June 7, 2020 / 11:46 PM / 22 days ago

焦点:南ア社会の根深い教育格差、新型コロナで浮き彫りに

[ヨハネスブルク 4日 ロイター] - ジンジ・レレフォロさん(13)は3月、緑豊かなヨハネスブルク郊外にある学費制の女子校から自宅へと送り返された。しかし、家族がオンライン教育の環境を整えてくれたおかげで、中断なく勉強を続けることができた。

6月4日、パンデミックの渦中、「教育格差」が世界中で表面化している。写真は5月、ヨハネスブルク東部テンビサの自宅で勉強するフティ・ンゴエティアナさん(2020年 ロイター/Tim Cocks)

新型コロナウイルスの感染拡大を受けたロックダウン(封鎖措置)期間中でも、レレフォロさんはインターネットにアクセスでき、学校側もオンライン教育を提供する手段があった。

だが、フティ・ンゴエティアナ(14)さんの場合は、事情が異なる。

ンゴエティアナさんが通う州立学校には、オンライン教育を提供できるような設備はなかった。仮に学校側にそ設備があったとしても、彼女の家に授業に参加するためのインターネット接続を準備する余裕などなかった。彼女が暮らすのは、ヨハネスブルク東部の黒人居住区テンビサにある、1部屋しかないレンガ作りの家だ。

パンデミックの渦中で、この2人の黒人少女のような「教育格差」が、世界中で表面化している。

南アフリカではその格差が特に鮮明で、また扱いにくい問題となっている。

アパルトヘイト(人種隔離)政策の時代、エリート校は白人だけに開放されていたが、今日では人種の壁は取り払われている。とはいえ、ほとんどの黒人生徒には学費を負担する余裕がない。少数派の白人による支配が崩壊して26年、南アフリカは今も国内の大きな格差を埋めるのに苦戦している。

南アフリカは依然として、世界で最も経済格差の大きい国の1つだ。世界銀行の2018年のデータによれば、国内資産の71%が上位10%の世帯に集中してる。

学校教育は8日から部分的に再開されるが、教育格差が拡大する恐れが生じており、政府閣僚や教員組合、生徒の親たちは懸念を深めている。

パンデミック対応という点で最も不利な条件にあるのが、アパルトヘイト時代に主として黒人居住区や農村地域に作られた学校だ。インターネット接続環境も劣悪で、教室あたりの生徒数も多く、設備も不足している。

レレフォロさんの父親サイモンさんは、「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)によって格差が表面化した」と話す。サイモンさんは1994年、黒人居住区を離れて一流大学に進学した。現在は教会の牧師であり、娘のためにエリート教育の学費を払う余裕がある。

「パンデミックを機に、私たちは考え始めている。恵まれた立場にある私たちは、こうした格差を縮小するためにこれまで何をやってきたのか、と」

<再開時期をめぐる論争>

学校は今月初めから授業を再開する予定だったが、一部の教員や組合が、COVID-19から職員を守るために政府がもっと対策を講じるまでは、再開するのは危険だと主張した。

政府当局者はこれに対し、基礎疾患のある人や高齢者に比べて児童の感染リスクははるかに低いにもかかわらず学校閉鎖を長引かせれば、今の学童や生徒の世代は、教育の重要な部分とそれがもたらす将来のチャンスを失うことになりかねない、と反論している。

ウェスタンケープ州では、野党民主同盟が、小学校・中学校の最終学年について授業再開を遅らせるよう命じたモチェハ基礎教育相の指示を拒否した。与党と異なり、民主同盟は労働組合からの影響を受けていない。

とはいえ、南アフリカ国内の新型コロナウイルス感染者の3分の2は、このウェスタンケープ州で発生している。

同州のデビー・シェイファー教育長は、州内の学校は必要な感染防止策を実施しており、授業再開をさらに一週間遅らせることはしないと述べた。同州の学校は6月3日に再開された。

教育省の広報担当者にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

<「2層」体制>

南アフリカの教育システムでは、数百万人単位の子どもが基礎的なスキルを教えられることなく置き去りにされている。

国際教育到達度評価学会(IEA)が2016年に実施した識字率調査では、南アフリカの生徒の78%は、9~10歳の時点までに文字を読んで意味を理解することができなかった。この割合は、モロッコでは64%、米国では4%だ。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが2月に公表した報告書によれば、学校に入学した生徒100人のうち、高校の卒業試験に合格するのは40~50人、大学に進学するのは14人だ。

