December 14, 2019 / 11:47 PM / 7 months ago

アングル:ハイチの治安が最悪レベルに、横行する暴力と腐敗

[ポルトープランス 10日 ロイター] - ベニト・バーナードさんの足は傷つき、血がにじんでいる。幼い子どもたちを連れて粗末な小屋を逃げ出した彼女は、サンダルを突っかける暇さえなかったと話す。

 12月10日、ハイチは過去10年以上の間で最悪の無法状態にある。街を徘徊するギャングの暴力から逃れ、市役所の中庭で避難生活を送る市民。12月7日、ポルトープランスで撮影(2019年 ロイター/Valerie Baeriswyl)

ハイチの首都ポルトープランスで最も評判の悪いスラム街をギャングが徘徊し、民家に押し入って発砲したためだ。

47歳のバーナードさんとその家族は、現在、ポルトープランス市内のシテ・ソレイユ区役所の中庭で避難生活を送っている。同じように騒乱状態から逃げてきた市民は200人以上。この国は、市民の一部指導者いわく、過去10年以上の間で最悪の無法状態にある。

「連中は住民の家に押し入り、殴りつけ、発砲した」。木陰に広げた敷物に横たわるバーナードさんは、涙ながらにそう語る。「誰もが逃げ出した。だから私も子どもたちを連れて、急いで家を離れた」

国連の平和維持部隊は15年間の駐留を終え、2017年にハイチから撤収した。人口の6割近くが1日2ドル40セント以下で生活する、南北アメリカ大陸の最貧国ハイチの法と秩序はしたという建前だ。

だが、部隊が撤収した後には治安の空白状態が残された。この1年間、治安部隊がモイーズ大統領に対する抗議行動への対処に追われたため、治安悪化はいっそう深刻になった。

国連ハイチ司法支援ミッションのセルジ・テリオー警察部門長官は、メディアとのインタビューで、「リソースに限りがあるため、ハイチの警察は犯罪組織の活動を思うように抑制できていない」と語った。

急速なインフレの進行を伴う経済悪化と低所得地区への投資不足により、犯罪は深刻化し、そのレベルは一線を越えた。

外交関係者は、こうした状況によって地域の安定に対する脅威が高まっており、移民や麻薬・武器密輸といった動きにも波及するのではないかと懸念しており、国際社会でも警戒感が生じている。米連邦議会下院の外交委員会は10日、ハイチに関する公聴会を開催した。この20年間で初めてのことだ。

モイーズ大統領はすでに国内を統治する力を失い、辞任すべきと批判されている。一方、51歳の大統領は状況はすでに沈静化しつつあり、任期満了まで務めるとしている。

住民によると、ギャングは縄張りを争い、「みかじめ料」を徴収し、麻薬や武器を売買しているという。

人権活動家や一般の国民は、政治家は与野党関係なく反政府運動の抑圧や扇動のために犯罪組織を利用しており、武器の供与や犯罪の揉み消しに協力していると話す。

シテ・ソレイユ地区に住むウィリアム・ドレリュスさんは、「ギャングは政権から金をもらい、市民が反政府抗議行動に参加するのを妨害する」と語る。「野党側から金をもらえば、むりやり街頭行動に動員しようとする」

政府も野党指導者も、こうした疑惑を否定している。

<当局の黙認が助長する犯罪>

モイーズ大統領は11月、ロイターとのインタビューで、ハイチ警察の強化に取り組んでおり、ギャング構成員の武装解除に向けた委員会を復活させたと述べている。

大統領府は10日、治安対策について問い合わせたロイターに対し、「違法な暴力に関する告発は、優先的に我が国の司法制度による捜査・対応の対象となる」と文書で回答した。

だが、政権に批判的な人たちによれば、モイーズ大統領の指揮下にある司法当局は犯罪組織のリーダーを訴追していない。実質的に、犯罪組織のなすがままに任せ、警察の権威を弱めてしまっている。

「警察が犯罪組織の一員を拘束すると、必ず当局からの介入があり、釈放することになる」と語るのは、ハイチ国民人権擁護ネットワーク(RNDDH)のピエール・エスペランス氏。

10日の米下院における公聴会で証言したエスペランス氏は、今年に入って殺害された警察官の数は、昨年が17人、今年は40人以上に上るという。

人権活動家が挙げる当局による犯罪黙認の顕著な例は、モイーズ政権に反対する抗議行動の拠点となっているラ・サリーヌ地区で1年前に起きた虐殺事件だ。

国連の報告書によると、ギャングは2日間にわたり26人を殺害したが、警察は介入しなかった。報告書の中にある目撃証言は、ギャング構成員とともに政府高官の姿があったとしている。

「こうした告発により、ギャングと当局の間に共謀関係が存在する可能性が浮上している」と、報告者は指摘している。

この政府高官は一切の関与を否定していたが、最終的には解任された。だが、この高官以外に逮捕・訴追された者は1人もいない。

ラ・サリーヌ地区の住民は、見殺しにされているようだと話す。

「あのような事件が起きても、当局者からの訪問は一切ない」と語るのは、55歳のマリールード・コレスタンさん。彼女は、ばらばらになった遺体の山のなかに24歳の息子の亡骸を見つけ、自宅は焼かれてしまったという。「ギャングたちはまた戻ってくる。女も男も子どもも区別しないと言っていた」

RNDDHによると、こうした虐殺事件はモイーズ大統領の就任以来6回発生している。11月にも起きたばかりだという。

 ギャングによる暴力が横行するスラムから逃れ、市役所の中庭で避難生活を送る市民。12月7日、ポルトープランスで撮影(2019年 ロイター/Valerie Baeriswyl)

息子2人が見つからないバーナードさんを含め、多くの人は怖くてまだ帰宅できないと話す。

「息子たちが死んでいないことを願っている」とバーナードさん。「こんな暴力状態が終わりを告げ、生きていける場所を見つけたい」

(翻訳:エァクレーレン)

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