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フォトログ:周囲は誘惑ばかり、メキシコの子どもを脅かす「肥満」

[テスココ(メキシコ) 16日 ロイター] - 当時11才だったダニエラさんは、医師から「あと6─7年しか生きられないだろう」と告げられた。体重は75キロ、その年齢の推奨体重の約2倍だ。ダニエラさんが医師の診察を受けたのは、軽度の心臓発作を起こしたことがきっかけだった。

メキシコ首都郊外の街テスココに住むダニエラさんは、「18才の誕生日を迎えることはないだろう、と医師に言われた」と話した。現在彼女は14歳で、体重は81キロだ。写真はメキシコ市に住むサムエルさん(47)の自宅で2月撮影。食卓に並んでいる食べ物は計約8200カロリーで、サムエルさんが発作で脳外科手術を受ける前に普段摂取していた量と同程度だという(2021年 ロイター/Carlos Jasso)

これが2年前の話だ。今でも発作時の胸の痛みを覚えている。糖尿病とも診断された。ダニエラさんにとってはお馴染みの病気だった。家族のうち8人が糖尿病の合併症で命を落としていたからである。

ダニエラさんはメキシコ首都郊外の街テスココの自宅で、「18才の誕生日を迎えることはないだろう、と医師に言われた」と話す。現在彼女は14歳で、体重は81キロだ。

別の医療施設でダニエラさんを治療した当時の医師とは連絡が取れなかったが、現在彼女を担当しているケースワーカーが彼女の言葉を裏付けてくれた。

「減量するどころか、さらに体重が増えてしまった」と彼女は言う。

ダニエラさんが普段摂取する約6600カロリー相当の食べ物。

ロイターでは、彼女がふだんの日に食べていた食事内容を再現した表を作成した。彼女が通う病院の栄養士による計算では、約6600カロリーだという。

ダニエラさんが通うメキシコ市のフェデリコ・ゴメス・メキシコ小児科病院の医師、栄養士、精神分析医たちは、過去12年間、同じような少年少女を約150人治療してきた。

ダニエラさん他7人の子どもたちが、母親と医療従事者が同席する中でロイターの取材に応じ、健康問題の克服と減量に向けた苦闘を語ってくれた。

またロイターでは、成人4人から、子どもの頃からの長年にわたる肥満との戦いについて話を聞いた。そのうち1人は、その後糖尿病の合併症により亡くなってしまった。

ロイターでは、彼らの身元を伏せるため、姓や写真を公開しないことに同意した。取材に応じた人の大半は未成年で、ダニエラさんを含め何人かについては不安定な状態にあると病院側が判断しているためだ。

子どもに対するジャンクフードの販売を制限し、糖分の高い飲料の消費に課税するなどの取り組みは行われているものの、メキシコが抱える糖尿病問題は悪化しつつある。

20歳のサラヒさんが普段1日に摂取する約6750カロリー相当の食べ物。タクシー運転手のサラヒさんは「健康的な食事をするよりも、路上でファストフードを食べる方が簡単で安上がり」だと語った。「ファストフードが大好きだけれど、自分の体重が106キロだということや体の状態のことはよく分かっている。すぐに疲れてしまう」

総人口のうち糖尿病を患う国民の比率は、この2年間で丸々1%ポイント上昇して10.3%となった。世界でも有数の高さである。10年以上も好ましくない食習慣が続いた結果が、政府統計にも反映され始めた形だ。

ノースカロライナ大学のギリングス・グローバル公衆衛生大学院のバリー・ポプキン教授は、「糖尿病という名の時限爆弾だ」と語った。ポプキン教授のこれまでの研究対象は肥満その他の栄養に関連する疾病で、最近では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との関連も調べている。

パンデミック(世界的大流行)のもとで、このテーマは緊急性を帯びてきた。

ポプキン教授によれば、メキシコの新型コロナウイルスによる死亡率は世界でも最も高い部類に入るが、その背景に肥満、糖尿病、高血圧など栄養に関連する疾病があることは明らかだという。

メキシコの死亡統計によれば、6月15日の時点で新型コロナウイルスによる死者は23万人以上。そのうち約45%は高血圧、37%は糖尿病、22%は肥満の症状があった。

17歳のグスタボさんが、減量プログラムに参加する前に1日に摂取していた約5600カロリー相当の食べ物。「母が私の健康をとても心配し、体重管理と食生活改善のために医師のところに連れて行った」

<至るところに誘惑>

高カロリーの誘惑は至るところにある。何しろ、ダニエラさんの母親が経営する小さな店でも、ソーダやポテトチップ、パッケージ商品のケーキといった菓子・飲料を扱っており、近隣の貧しい地区でも売れている。

