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コラム

コラム:GDPけん引役不在の日本経済、自動車も負け組リスク

[東京 17日 ロイター] - 2020年4─6月期の国内総生産(GDP)は前期比で年率27.8%減と戦後最悪の落ち込みとなったが、問題は7─9月期以降の展開だ。グーグルやアマゾン・ドット・コム AMZN.Oが不在の日本は、本来なら新型コロナウイルス禍で勝ち組のIT産業のパワーが弱いのが特徴だ。

 2020年4─6月期の国内総生産(GDP)は前期比で年率27.8%減と戦後最悪の落ち込みとなったが、問題は7─9月期以降の展開だ。グーグルやアマゾン・ドット・コムが不在の日本は、本来なら新型コロナウイルス禍で勝ち組のIT産業のパワーが弱いのが特徴だ。写真は三菱ふそうトラック・バスの工場、川崎市で5月18日撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

平時であれば強い自動車産業も、現在計画している回復シナリオが欧米の感染が収まらずに下振れた場合、負け組に転落するリスクがある。日本のこうした構造的なぜい弱性を、カネ余りを享受するマーケットが十分に織り込んでいるとは思えない。日本経済の実態と株価のギャップがじりじりと広がっている。

<外食・旅行などの回復メド立たず>

今回のGDPを大きく押し下げたのは、個人消費が前期比8.2%減と大幅に落ち込んだことが影響している。コロナ感染の抑制を目指した政府の外出自粛要請で、外食、旅行、交通関連の支出が大幅に減少した。

この傾向は、7月、8月に入っても継続している兆候が見られる。旧盆期間の航空、鉄道の予約状況はコロナ感染前の前年同期比で60%前後の減少となっているとみられ、回復にはコロナ感染が拡大から減少へと転換することが不可欠のようだ。

飲食店や流通における店頭販売も、4、5月のどん底からは回復しているものの、回復ペースは鈍く、コロナ前の水準をいつ回復できるのか、そのめどは立っていない。

<不動産や都市交通にのしかかる需要減>

また、消費の源泉である所得が、テレワークの普及などで残業代の減少を招き、6月の所定外給与は前年比24.6%減となり、実質賃金も同1.9%減に沈んだ。この傾向は継続することが見込まれ、10万円の定額給付金の効果がはく落する8月以降は、さらに所得面での「不安感」が醸成されやすくなると予想される。

在宅勤務の長期化や、富士通6945.Tのようにテレワークを原則とする企業が続出すると、オフィス需要の減少は避けられず、不動産業界の受ける打撃も正確に把握する必要がある。テレワークが拡大するなら、足元の決算で収益の悪化がわかった東京メトロや大都市圏の通勤需要を支えにする私鉄各社の受ける影響も長期化しかねない。

<不安感の払しょく、内需のカギに>

今回のGDPで内需寄与度はマイナス4.8%だったが、7-9月期に大幅な改善が見込めるとは到底言えないだろう。

コロナの感染者数が増加し続ける間は、いくら政府が「Go Toキャンペーン」の旗を振っても、国民が感染への「不安感」を持ち続け、消費拡大に動くことはないということが、8月の4連休や旧盆休みで実証された。

秋冬にコロナ感染が一段と拡大ペースを速める危険性があると感染症の専門家は口をそろえており、その面から内需には先行き懸念が色濃く残されている。実際、日銀の7月景気ウオッチャー調査では、景気の先行き判断ⅮIのうち、雇用関連が33.7と前月から8.2ポイントも低下。需要低下による雇用環境の悪化に対する警戒感が強まっていることを示している。

<自動車に米欧需要不安の試練>

一方、多くの民間エコノミストは、これから製造業が挽回局面に入り、生産を起点に外需は戻していくと予想する声が多い。その期待の中心は自動車だ。経済産業省が発表した6月鉱工業生産の中で、7月の生産予測値は前月比11.3%増、8月は同3.4%増とした。

強気の増加テンポの中心に位置しているのは「輸送機械工業」。確かに中国での自動車需要は、世界の中で最も順調に回復しており、中国の回復が米国や欧州に波及すれば、自動車を起点に日本の製造業は順調に回復していくシナリオを描くことができる。

しかし、米国ではニューヨーク州以外はコロナ感染の拡大の影響を受け、経済活動にブレーキがかかっており、自動車販売の先行きは不透明感が強い。欧州でも感染の再拡大への懸念が足元で強まっており、消費動向に対する楽観的な見方は後退しつつある。

<コロナ長期化に弱い日本経済の体質>

このようにみてくると、コロナ感染の拡大基調が世界規模で長期化した場合、日本経済のけん引役であるはずの自動車産業が受ける打撃は決してい小さくない。

さらに、社会的距離を取る環境変化を「追い風」にして株価を上げてきている米IT大手4社「GAFA」のような勝ち組企業が、日本では見当たらない。コロナ感染が長期化した場合、サービス業を中心とした負け組から放出される「解雇従業員」の大きな受け皿が、日本では少ないことが一目瞭然だ。

政府内では、失業者の急増を食い止める「ダム」の役割を果たしている雇用調整助成金の支給期限を今年9月末から3カ月程度、延長する方向で検討が進んでいるもようだ。12月末に同助成金を打ち切ることになった場合、かなりの失業者が出てしまうことは避けられないだろう。

その一方、マーケットは政府・日銀の打ち出した財政・金融政策を背景に潤沢なマネーを株式市場に流入させ、「流動性相場」を満喫してきた。だが、コロナ感染の長期化が現実味を帯びだしてきた場合、これまで指摘してきたように、日本経済の「抵抗力」は米国などと比べて相対的に弱い。そのことをマーケットが織り込んでくると、17日の株式市場が示しような「調整」という名の「売り圧力」の影が、次第にその存在を強めてくるのではないか。

今日、発表されたGDPは、決して「過去の数字」として無視すべきデータではない。

●背景となるニュース

・ UPDATE 3-GDP戦後最悪の27.8%減、4―6月期にコロナ自粛が消費直撃

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編集:久保信博

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