場の不安感を強めている。

一方、ギリシャに債務減免などを認めてしまえば、財政問題を抱える国が「我も我も」と手を挙げるかもしれない。そうなれば「貸したお金は返してくれるという、性善説に基づいた今のシステムが瓦解しかねない」(りそな銀行・総合資金部チーフストラテジストの高梨彰氏)との懸念が広がる。

プエルトリコのアレハンドロ・ガルシア・パディラ知事は6月29日、連邦破産法に基づく債務再編の実施を認めるよう米国政府に求めた。

プエルトリコの財政問題はかねてから知られていたが、支援要請のタイミングが悪い。ギリシャ問題に市場が揺れている中で、債務減免要請があちこちから出てくるのではないかとの疑念が広がれば、重債務国の国債が売られ、金利が上昇、経済が悪化してしまうリスクが高まる。

さらにギリシャがユーロから離脱してしまえば、地政学的な重要性が意識されているギリシャに対し、ロシアや中国が接近し、現在の軍事的なバランスが変化する可能性を指摘する声も市場で出始めている。安全保障上の地政学リスクは、市場を金融問題とは別の次元で揺さぶりかねない。

<「先送り政策」が繰り返されるリスク>

リーマン・ショックに懲りた各国は、安全網を構築。金融機関のレバレッジを下げ、金融危機を未然に防ぐための「安全網」を数多く敷いてきた。それでも、危機が起きてしまった場合、対応策は残されているのだろうか。

先進国は2008年以来、財政健全化を進めてきており、ドイツが財政黒字化を達成するなど一定の成果をみせている。しかし、対GDP比でみた国債残高自体はドイツでさえ07年と比べ増加している(63.9%から75.8%)。財政再建を何とか進めさせてくれているのは、超低金利に他ならない。これ以上の財政支出はリスクをさらに大きくする。

中国はリーマン・ショック直後、4兆元の景気対策を真っ先に打ち出し、市場の不安心理を抑え込んだが、その4兆元が今の中国の過剰設備や不動産の投機につながっていると言われている。

財政政策への制約が各国で表面化する一方で、中央銀行の資産購入による量的緩和政策など、金融政策は非伝統的な領域まで突き進んできた。特に量的緩和策の真っ最中である日欧の中央銀行に対しては、長期国債などを一段と大量購入することができるか疑問の声も多い。

リーマン・ショックを受けて米連邦準備理事会(FRB)は2008年11月、量的緩和策第1弾(QE1)を導入。QE3まで続けてきたが、昨年12月で量の拡大をストップさせ、利上げを視界に入れている。QE4の選択肢もあるが、それは、その先のバブル発生・崩壊の可能性を高めることになろう。

リーマン・ショックから約7年。各国とも金融政策、財政政策をフルに稼働させて、何とか危機から脱出しようとしている。そこに新たな危機が起きた場合、新たな政策を打ち出すことはできるかもしれない。しかし、それは将来のリスクを一段と高める。その繰り返しをいつまでも続けることはできないだろう。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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