January 9, 2018 / 8:56 AM / 7 days ago

コラム:反政府デモが露呈したイランの「根本的悩み」

Amir Handjani

[2日 ロイター] - イラン国内では2017年12月末より死傷者を伴う反政府抗議デモが相次ぎ、同国政府と治安部隊は不意を突かれた格好となった。賃金未払いとインフレに対する抗議として聖廟都市マシュハドで発生したデモは、同国内に急速に広がった。

各地で繰り広げられたデモは、政府の失政と腐敗、そしてイラクやレバノン、シリアに対する政府干渉への抗議にまで発展した。

2009年の総選挙後に主として都市部で生じたデモとは異なり、今回の動きはアフワーズ、ケルマーンシャー、ラシュト、カズビーンなど、いずれも地方の比較的貧しい街で起きている。全国規模に拡大した抗議デモだけに、政府も真剣な対応が求められた。

このデモを巡り、政治家にとって考慮すべきポイントは5つある。

1.最重要テーマは経済

今回の抗議行動全体に共通するテーマは、イランが経済運営の面で重ねている失敗にあるようだ。

インフレ、失業、腐敗、そして長年にわたる制裁により、エリート層が私腹を肥やしがちな「影の金融システム」が生まれ、中間層や貧困層は年々置き去りにされている。

ロウハニ大統領が初当選した2013年の選挙戦では、西側諸国との核合意を成立させ、イラン経済を長年にわたる制裁から解放することが公約されていた。ただ経済制裁が、国家主導によるイラン経済が抱える長期的・構造的な問題をさらに悪化させたことは確かだが、イランの悩みの根本的な原因は、そこにはない。

現在、イランの失業率は12%となっている(若年層に限れば20%を超える)。1979年の革命以降、インフレ率は1980年代の17%から1990年代の最大49%のあいだで推移した。

2000年代前半には改革派ハタミ大統領の舵取りにより約15%に抑え込まれたが、扇動主義的なアフマディネジャド大統領の下で、再び30%に急上昇した。このとき、原油価格は過去最高の水準にあり、イラン通貨はすでに450%以上も切り下げられていた。

ロウハニ大統領の手腕により、現政権はインフレ抑制の点である程度の成功を収めており、現時点では10%に近づいている。2年前に核開発関連の制裁が解除されて以来、イラン経済はかなりの回復を見せている。イラン経済の2017年成長率は7%、IMFによる最近の予測では今年も4.2%成長を見込んでいる。

だが、こうした改善が誰に恩恵をもたらすかは見えにくい。抗議行動の参加者たちは、物価上昇と補助金削減によって自分たちの購買力が低下したと考えている。平均的なイラン国民が制裁解除の効果を実感し、経済が安定するまでには時間がかかる、とロウハニ大統領の支持者は主張する。

抗議する側は、改革によって自分たちの生活に何か意味のある改善がもたらされるという希望を失ってしまっている。

2.イラン中東政策への影響

抗議デモ参加者の多くは、何年にもわたって、同国の攻撃的な外交政策に反対する声を上げている。そのスローガンは、要するにこういうことだ。「なぜ政府は、イラクやシリア、レバノンに国費を投じ、自国民のために使わないのか」

これは正当な不満だ。そして、これまで伝統的に体制の支持基盤とみられていた貧困層がこの不満を表明しただけに、特に注目に値する。

だが、これら諸国への介入に反対する抗議の声が、イラン社会の幅広い層に共有されているとは限らない。

多くのイラン国民は、過激派組織「イスラム国」、そしてサウジアラビアの国教であるイスラム教ワッハーブ派は、自らの存亡に関わる脅威であると考えている。スンニ派原理主義と戦うならば、舞台はイラン国内よりもイラクとシリアの方がマシだというのが彼らの考え方だ。

 1月2日、イラン国内では、2017年12月末より死傷者を伴う反政府抗議デモが相次いだ。写真は2017年12月30日、テヘランで行われた抗議デモ。ロイターが入手した第3者のビデオ映像より(2018年 ロイター)

昨夏、イスラム国がテヘランの国会議事堂と霊廟に攻撃を仕掛けたことが、この思いをいっそう強めた。米国、サウジアラビア、イスラエルの政府は、今回の一連の抗議行動がイランの中東政策に影響を及ぼすと期待すべきではない。

