March 18, 2020 / 3:00 AM / 20 days ago

焦点:米政権の1000ドル給付案、課題は「どう全国民に届けるか」

[ワシントン 17日 ロイター] - 新型コロナウイルス感染症が世界的な景気後退(リセッション)をもたらす恐れが出てきていることから、トランプ米政権は家計への現金給付という異例の政策を導入しようとしている。

3月17日、新型コロナウイルス感染症が世界的な景気後退(リセッション)をもたらす恐れが出てきていることから、トランプ米政権は家計への現金給付という異例の政策を導入しようとしている。写真はニューヨークのタイムズスクエアで撮影(2020年 ロイター/Carlo Allegri)

米国では航空会社が運航便を大幅に減らし、当局が飲食店の営業や、スポーツなど各種イベントの休止を命じており、経済活動が冷え込んでいる。そこでトランプ大統領とムニューシン財務長官は17日、成人の国民に1人当たり最大1000ドル(約10万7000円)相当の小切手を送付し、その支出を通じて数千億ドルを素早く実体経済に流し込むことを提案した。

<効果的な現金支給>

具体的なやり方はまだ不明だが、政府は世界金融危機「グレート・リセッション」が根付き始めた2008年2月に実施した措置を参考にできる。当時成立した経済刺激法では、数カ月内に経済に流入させる目的で、国民1人当たり平均600ドルを支給することが定められていた。

お金は内国歳入庁(IRS)がネットを利用して確定申告する納税者の銀行口座に直接振り込み、他の納税者には小切手が送られた。連邦税を納付できないほど所得が低い人は、その年に別途、IRSに現金支給を申請しなければならなかった。

エコノミストの間では、1930年の大恐慌以降で最も深刻だった当時の経済の落ち込みを和らげる上で、この現金支給が最も効果的だったとの結論が出ている。

<与野党で支持の機運>

今回もそうした措置を講じるには議会の承認が必要だが、与野党双方ともに支持する機運が高まりつつある。

共和党のトム・コットン上院議員は16日に行われた新型コロナ対策法案の審議で「われわれは、既存のシステムを駆使してできるだけ速やかに労働者とその家族に現金を渡す必要が絶対にある」と発言した。これまでコットン氏は、給付金制度には批判的で、災害被災者救済法案にも反対していたが、態度が一変した形だ。

現金給付を提唱する人々は、政府が数カ月中に国民にお金を届けられ、すぐ経済に環流されるという点で、給与税減税などと比べて即効性があると主張する。

ワシントン・センター・フォー・エクイタブル・グロースのマクロ経済政策ディレクター、クラウディア・サーム氏は「国民にお金を配るべきだ。彼らは消費を拡大してくれるだろう」と期待を口にした。

共和党ではミット・ロムニー上院議員も、さらには民主党でもシェロッド・ブラウン上院議員が1000ドル給付案を唱え、民主党のカマラ・ハリス上院議員は家計に「緊急の現金」を届けるよう訴えた。

米国のほとんどの世帯は貯蓄があったとしてもごくわずかなので、失業すれば給付されたお金は家賃その他の費用に回されるか、食料などの必需品に使われて経済に戻ってくるとの見方が出ている。

<時期尚早の声も>

ただ新型コロナの経済的な影響がなおはっきりしない今、現金給付は時期尚早ではないか、と話すエコノミストもいる。確かに航空業界や外食業界はひどい痛手を受けそうな半面、例えばアマゾン・ドット・コムは16日、宅配受注の急増を受けて10万人を新規雇用すると表明。米連邦準備理事会(FRB)の積極的な金融緩和が効果を発揮するまでにもまだ何カ月もかかる。

保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のエコノミスト、ポール・ウィンフリー氏は、新型コロナ感染拡大に伴う「ソーシャル・ディスタンシング(他人と一定の距離を保つこと)」が、現金給付による外出と消費の促進を阻む恐れがあると指摘し、「国民全員にモールや映画鑑賞に出掛けて小切手を使え、と公衆衛生当局が果たして勧めるべきなのかどうか分からない」と述べた。

<膨れ上がる財政支出>

もちろん現金給付にも、他の政策措置と同様にそれなりのコストが発生する。

08年の場合は、IRSが5月から7月にかけて前年に確定申告した世帯に1億3200万件余りの支払い作業を実施した。議会予算局(CBO)によると、政府には税収減と支出増で1060億ドルの費用がかかったという。

それでもエコノミストは、リセッションの逆風を緩和するために政府が打てる手としては、税金還付が一番効くと分析している。ムーディーズ・アナリティクスの試算では、給付金1ドル当たり1.51-1.71ドルの経済活動を喚起するからだ。

もし議会がトランプ政権の1000ドル給付案を承認すれば、過去最大に近い財政赤字を抱えている局面ながら、これまでよりずっと大幅な歳出項目になるだろう。しかし経済対策という面ではまだ足りないかもしれない。ブリッキングス研究所のハミルトン・プロジェクトのエコノミスト、ジェイ・シャンボー氏は、議会が低所得者向け食料購入制度(フードスタンプ)を早急に拡充し、また給与税を軽減して企業のレイオフを最小限に食い止めるべきだと提言した。

シャンボー氏は「現金給付は良いアイデアであるとはいえ、唯一の対策にしてはならない。国民全員の懐にお金が行き渡るようにすることが必須だ」と強調した。

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