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コラム:ベルギー攻撃、ISが「パニック」に陥った兆候か
2016年3月25日 / 03:02 / 2年後

コラム:ベルギー攻撃、ISが「パニック」に陥った兆候か

[23日 ロイター] - ベルギー首都ブリュッセルで22日発生した同時爆弾攻撃によって、現地警察によれば少なくとも31人が犠牲となり、約270人が負傷。この惨劇は、悲劇であり受け入れがたい。

 3月23日、ベルギー首都ブリュッセルで発生した爆弾攻撃は、犯行を表明した過激派組織「イスラム国」の強さよりも弱さから生まれている可能性が高い。写真は爆発が起こったベルギーの空港ビルの外に立つ職員ら。提供写真(2016年 ロイター/Geert Vanden Wijngaert/Pool)

しかし、イスラム系過激派組織「イスラム国」との闘いにおいて、勝利とはこのような形になる可能性があるということを、欧州諸国は理解しておくべきだろう。爆発犯による示し合わせた攻撃は、彼らの強さよりも弱さから生まれている可能性が高いのである。

イスラム国は、このところ、続けざまにその勢力に深刻な打撃を受けている。まず何よりも重要な点は、イラクとシリアにおける支配地域(世界中から外国人戦闘員を集めている「カリフ国」)は、過去15カ月で着実に縮小を続けており、その喪失ペースは加速している。

2015年1月以降、同組織はイラクとシリアにおける支配地域を推定22%失った。8%は2016年に入ってからのものだ。

「イスラム国」の影響範囲

「イスラム国」の影響範囲

先月、同組織に関連した大量の書類が欧州メディアに流出した。アラビア語によるこれらの書類は、構成員の登録フォームで、氏名、年齢、学歴、特技、生存/死亡といった個人情報が含まれている。

ベルギー攻撃の4日前には、11月のパリ同時多発攻撃の首謀者とされるサラ・アブデスラム容疑者が、ベルギー国内の出身地近くで拘束された。当局の発表によれば同容疑者は法執行機関に協力的であり、彼自身のネットワークとその計画についての情報、さらには、欧州の治安や安全に対する差し迫った脅威となる個人の氏名や計画についても恐らく提供していると想定される。

イラクとシリアでの深刻な「領土」喪失、組織の実態を明らかにする文書の流出、広範囲のネットワークと将来の計画を知る可能性の高い人物の拘束──。こうした状況が重なったことが、ブリュッセルに潜伏していた部隊をパニックに追い込んだ可能性がある。

確かに、同組織が攻撃計画を立案し、武器を準備、自爆犯を選んだことは事実だ。だがそれでも、ブリュッセルでの攻撃はグループが不安を感じ、浮き足立っている兆候かもしれないのだ。

欧米諸国がこの点を見逃しかねない理由の1つは、ブリュッセルの事件によって呼び起こされる恐怖が、細部に至るまで、今も記憶に刻まれている国際武装組織「アルカイダ」による過去の攻撃に結びついているからである。

つまり、国際的な知名度の高い標的、多くの市民の犠牲、複数の自爆犯、爆発物の使用といったイメージは、アルカイダ流の手口につながるものであり、今日では「イスラム国」を名乗る者たちがその手口を引き継いでいるのだ。

空港と地下鉄というブリュッセルの交通機関に対する攻撃は、2005年のロンドンにおけるバス・地下鉄の爆破事件、2004年のマドリードにおける鉄道駅での爆破事件を思い起こさせる。この2つの事件では合計で数百人の犠牲者が出た。

そしてまさに、北大西洋条約機構(NATO)や欧州委員会の本拠地でもあり、世界的に知られた国際拠点に対する攻撃によって、必然的にさまざまな国籍の人々が犠牲者に含まれるという点で、9.11(米同時多発攻撃)を連想せずにはいられない。

 3月23日、ベルギー首都ブリュッセルで発生した爆弾攻撃は、犯行を表明した過激派組織「イスラム国」の強さよりも弱さから生まれている可能性が高い。写真は22日、地下鉄駅での爆発を受けて警戒に当たる警察官(2016年 ロイター/Christian Hartmann)
欧州を襲った過激派などによる攻撃

欧州を襲った過激派などによる攻撃

だが、過去のアルカイダの攻撃と今回のイスラム国によるブリュッセル攻撃とのあいだには顕著な違いがある。9.11にせよ、マドリッドやロンドン攻撃にせよ、アルカイダは勢力を増しつつある時期で、世界はその破壊能力に目を疑った。

アルカイダの指導者だったウサマ・ビンラディンは9.11以前にも数回にわたり米国の関心を引こうと試みていたが、失敗していた。

1998年のケニア、タンザニア両国で連動して起きた米国大使館への自爆攻撃、2000年のミサイル駆逐艦「コール」への自爆攻撃、1996年のコバールタワー(サウジアラビア)での米空軍兵舎の爆破事件といった攻撃は、いずれも冷静に受け流されてしまい、米国の法執行当局者とジャーナリストの関心を集めただけだった。しかし、9.11のニューヨーク世界貿易センタービル破壊が、すべてを変えた。

137人の犠牲を出したパリ攻撃の少し前、オバマ米大統領はシリアとイラクにおける欧米諸国によるイスラム国掃討作戦の成功を口にしていた。一部のアナリストは、中東における地域的な後退がイスラム国に焦りを生み、構成員の目が、破壊活動の対象としてもっと近づきやすい欧州へと向かったのではないかと推測していた。

──関連コラム:ベルギー攻撃、「欧州不安定化」を招く理由 

このようにイスラム国の狙いが変化しているとすれば、それが示唆するのが同組織の弱さなのか強さなのか、焦りなのか自信なのかという見極めはなぜ大切なのだろうか。それは、欧米諸国がブリュッセル事件にどう対応すべきかという洞察を得られるからだ。

まず、中東地域外における非対称戦争の最前線に立つ各国の法執行機関は、まさに今までやってきたことを続けるべきだ。犯人を発見し、彼らの広範なネットワークの構成員を突き止め、武器を押収し、爆弾攻撃に関わりのある者を拘束することだ。

ここで問題なのは、「恐怖」というもっと大きな課題だ。ブリュッセルへの攻撃がイスラム国側のパニックを示す自暴自棄の兆候であるならば、この事件に対する正しい対応は恐怖ではなく、悲しみと喪失の感覚である。私たち一般大衆やメディア、公職者、政治家は、自分たちの脆弱性や弱点といった、不正確で刺激的な感覚に屈しない方がいいだろう。

浮き足だったイスラム国が自己防衛に回ると、断末魔を迎えるまでに、これまでよりもはるかに多くの暴力が生じるかもしれない。だが欧米諸国は、同組織に対する国内外での圧力を維持することを躊躇するべきではない。テロの現実は、絶え間ない警戒を日常的に要求する。それはこれからもしばらく続くだろう。それ以上でも、それ以下でもない。

*筆者はフォーダム大学法科大学院の国家安全保障センター所長。国家安全保障、テロ、市民的自由を専門とする。新著「Rogue Justice: The Making of the Security State(原題)」は5月刊行予定。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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