3.トランプ大統領の支持表明は抗議行動にとって無意味

トランプ米大統領は抗議行動を支持するメッセージをツイッターに投稿した。だが、その言葉はうつろに響く。

イラン国民のあいだでトランプ大統領はひどく不人気であり、米政権が単にイラン政府だけでなく、イラン国民に対して敵対的だと見られている事実に変わりはない。トランプ氏によるイラン国民に対する渡航禁止措置は家族を分断し、もはやイラン系の親族の訪問を受けられなくなってしまった米国民を憤慨させている。

トランプ氏はイランの核合意遵守を認めようとせず(あらゆる証拠は合意遵守を裏付けているにもかかわらずだ)、他国がイランと交流しないように働きかけ、中東におけるすべての紛争はイラン政府の責任だとするサウジアラビアの論法を全面的に支持している。

イランの抗議デモ参加者にとっては、そのトランプ氏から支持を表明されても戸惑うばかりだ。

過去数十年間に及ぶ国内問題に対する海外からの干渉は、イラン国民の意識に深い傷を残してきた。トランプ政権は、デモを利用しようとするあまり、抗議デモ参加者が、あたかも外国の手先であるような印象を与えないよう注意すべきだ。

 1月2日、イラン国内では、2017年12月末より死傷者を伴う反政府抗議デモが相次いだ。賃金未払いとインフレに対する抗議として聖廟都市マシュハドで発生し、同国内に急速に広がった反政府デモが露呈した点は。写真はロンドンのイラン大使館前で、同国政府に対して抗議する人(2017年 ロイター/Simon Dawson)

それこそ、体制側が反体制派の信用を失墜させるための便利なレッテルなのだから。

4.今後取られるべき行動

抗議行動は小規模で散発的で。独自のリーダーシップも確認できなかった。大半のイラン国民は、運動から距離を置くことを選んでいる。当局による実力行使を恐れて、あるいは、これまで38年間暮らしてきた政治体制をひっくり返すよりは、現状のなかでの改革を進めていく方が好ましいからかもしれない。

ロウハニ大統領としては、抗議デモ参加者が示した不満に耳を傾け、経済・社会改革という選挙公約を果たすことが必要だ。そのためには、不透明な政治過程や縁故主義、腐敗といった要素に取り組まなければならない。今回のような抗議行動を利用して、自らの政治目標を強化することさえ可能だ。

「アラブの春」以降、中東地域を覆っている政治的な混乱・動揺を考えれば、大半のイラン国民が有意義な改革よりも革命を好むとは考えにくい。確かなのは、イラン国民が、日々の必要が満たされ、各個人の生活に対する政府の干渉が弱まるよう望んでいる、ということだ。

5.イラン国内政治に対する影響

西側諸国のアナリストの多くは、イラン政治を一枚岩であるように描写しているが、実際には非常に細分化されており、複数の権力中枢が競合し、無数の特殊な利害が絡み合っている。

昨年の選挙でロウハニ大統領の主要対立候補となったライシ前検事総長に近い保守強硬派と治安当局は、抗議行動に関して大統領を批判すると予想される。彼らは、ロウハニ政権が都市貧困層の期待を裏切り、核合意による恩恵を誇張していると主張するだろう。一方のロウハニ大統領派は、経済改革を妨害し、イスラム式の女性の服装規定の緩和を阻んでいるのは保守強硬派であると批判している。

どちらのグループも最高指導者であるハメネイ師への働きかけを目指すだろうが、ハメネイ師は、少なくとも公式には中立的な立場を維持するだろう。同師は、抗議行動を政治利用しようとする勢力があればすべて非難すると思われる。

外部の勢力、特に西側諸国については、混乱を醸成しようとしていると批判するだろう。しかし非公式には、ハメネイ師はロウハニ大統領を支持し、大統領が政治目標を積極的に追求するための余裕を与えるだろう。同師は保守強硬派に対し、国民の60%が30歳以下という状況を考えれば、時代・人口構成とも彼らの味方ではないことを思い起こさせるべきだ。イラン政府が実力行使により抗議行動を封じ込める対応しか取らないのであれば、抗議の声が再び勢いを増す可能性がある。

*筆者は米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのシニア・フェロー並びに、トルーマン・ナショナル・セキュリティ・プロジェクトのフェローを務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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