[ブリュッセル 20日 ロイター] - 米製薬大手メルクの新型コロナウイルス経口治療薬「モルヌピラビル」を巡り、国連が支援する「医薬品特許プール(MPP)」と後発薬(ジェネリック)メーカー27社が、低価格版を製造することで合意した。低・中所得国向けに、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)対策の有力手段とされる同薬へのアクセスを拡大する。
メルクは昨年10月にインドの製薬会社8社とライセンス契約を締結していた。今回の契約はMPPがメルクと交渉したもので、製造企業を増やすことで生産量を拡大する。
今回の契約により、インドや中国に加え、アフリカやアジア、中東諸国の後発薬メーカー27社が成分と最終製品を製造できる。
MPPによると、この契約では105の低・中所得国に薬が配布される。広報担当者はその後、契約の対象となっている一部の企業からの納品は、早ければ2月にも開始できると述べた。
製薬会社との交渉に関わったMPPの関係者はロイターに対し、モルヌピラビルを5日間かけて40錠服用すると、低・中所得国ではコストが約20ドルになると見込まれると説明した。ただし、製薬会社の当初見積りのため変更となる可能性がある。
メルクと共にモルヌピラビルを開発した米リッジバック・バイオセラピューティクスとエモリー大学は、WHOが新型コロナのパンデミックを「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と分類している間は、後発薬メーカーが手掛ける低価格版の販売に対して使用料を受け取らない。
MPPの広報担当者によると、今回の契約の対象となる後発薬メーカーの生産量はまだ確定していないが、低・中所得国の需要はおおむね満たされると予想している。
モルヌピラビルは昨年12月に米国で緊急使用が承認され、臨床試験の結果によるとリスクが高い患者の入院や死亡を約30%減少できる。
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