[19日 ロイター] - 世界中で何百万人もの人が封鎖措置のもとで生活を送らざるを得なくなっている。各国政府が新型コロナウイルスの拡大を封じ込めようと奮闘し、市民は何週間も自宅に閉じこもるか、せいぜい隣近所しか移動できなくなっている。
こうした新しい生活には、非常に大きな困難が伴う。教育、労働、他人との交流は、かつてないほど「オンライン」に移行した。また封鎖をきっかけとして、自分の生活を、そして何が自分にとって最も重要なのかを考え直し、思ってもいなかった理解にたどり着き、家族とのあいだで心打たれる瞬間を迎えた人もいる。
10歳の小学生、シャ・ジエさんは、オンラインで学校の授業を受けている。上海市内、両親・祖母とともに暮らす70平方メートルの集合住宅で、彼はキッチンのテーブルに座り、テレビ画面に映る中国語の授業を受ける。
「外に出るのはせいぜい1日1回、近所を散歩するくらい。両親からは、外に出るときはマスクをするように、帰って来たら丁寧に手を洗うように、と言われている」
「家で勉強したり、絵を描いたり、映画を観たり。プラモデルも作っている。プログラム可能なレゴのモデルカーも作った」と彼は言う。
ふだんの生活に戻ったときに一番やりたいことは何か、という問いに対して、彼はこう答える。「友だちとブラブラして、トイザらスでゲームをやりたい」
上海から数千キロ離れたミラノ。14歳のイタリア人ラビニア・トマッシーニさんも、やはり家庭での学習に励んでいる。
「ふだんよりかなり遅く起きて、遅く寝るようになった。家にいるとあまり集中できないので、学校に行ってもっと勉強したい。気が散らない分、学校の方が集中できる」
「こんなことはすべて終ってほしいと思う。家では気が散ることがあまりにも多いので、勉強するのは本当に大変だ。それに、病気に感染することなど心配せずに、また外に出られるようになりたいと本当に思う」
他国同様ウイルスに襲われている米国では、ウィリアム・ジェイソン・スラカ医師が、オンライン診療のやり方を学んでいる。もう患者と直接対面することも叶わないからだ。
「診察室に患者を迎える方がいい。バーチャルよりも、リアルに来てもらう方が好きだ」と彼は言う。
だが、ミシガン州ブルームフィールドで活動する40歳のスラカ医師は、できるだけ自宅で妻子と共に過すようにしている。
「外出する自由を失い、代わりに、隣にいる誰かについて心配せずに済むようになったというだけのことだ」
やはりミシガン州ブルームフィールドのリサ・エルコニン医師(57)の場合、オンライン診療を行うことで、患者からの連絡が10倍も増えた。
職場が閉鎖されたことで、人々はかつてないほど家族とともに過すようになっている。
自動車部品メーカーで働くディノ・リンさん(40)は、幸運にも、ウイルス騒動が始まる直前に、上海市内でこれまでより広いマンションに引っ越すことができた。おかげで、5歳の娘ウォウォ・リンさんも自分の部屋を持てるようになった。
「たいていは家に籠っている。強制されているわけではないが、家族を感染から守るにはそれが最善だと思っている。日用品や食品を買うために私が下に降りることはあるが、妻と娘はまったく玄関から外に出ない」
リンさんはこれまで毎週、上海から職場のある中国中央部の都市に通勤していた。
「ようやく、娘や妻とゆっくり過ごせるようになった。私たち夫婦は、娘が毎日の予定を立てるのを手伝っている。英語や算数の勉強、チェロの練習、読書、お気に入りのアニメを見るといった具合だ」
「これまでのような生活に戻ったら、まず何よりも、ちゃんとしたレストランでたらふく食べたいね。娘が願っているのは、もちろん、すぐに仲良しの友だちに会って遊ぶことだ」
北京で活動する中国のグループ「ザ・セカンド」のミュージシャンたちは、何週間も顔を合わせられなかったが、ようやく集まってライブストリーミングでファンに向けた演奏を披露できるようになった。
「バンドの仲間と2カ月近くも会わないなんて考えてもいなかった。私たちは一人っ子政策の世代なので、兄弟姉妹がいない。だからバンドのメンバーが最高の仲間だ。喜びも悲しみも、人生のすべてを分かち合っている。週末になれば彼らに会って、飲んでお喋りするのが常だった。突然それをやめなければならないというのは、何かが間違っているように感じた」とボーカルのツァン・チェンさん(30)は言う。
「こういう時期を過すというのは、両刃の剣のように思う。予定していたライブは一部延期になってしまったが、じっくりと腰を据えて作品を見直し、さらに熟成させるための時間が得られた」
香港のカトリック聖職者トーマス・ロー・クウォック・ファイさん(70)も、ライブストリーミングに頼っている。彼の教区では当面、教会における公開のミサを中止しているからだ。
「辛い決定ではあるが、私たちは神を信じており、信仰に基づく決定だった。神は私たちに、それを良き判断とするような、犠牲を捧げる力を与えてくださる」
ミラノで暮らす34歳のダンス指導者アレシア・マウリさんは、ライブストリーミングではなく、自分のレッスンを録画し、生徒たちが自宅で視聴できるようにしている。
「何か特別なダンスのレッスンを生徒たちに提供できれば面白いだろうなと思った。インスタグラムの公開ライブストリーミングで見られるようなものではなくてね。生徒にとっては、自分たちだけを対象にしたレッスンの動画があって、それを自宅で観て、練習を続けやすくする方がはるかに建設的だと思う」
ベネズエラの首都カラカスでは、51歳のアナ・ペレイラさんが、飼っている犬・猫とともに独りで暮らしている。彼女はコンピューターの前に座り、友人たちとバーチャル・ピクニックに出かける。2011年以来毎週やってきたように直接会うことはできないからだ。
だが、それだけでは物足りない。
「身体的なふれあいが必要だ。それが失われてとても寂しく思う」とペレイラさんは言う。通常の生活に戻ったらまず何をしたいかと問われて、彼女は答えた。「ハグしたい」
(翻訳:エァクレーレン)
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