ダニエラさんは腎臓にも問題を抱えており、運動やダイエットプランをできるだけ守るようにしていると話す。果物や野菜の味も好きになっている。

だが彼女の糖尿病の症状はコントロールが難しく、血糖値が急低下すると甘いものを食べて調整する必要がある。「すごく不安になって、何か甘いものが必要になる」

ダニエラさんの母親であるアンヘリカさんは、毎日、一人娘の生命を心配していると話した。2人とも精神分析医の治療を受けている。

「娘の症状が改善しないのでとても辛い」とアンヘリカさんは言う。「むしろ悪くなっている」

14歳のサイスさんが減量プログラムに参加する前に1日に摂取していた約6000カロリー相当の食べ物。「年齢の割に体がとても大きかったので、学校では先生とクラスメートにいじめられた」

メキシコ政府が2018年に実施した調査によれば、メキシコ国民の80%以上は毎日ソフトドリンクを消費している。ティーンエージャーの半数以上は、スナック菓子やスイーツ、デザートを毎日食べている。フェデリコ・ゴメス・メキシコ小児科病院のベツァベ・サルガド栄養士は、加工食品の成分には「ある種の依存性」があると述べた。廉価でどこででも手に入り、味も濃いからだ。

ミシガン大学によるものなど科学的な調査では、加工食品の多くは高カロリーであり、実際に依存が生じる可能性があることが分かっている。

メキシコの成人人口の半数以上は非公式経済で生計を立てている。サルガド氏によれば、両親の所得が1日の最低賃金144ペソ(約770円)に満たないことも多く、通勤に要する時間も長いという。栄養バランスのいい食材を購入・調理する時間も金もない。

<手術という選択肢>

プリシラさんが以前、1日に摂取していた約5200カロリー相当の食べ物。

プリシラさんは16歳のとき、減量のために胃の一部を切除するスリーブ状胃切除手術を受けた。彼女が減量の必要を悟ったのは、15歳で体重が父親と同じ113キロになったときだった。

ふだんの日には、彼女は5200カロリー以上を摂取していた。プリシラさんには代謝障害があり、運動やダイエットプランによる減量は挫折し、胃切除手術という選択肢が浮上したという。

「減量を試みていたとき、至るところに誘惑があった」と現在18歳で83キロあるプリシラさんは語る。

「たえずジャンクフードやスイーツを食べることがあまりにも普通になっていたこともあって、本当に大変だった」

12歳のヘレンさんが減量プログラムに参加する前に1日に摂取していた約6600カロリー相当の食べ物。

メキシコ上院は2月、栄養価が低く高カロリーの成分を含む食品を学校内やその近隣で販売することを禁止した。また、塩分、糖分、脂肪分が多い食品はその旨をラベル表示することが義務付けられている。

だが世界最大手の食品メーカーを抱える米国、欧州連合(EU)、カナダ、スイスは、メキシコに対し、こうした措置の実施を延期するよう公式に圧力をかけた。その理由は、新型コロナウイルスのパンデミックが「食品・飲料産業に大きな圧迫を加えている」からだという。

メキシコ政府当局者5人、弁護士1人、2つの啓発団体は、ロイターの取材に対し、食品産業ロビー団体がメキシコ政府による取り組みを頓挫させたと語った。

カルロスさんは16才の時点で体重137キロ。この年齢の推奨体重の2倍以上だ。1月に新型コロナ陽性と診断され、1カ月の入院生活を送った。その大半は、小児科集中治療室である。

カルロスさんが減量プログラムに参加する前に1日に摂取していた約5850カロリー相当の食べ物。

彼の部屋の中央にはレンタルした酸素吸入用のタンクが置かれ、冷蔵庫に貼ってあるカレンダーには、栄養士、呼吸器専門医の診察や新型コロナ検査の予定が示されている。

現在17才のカルロスさんは、ダニエラさん、プリシラさんと同じ治療プログラムに参加している。過食が始まったのは、学校でのプレッシャーを強く感じるようになったのがきっかけだったと話した。何度も食習慣を変えようとしたが、うまくいかず、平均的な日には5850カロリーを摂取している。

「目が覚めて、生活を変えなければいつまでもこの状態なんだとわかっている。ずっとこの体のままなんだと」とカルロスさんは語る。「体は甘いものを欲しがるけれど、ダメだと言い聞かせている」

19歳のペルラさんが減量プログラムに参加する前に1日に摂取していた約4100カロリー相当の食べ物。「私自身は自分の外見について問題はなかった。クラスメートの方が、私の体重や外見を見て問題を抱えていたと思う。私は気にしていなかった」

(翻訳:エァクレーレン)

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