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アングル:一気に進んだリモートワーク、「元通り」危惧する障害者

[ポルト(ポルトガル) 26日 ロイター] - 新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、労働現場ではフレックスタイムの拡大とリモートワークへの移行が進んだ。長年にわたり企業に対し、もっと働きやすくインクルーシブ(包括的)な職場環境を求めてきた障害者の中には、これを新たなチャンスとする見方もあった。

 7月26日、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、労働現場ではフレックスタイムの拡大とリモートワークへの移行が進んだ。写真はポルトガル・ポルトのオフィスで働くルイ・ブリトーさん。20日撮影(2021年 ロイター/Violeta Santos Moura)

だが、ワクチン接種を受けた人が増え、オフィスでの活動が再開する中で、障害者が働くことを容易にしてきた方針が後退し、長期的な変化を求める声が無視されてしまうのではないかという懸念が生じている。

「変化は一時的なものだ。コロナ禍を経て状況は改善されるかと思ったが、そうはならなかった」と語るのは、ポルトで活動する障害者団体「シダダオ・ディフェレンテ」でコーディネーターを務めるミゲル・アゼベド氏。「問題はこれからも続く」

働くことを望む障害者の行く手を塞ぐバリアは、差別的な態度からオフィス設計の欠陥に至るまで、非常に多い。

ブリュッセルに本部を置く欧州障害者フォーラム(EDF)の社会政策担当者であるハイディン・ハマーズリー氏によれば、障害者の中には、フレックスタイムによる勤務を申請しても認められず、医師の診察を受けたり、ラッシュアワーの電車・バスの混雑を避けるといったことが困難になったりする例が見られるという。

特に体力低下を伴う慢性的疾患を抱える人が何とかやっていくためには、在宅勤務が可能であることは不可欠だ。だが、あらゆる企業がそうした対応に前向きとは限らない。

コロナ禍により数百万もの労働者が自宅に閉じ込められた時には、企業の対応は素早かった。リモートワークが「ニュー・ノーマル」となり、自分の1日のスケジュールをこれまでより自由にコントロールできるようになった労働者もいる。ハマーズリー氏は、そうした変化を長期的に定着させる「絶好の機会」があったという。

パンデミックが収束してもイベントや会議へのオンライン参加という選択肢が維持されれば、それらが開催される物理的な空間へのアクセスが難しい障害者でも参加可能になるだろう。

「在宅勤務は、人々が求めていたことだ。皮肉なことに、それは不可能だと企業は主張していたのだが」とハマーズリー氏は言う。「誰もが影響を受けるようになって、突然、奇跡が起きた。パンデミックの中で多くの学びがあった。それを忘れてはならない」

<扉は再び閉ざされるのか>

だがEDFは、リモートワークが当たり前になったことで、企業の側では物理的なオフィススペースを障害者でも利用しやすいものにする意欲を失いかねない、と警鐘を鳴らす。「そうなればインクルージョン(共生、包括性)に逆行し、障害を持つ労働者を排除してしまうリスクを伴う」とEDFは述べている。

16歳のときに機械の事故で片腕を失ったルイ・ブリトーさん(47)にとって、リモートワークは「扉を開いて」くれた。ブリトーさんは、企業が障害者に対し、どこで働くか選択肢を与えることが重要だと話す。

ブリトーさんは昨年、パンデミックの最中に就職したが、ポルトガルの都市ポルトにあるオフィスで働くことを望んでいる。その方が同僚たちと協調して働きやすいからだ。

だが、「都市や公共交通が利用しにくい場合、そこに障壁が生まれ、障害者は結局働くことを諦めてしまう」と彼は言う。

また障害者や人権活動家は、パンデミックによって経済不安が高まっていることを指摘する。

ポルトガルで失業者として登録された障害者の数は、2019年は2万1847人だった。2020年には2万3464人に増加し、入手可能な最新のデータによれば、2021年1─5月は約2万4500人となっている。

ブリトーさんは「私たちは景気後退に苦しんでいる」と言う。

欧州連合(EU)全体では、健常者の就業率が74.8%であるのに対し、障害者は50.8%に留まっている。

シダダオ・ディフェレンテのアゼベド氏は、多数の障害者が失業した理由の1つとして、多くが給与水準の低い非正規雇用であることを挙げる。

アゼベド氏は、中小企業を中心とした企業が障害者を雇用するよう各国政府が奨励策を強化する必要があり、複数の欧州諸国で導入されているクオータ制は不十分だと語った。

2018年の報告によれば、労働年齢の障害者すべてが就業していないことが原因で、EUは最大で年間12億ユーロのGDPを失っている可能性があるとされている。

EDFによれば、障害者の多くは「オールド・ノーマル、つまり障害者が排除され、仕事に就けなくなる状態」」が戻ってくるのではないかと懸念しているという。

(翻訳:エァクレーレン)

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