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アングル:ゼロ・コロナ政策が蝕むキャセイ操縦士のメンタルヘルス

[26日 ロイター] - アジア最大の航空会社の1つである香港のキャセイパシフィック航空が、身内からの抵抗にあっている。パイロットらが、「ゼロ・コロナ」を掲げる香港の厳しい検疫方針によりメンタルヘルスが脅かされ、ストレス増大と退職につながっていると声を挙げているのだ。

 アジア最大の航空会社の1つである香港のキャセイパシフィック航空が、身内からの抵抗にあっている。パイロットらが、「ゼロ・コロナ」を掲げる香港の厳しい検疫方針によりメンタルヘルスが脅かされ、ストレス増大と退職につながっていると声を挙げているのだ。写真はキャセイの航空機。2020年10月、香港国際空港で撮影(2021年 ロイター/Tyrone Siu)

キャセイパシフィック航空は前週、内規違反を理由に3人のパイロットを解雇した。この3人は独フランクフルトでの乗り継ぎ待機中にホテルの部屋を離れ、その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)陽性と診断された。

香港政府は、パイロットの家族と接触のあった270人以上(学童含む)を、国営隔離施設の狭い個室に強制収容するという対応を取った。

パイロットの一部は隔離解除後、割り当てられた最初の乗務に関して、操縦できる状態ではないと申告した。

この極端な例が浮き彫りにしているように、他のアジア諸国が徐々に対策を緩和している一方で、「ゼロ・コロナ」政策に基づく中国のパンデミックへの警戒措置は、キャセイのパイロットらに困難な労働条件を突きつけている。パイロットらは全員、ワクチン接種を完了している。

<「もう持ちこたえられない」>

キャセイと競合するオーストラリアのカンタス航空では、厳しい乗り継ぎ待機方針の緩和に着手している。だが香港政府は、中国本土と歩調を合わせて検疫ルールをさらに厳格にすることで、国境を越えた移動を中国政府に認めさせたい考えだ。

ルールの厳格化の背景には、南アフリカで拡大しつつある新たな変異株「オミクロン」への懸念の増大がある。オミクロン株は香港とボツワナなどでも確認され、複数の国が国境管理の強化と検査の厳格化を発表するに至った。

キャセイのパイロットの1人は匿名を条件にロイターの取材に応じ「このまま持ちこたえられる気がしない」と語る。「家族や友人が隔離されるかもしれないというストレスだけでも、くじけそうになる」

これ以外にも複数の現役もしくは退職したばかりのパイロットが、1年前に58%もの恒久的な賃金引き下げが行われて以来、士気は低下し、辞める人が増えているとロイターに語った。

航空業界では、精神的な問題の兆候があれば再就職が困難になりかねないだけに、極度のストレスは重大な問題だ。

あるパイロットは語る。「少しストレスがあった、と言うことのリスクは何だろう」。パンデミックが始まって以来、香港以外のホテルの部屋に200泊以上も隔離されたという。「健康に影響が出るのだろうか。退職後、何か精神的な問題で辞めたことがあるかと聞かれるのか」

パイロットらは、政府が課しているパンデミック対策ルールの中には曖昧なものがあり、フラストレーションがたまると話している。たとえばパイロットは香港に戻ってから3週間、「不必要な社会的接触」を避けるよう求められる。だが、その見返りとして休暇を与えられるわけではない。

キャセイはロイターに対する声明の中で、10月末以降、パイロットの退職が通常の水準よりも増えていることを認めている。

「残念ながら、フランクフルトの一件が心情的に悪影響を与えている」とキャセイは言う。

<厳しい乗務スケジュール>

香港では米国や英国を含む多くの離発着地を「ハイリスク」に分類している。そのため、そういった国からの乗客を香港に運んできたキャセイのパイロットは、ホテルで2週間の隔離生活を送らねばならない。

こうしたフライトの乗員を確保するため、キャセイでは2月、希望者限定で「クローズド・ループ」式の乗務スケジュールの運用を開始した。5週間連続でホテルに滞在したまま、乗務以外は外出もスポーツジムの利用も禁じられ、それから2週間は自宅で過ごすという内容だ。

「少しでも稼ごうと思って、このスケジュールに参加した。昨年の50%減給で生活がぐっと苦しくなったから」と語るのは、2回の「クローズド・ループ」を経験した後、最近退職したパイロットだ。「もう、5回か6回目のクローズド・ループに入っている仲間がいる」

キャセイは25日、このプログラムの参加希望者が不足しているため、12月の需要ピーク期に香港行きフライトの一部がキャンセルになる見込みだと発表した。

キャセイでは、パイロットにかかっている負担は認識しており、懸念を共有するために隔週での電話相談や、同僚パイロット間の相互支援ネットワークなどのプログラム、長期休暇の提供などの対策を行っているとしている。

<「香港離れ」の兆候も>

世界の他地域では感染状況の改善に合わせて、アラブ首長国連邦のドバイを本拠とするエミレーツ航空や米貨物航空アトラスエア・ワールドワイド・ホールディングスなどが、キャセイにパイロット引き抜きを仕掛けている。ロイターの取材に応じたキャセイのパイロットらが明らかにした。

エミレーツはパイロット600人の採用に向けた動きを開始しているが、コメントは控えた。アトラスにもコメントを求めたが、回答は得られなかった。

ロイターが取材したパイロットらは、一時的な住宅・教育手当の期間が終了する来年には、退職するパイロットがさらに増えるだろうと話している。

キャセイでは、「数百人」規模でパイロットの新規採用を行い、来年には研修パイロット制度も再開する予定だという。

香港の厳しい検疫ルールに伴い、米物流大手フェデックスは前週、香港にあった自社のパイロット待機拠点を閉鎖した。主要な物流ハブとしての香港の輝きに陰りが出ていることを象徴する動きだ。

最近香港を離れたフェデックスのパイロットは「キャセイの人たちには、本当に心から同情する」と語る。「メンタルヘルスという点で彼らが大丈夫なのか、実に心配だ」

(翻訳:エァクレーレン)

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