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アングル:中国政府は「高齢者守れず」、コロナ犠牲者の遺族が怒り

[北京 18日 ロイター] - 元高校教師のアイリアさんは打ちひしがれていた。85歳の父親が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と思われる症状を示した後に亡くなってしまったからだ。家族が暮らす中国南東部の江西省では、同ウイルスの感染が拡大している。

 1月21日に始まる旧正月の連休に合わせて、何億人もの中国国民が移動を開始する。その中には、新型コロナにより死亡した親族を弔った後で郷里に向かう人もいる。多くの人は、悲しみとともに怒りを抱えている。写真は北京で暮らすジャンさん。13日撮影(2023年 ロイター/Thomas Peter)

父親は一度も検査されなかったが、アイリアさんと母親は2人とも同じ時期に陽性判定を受けており、アイリアさんは父親の死因も新型コロナだと考えている。

1月21日に始まる旧正月の連休に合わせて、何億人もの中国国民が移動を開始する。その中には、世界最大の人口を抱える中国全土で猛威を振るう新型コロナウイルスにより死亡した親族を弔った後で郷里に向かう人も多い。

多くの人は、悲しみとともに怒りを抱えている。昨年12月、中国は突然、3年にわたって続けてきた検査と移動制限、ロックダウン(都市封鎖)を軸とする「ゼロコロナ」政策を放棄した。遺族らは、その一方で、高齢者を守るための準備は不足していたと言う。

多くの中国国民と同じく、56歳のアイリアさんも経済の再開には賛成だったという。だが12月末、中国が厳格なコロナ対策を放棄した数週間後に、彼女の父親は亡くなった。

「制約からは解放されたかった。でも、こういう形は違う。あまりにも多くの高齢者が犠牲になっている。どの家族にも大きな打撃を与えている」とアイリアさんは電話取材で語った。

中国当局は14日、「ゼロコロナ」政策の終了以降に病院で死亡したコロナ関連の死者が6万人近くに達すると発表した。以前の数字に比べ10倍以上の増加だ。だが国際的な専門家の多くは、これでも過少報告だと見ている。アイリアさんの父親のように自宅で亡くなった人がカウントされていないからだ。

当局者が14日に語ったところでは、犠牲者の90%は65歳以上で、平均年齢は80.3歳だという。

多くの専門家は、中国はせっかく3年にわたって新型コロナをほぼ抑え込んでいたにもかかわらず、その隙に行動制限解除に向けて億単位の高齢者を中心とする国民を守る準備を整えなかった、と指摘する。中国側はこうした批判に反発している。

準備不足として指摘されるのは、高齢者へのワクチン接種が不十分であること、治療薬の供給が不足していることなどだ。

中国当局者は1月6日、60歳以上のワクチン接種率は90%以上だと述べたが、80歳以上でブースター接種を受けた比率は、入手可能な最新データである昨年11月28日の時点で40%にとどまっている。

アイリアさんは、「ウイルスを抑え込むために使ったリソースを高齢者を守るために使ってさえいれば」と言う。中国では政府に対する批判が難しいことから、アイリアさんも取材に応じた多くの人々と同様、フルネームを伏せることを希望している。

中国当局者は高齢者を守ることの重要性を繰り返し口にしており、ワクチン接種の加速や、中国最大の都市である上海におけるハイリスク集団特定のための特別対策チームの設立など、さまざまな対策も発表している。

中国では11月末、「ゼロコロナ」政策に反発して、同国では珍しい広範囲の街頭抗議デモが発生。この後に政府は「ゼロコロナ」政策の終了を決定した。だが、新型コロナ封じ込めを終らせる手法を巡る市民らの不満は、主として、厳しい検閲を受けているソーシャルメディア上で展開されている。

複数のアナリストは、特に都市の中上流層では、新型コロナ対策を巡って政府への信頼が損なわれたと指摘するが、習近平主席や中国共産党による支配に対する脅威にまでなるとは考えていない。

<慌ただしく、混乱した弔い>

自動車メーカーのマーケティング部門で働くリラ・ホンさん(33)は、3年前に感染拡大が始まった頃、武漢にいた。ホンさんの家族は、新型コロナウイルスについてまだほとんど何も分かっていなかった最初の時期を無事に乗り切ったものの、先月になって、新型コロナに感染した祖父母2人と大叔父を亡くしてしまった。

ホンさんは、父親と連れ立って、混雑する武漢の火葬場に祖父母の遺灰を拾いに行ったと話してくれた。悲痛ではあるが、新型コロナ感染が急増している中国では当たり前の情景になっている。

「(故人への)敬意に満ちた厳かな場面になるはずだ。そう思われるだろうが、実際には、病院で順番待ちをするのと大差なかった」

「行動制限の解除がダメだとは言わない」とホンさんは言う。「もっと準備に時間をかけるべきだったと思う、それだけの話だ」

北京で暮らすジャンさん(66)は、12月上旬以降、新型コロナにより身近な人を4人失っている。その1人、88歳の伯母は入院中にコロナに感染した。

ジャンさんも他の人と同じように、伯母の死から葬儀までの経緯は混乱して慌ただしく、しきたり通りにはできなかったと感じているという。

「親しい人に別れを告げる機会もなかった。(コロナ対策で)人間らしい生活を送れないのであれば、少なくとも人間らしい死に方を許されるべきだ」とジャンさん。「それさえできないのは、とても悲しい」

<裏切られた信頼>

この記事の取材では、悲しみに沈む遺族7人が思いを語ってくれた。1人を除いて全員が、故人の死亡診断書には死因として新型コロナが記載されていなかったという。だが、愛する人の死を招いたのは新型コロナだと彼らは考えている。

また遺族らは、公式の死亡統計は信用できないと声を揃える。「ゼロコロナ」政策が続いた3年間で、政府への信頼を失ったと口にする人も複数いた。

北京を取り囲む形の河北省出身の学生フィリップさん(22)は、11月のロックダウンに対する抗議デモを支持しているが、行動制限の解除を巡る状況には失望しており、政府に責任があると話す。

「ありとあらゆる権力を握っているように見えるのに、こんなことも上手くやれない。企業のトップだったら辞職ものだ」とフィリップさんは言う。12月30日に78歳の祖父を失った。

「病院には効果のある薬などなかった」とフィリップさん。「ひどく混雑していて、ベッドも足りていなかった」

祖父が亡くなった後、別の患者のために空けるべく、遺体はすぐにベッドから下ろされたという。

「看護師も医師もひどく忙しそうだった。ひっきりなしに死亡診断書を書いて、遺族にコピーを渡していた。あまりにも多くの人が亡くなった。大きな悲劇だ」

(Martin Quin Pollard記者、翻訳:エァクレーレン)

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