for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:エクソンCEOが米国務長官にふさわしい理由

[14日 ロイター] - ドナルド・トランプ氏は自政権の国務長官として、米石油大手エクソン・モービルXOM.Nの会長兼最高経営責任者、レックス・ティラーソン氏を指名した。

 12月14日、ドナルド・トランプ次期米大統領は自政権の外交トップに過去に政治経験のない石油大手エクソン・モービルCEO、レックス・ティラーソン氏(写真)を指名したが、外交政策の専門家や政界通が、そのことを理由にこの人事を批判するのは間違いだろう。2011年5月、ワシントンで撮影(2016年 ロイター/Kevin Lamarque)

国家安全保障に関わるポストは退役将軍たちでほぼ固めたトランプ氏だが、外交のトップには過去に政治経験のない人物を選んだ。

だが、外交政策の専門家や政界通が、そのことを理由にこの人事を批判するのは間違いだろう。

ビジネスの世界から国務長官の座に就くのは、ティラーソン氏が最初ではない。ジョージ・シュルツ氏は、建設・エンジニアリング最大手のベクテルの社長を辞して、レーガン政権の国務長官に就任した(ただしシュルツ氏の場合は、ニクソン政権に参加していた)。

ティラーソン氏は10年以上にわたり、世界最大かつ最も収益性の高い上場石油企業のトップを務めてきた。

エクソンは50カ国以上で事業を展開しており、米国の経済力と商業的繁栄の象徴となっている。その歴史的ルーツは古く、1870年にジョン・D・ロックフェラーが設立したコングロマリットのスタンダード・オイルにさかのぼる。

世界各国の元首といえども、このエクソン・モービルのCEOであるティラーソン氏以上に各方面に顔が利き、影響力のある人物はそう多くないと言っても間違いではなかろう。

筆者は、ティラーソン氏が周囲から敬意を払われる様子を直接目撃したことがある。10年ほど前、エネルギー企業の若手幹部としてマドリードで開催された業界のカンファレンスに出席した私は、スペインのフアン・カルロス国王によるスピーチのあいだ、列席者の大半は各々勝手なことをやっていた。注意を向ける者もいたが、ほとんどは聴いていなかった。だが、ティラーソン氏が演壇に立つと場内は静まり、列席者は彼の一言一句に耳を傾けていたのである。

ティラーソン氏は経営者として実に豊富な経験を携えて国務省入りする。彼は、石油・ガスの採掘からロジスティクス、建設、人事、リスク管理、政府対応、代替エネルギー開発に至るまで、あらゆる事業に関与する年商3850億ドル(約45兆5000億円)のコングロマリットを経営してきた。

企業社会とは違って成果主義ではない、往々にして非効率的で肥大した政府の官僚機構のかじ取りをしていくうえで、結果を求める(さもなければ経営者をクビにする)株主と投資家に対応してきた経験は貴重なものになるかもしれない。

「便利な場所に石油は見つからない」という言葉があるように、ティラーソン氏がこれまで相手にすることになったのは、世界で最も問題の多い一部国家の首脳たちだった。ロシアのプーチン大統領、ベネズエラのチャベス前大統領といった人々だ。ティラーソン氏が彼らを相手に交渉を成功させてきたことは、プラスにこそなれ、マイナスにはならない。

プーチン氏との関係は徹底的に吟味すべきだが、ティラーソン氏の会社がロシアに巨額の投資をしているからといって、彼が米国の国益を追求する際に何かしら妥協してしまうのではないかと考えるのは短見である。

エクソンCEOとしてのティラーソン氏は、同社がエネルギー資源の豊かな地域で活動し高い利益を上げるよう、株主に対する受託者責任を負っていた。彼の責任は、海外において米国の外交政策上の目標を支援・推進することではなかった。だが、国務長官としての承認を受ければ、彼にとっての優先順位もそれに応じて変わっていくだろう。

エクソンのライバルであるトタルやシェル、BPといったグローバルなエネルギー企業は、いずれもロシアに本格的に進出している。その理由は、冷戦終結後のロシアが重要なエネルギー輸出国となり、最近になって米国にその座を譲るまでは、石油・ガスを合わせた埋蔵量の点で世界トップだったからである。

エクソンがロシアでのエネルギー開発における重要なプレーヤーでなかったとしたら、それはいわば、グローバルな金融機関がニューヨークやロンドンに進出していないようなものだ。これでは真の意味で「グローバル」を名乗るわけにはいくまい。

ティラーソン氏は、エクソンの利益を最優先にする手強い交渉相手との評判を得ている。たとえばベネズエラでは、チャベス氏がエクソンの租借権を没収しようと試みたところ、国際的な仲裁機関に提訴して勝利を収めた。他のほとんどの企業は訴訟の手間を惜しんで、金銭的な補償と引き換えに妥協していた。彼はロシアに対する制裁に反対していたが(米国企業のCEOの多くは収益に影響が出るとして反対していた)、エクソンは制裁を遵守している。

実のところ、ティラーソン氏の公的な発言から判断する限り、彼は外交においては現実主義だと思われる。共和党員としては、ラムズフェルド元国防長官やチェイニー前副大統領というよりは、ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領や同元大統領の政権などで国家安全保障担当大統領補佐官を務めたブレント・スコウクロフト氏のタイプだ。

ティラーソン氏は企業幹部として貿易自由化を推進しており、米国企業が欧州・アジアの競合他社に対して不利となるような制裁には反対してきた。エクソン在籍中のティラーソン氏を見る限り、彼が米国の外交政策を主導していく際に、エクソンを世界有数のエネルギー企業にしていく過程で見せたのと同じ厳しさを備えた情熱を発揮しないと考える材料はほとんどない。

実際には、トランプ政権の国家安全保障チームにマイケル・フリン氏やジェームス・マティス氏といった軍事力志向の退役将軍たちが控えているだけに、ティラーソン氏はその「よろいを隠す衣」ということになる可能性もあるが。

トランプ氏は、連邦政府による国内政策・外交政策を根本的に変えるという綱領を掲げて大統領選を戦い、勝利を収めた。トランプ氏は企業幹部を閣僚に加えたいと発言していた。彼らの方が、実社会での経験に乏しい政治家であった前任者たちよりも「勝ち方」を知っており、「有利な」取引を結ぶ術を心得ているから、というのがその理由だった。

ティラーソン氏の指名によって、トランプ氏はその目標を達成したことになるだろう。

*筆者は元エネルギー企業幹部で、米シンクタンク、アトランティック・カウンシルのボードメンバーを務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up