ステレンボッシュ大学(ウェスタンケープ州)の教育専門家ニック・スポール氏は、「この国では依然として、2種類の南アフリカ国民が隣り合って暮らしている」と語る。「2層構造の学校システムは、人種別ではなくなったが、それでも2層構造であることには変わりない」

ロックダウンのもとでは、インターネットアクセスの格差により、こうした不平等が拡大している。

国際電気通信連合(ITU)のデータによれば、南アフリカではコンピューターを所有している世帯は全体の22%にすぎない。インターネットにアクセスできる世帯は60%ある。

アパルトヘイトの終焉後に政権を握ったアフリカ民族会議は、数百万人に電気と上水道をもたらし、貧困層は3分の1減少した。

教育も改善された。スポール氏によれば、1994年からの20年間で、黒人の大学卒業者数は4万8600人と4倍に増えた。

だが最貧困層にとっては、状況は依然として厳しい。スポール氏は、その原因の一端は教師の質の向上が進んでいないことにあるという。教師たちの多くが、アパルトヘイト時代の教育を受けて育っている。

<「ネットに接続できない」>

ジンジ・レレフォロさんは、広々とした自宅のダイニングルームからビデオ会議システムを使った授業に出席し、ソーシャルメディア経由で配布される宿題に取り組んでいる。

授業の合間、レレフォロさんはロイターに対し「授業がオンラインになるのは特に問題なかった」と語った。 彼女がいる自宅ラウンジからは屋外プールが見えた。それから彼女は、美術のバーチャル授業に備えてスマートフォンをセットした。

約35キロ離れたンゴエティアナさんの自宅では、ンゴエティアナさんが勉強しようとしていた。彼女が両親と暮らすこの家では、寝るのも食べるのも、洗濯も皿洗いも同じ部屋だ。外を行き交う車や人々の話し声がひっきりなしに聞えてくる。

ンゴエティアナさんは、算数の練習問題から顔を上げ、「ロックダウン中、先生からは何の宿題ももらっていない」と言う。「ネット接続がないから、あまり勉強できていない」

南アフリカの黒人の大半は、ンゴエティアナさんの通う学校のような、学費無料で資金難の学校に頼っている。

過去のアパルトヘイト体制のもとでは、こうした学校はごく限定された教育を提供するためのものだった。その役割は、黒人の子どもたちに低賃金の職業に向けた訓練を与え、白人に従順な状態に留めることにあった。

1994年にすべての人種による民主制が導入されたことで、その状況も変わるはずだった。

ンゴエティアナさんの学校が、小学校・中学校の大事な最終学年の授業再開予定日である8日に再開されるのかは不透明である。

教員組合は、マスクや手洗いの設備、手の消毒液がすべての学校に支給されるまでは職場復帰しないという態度を固めている。

だがスポール氏によれば、4分の1以上の学校に水道が普及していないことを考えれば、これは難しい注文だという。

農村地域の多くの学校にはトイレもない。代わりに戸外の落下式便所を使っている。また、ロックダウン中に破壊・放火を受けた学校も多い。

教育の平等を求める団体に参加するザマ・ムトゥンジ氏は「影響は非常に大きい」と語る。「生徒たちは、卒業も大学進学もできないかもしれない。落ちこぼれた状態に置かれるだろう」

6月4日、パンデミックの渦中、「教育格差」が世界中で表面化している。写真は5月、ヨハネスブルクの自宅でオンライン授業を受けるジンジ・レレフォロさん(2020年 ロイター/Tim Cocks)

レレフォロさんと違い、ンゴエティアナさんの父親のジュリウスさんの場合、アパルトヘイトが終っても運命は大きく変わらなかった。ジュリウスさんは、娘の学校を見ていると自分の頃を思い出す、と言う。1つの教室に60人もの子どもたちが押し込められているせいで、学習は困難だった。

「改善はされているが、十分ではない」と彼は言う。

(翻訳:エァクレーレン)

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