[フランクフルト 26日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた7500億ユーロ規模の緊急の債券買い入れプログラムについて、1発行体当たりの買い入れ額を発行残高の33%までとするルールを適用しないと表明した。
また買い入れ対象証券の残存期間の下限も1年から70日に引き下げた。
法律文書で明らかにした。
欧州司法裁判所は2018年、買い入れ額を発行残高の33%までとするルールを踏まえ、ECBの量的緩和は財政ファイナンスには当たらないとの判断を示していた。今回このルールの適用が見送られたことで、新たな訴訟が起こされる可能性もある。
ECBは3月18日の緊急決定でルールの修正を「検討」するとしていたが、今回の法律文書はルールの適用がすでに停止されたことを示唆している。
ドイツでは、ECBの量的緩和について、権限を逸脱しているとの批判の声が一部で出ており、繰り返し訴訟が起こされている。
一方、買い入れ対象証券の残存期間の下限の引き下げは、ECBがコマーシャルペーパー(CP)を買い入れ対象とする方針を発表していたため、必要な措置だった。ただ、満期の短い国債も買い入れ対象となれば、買い入れ基準を満たす資産が大幅に増える可能性がある。
ECBはキャピタルキー(加盟国の出資比率に応じた買い入れ割り当て)については、今後も参考にするとしているが、「柔軟」に運用し、逸脱もあり得るとしている。
ECBは週間・月間ベースで買い入れに関する一部の情報を公開するとも表明。ただ国別や銘柄別など詳細なデータを公表するとは明記していない。
ピクテ・ウェルス・マネジメントのストラテジスト、Frederik Ducrozet氏は「一言でいえば、資産買い入れのほぼすべての制約が外された。ECBのコミットメントに対する信認が高まる」と述べた。
ECBのラガルド総裁が提案したユーロ共同債「コロナ債」の発行が実現しない場合でも、十分な買い入れ対象の証券を確保できるをことになる。
市場では、ECBの決定を受け、イタリア国債利回りが幅広い年限で低下している。
*内容を追加しました。
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