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ブログ:新型コロナと戦う医療現場、苦しみと悲しみの最前線

[ボルチモア 15日 ロイター] - 勤務シフトは長時間に及び、胸の痛む場面が続く。メリーランド州のある病院では、看護師・医師たちが数週間にわたって新型コロナウイルスに感染した患者の治療に当たっている。患者が死に瀕しても、家族を呼び入れて最愛の人に別れを告げてもらうことはできない。

看護師のジュリア・トレイナーさんにとって、最近の勤務のなかで最も辛かった瞬間の1つは、ある女性患者にチューブ挿管を行った後、彼女に話しかけられるよう配偶者に連絡したときだ。といっても、夫は病院に入ることは許されるわけではなかった。4月8日、メリーランド―州の病院で撮影(2020年 ロイター/Rosem Morton )

この病院の看護師ジュリア・トレイナーさんにとって、最近の勤務日のなかで最も辛かった瞬間の1つは、ある女性患者にチューブ挿管を行った後、彼女に話しかけられるよう配偶者に連絡したときだ。といっても、夫は病院に入ることは許されない。

「電話に出てもらって、こちらでは患者の耳に携帯電話を押し当てていた。彼は妻に本当に愛していると語りかけていた。私は、彼女の涙をぬぐってあげなければならなかった」と、外科集中治療室(ICU)で働くトレイナーさんは言う。「重症の患者は見慣れているし、患者が亡くなるのにも慣れている。だが、それとこれとはまったく違う」

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新型コロナウイルスを原因とする感染力の強い疾病「COVID-19」の患者は全米で58万人以上、2万4000人近くが死亡している。

首都ワシントンに隣接するメリーランド州では3月30日以降、感染拡大を防ぐため住民に外出禁止が命じられている。現在、同州では約9000人が検査の結果陽性と診断され、260人以上が命を落としている。

州内のある病院では看護師・医師の多くが12時間以上の勤務シフトについているが、そのうち何人かが、勤務終了後、最も辛かった瞬間について語ってくれた。病院の名称は伏せておくよう要請されている。

12時間のシフト勤務を終えたばかりのアーネスト・カパドニャンさん(29歳)。

医療従事者たちは口を揃えて言う。最も辛い仕事の1つは、心身をすり減らすような勤務スケジュールや新たな部署への適応よりも、患者とその家族の苦しみを目撃することだ。

この病院では、ウイルスのこれ以上の拡散を防ぐために面会謝絶の方針を取っており、医療スタッフは、患者の身体的なニーズに気を配るだけでなく、患者の家族が不在のなかで、感情面でのサポートもできる限り提供しなければならない。

トレイシー・ウィルソンさん(53歳)。12時間のシフトを終え、「未知の要素がたくさんある。そしてそういう未知の要素が、私たちの対処したことのない多くの不安やストレスになっている」と話す。

「勤務シフトのなかで最も辛いのは、COVID-19患者が、なすすべもなく、家族の看取りもなしに死んでいくのを見ることだ」 この病院の隔離病棟で看護師として働くアーネスト・カパドニャンさんは言う。

家族とのコミュニケーションも病院スタッフに重くのしかかる。家族が必死の思いで電話をかけてきても、面会謝絶のルールを緩めるわけにはいかない。

「今日は患者の1人がベッドから転落して、配偶者にそのことを電話で告げなければならなかった。彼女はどうしても面会に来たいと懇願したが、それは不可能だった」と看護師の一人、トレイシー・ウィルソンさんは言う。

13時間のシフトを終えたティファニー・フェアさん(25歳)は、「私が参加している治療チームは本当に素晴らしい。とてもうまく協力しているし、この危機の中で非常に団結している。病院内の所属が違うから互いによく知らなかった。団結してこれだけうまくやっていくのは大変だったけど、そのことが私に希望を与えてくれる」と語る。

「最も辛い瞬間の1つは、COVID-19患者の家族が、iPad経由で別れを告げるのを見なければならないということだ」と語るのは、隔離病棟の看護師ティファニー・フェアさん。「愛する人に会えないまま、彼らは亡くなってしまう」

シェリル・マックさん(46歳)。12時間のシフトを終え、「COVID-19の蔓延は多くの人の生活に影響を及ぼしている。危機を引き起こし、広い範囲で死者が出ている。だから誰か1人の力にすがるのではなく、これは個人で対応できる戦いではないのだという思いを、世界のすべての人に共有してほしい」と話す。

お互いに気を配り、誰かが一息入れる必要があるときには相互にカバーしようとしているものの、勤務シフトの最中に休憩をとるチャンスは非常に少ない。

緊急治療室で勤務する看護師のシェリル・マックさんは、勤務中に15分だけ外の空気を吸うようにしているという。

「新鮮な空気を吸うだけで、救われる思いがする」とマックさんは話す。

マーティン・ベルさん(41歳)。6時間のシフトを終えたばかり。「今回の事態で一番辛いのは、自分と同じ医療従事者の治療をすることだ。自分であっても不思議ではない誰かが担ぎ込まれ、私がその治療を担当するというのは、心に重くのしかかるし、本当に怖い。ひとたび医療従事者が病気に倒れ始めたら、誰がみんなの治療をするのかということも深く考えさせられる」と語る。

シフトの最後には、毎回同じように除染の手順が繰り返される。看護師と医師は、自宅で家族に接する直前に、個人防護具(PPE)を外し、シャワーを浴びなければならない。

「とても長い時間、熱いシャワーを浴びる。それからソファーに座って、本を読むか、ストレス解消のために下らないリアリティショー番組を観る」。一定レベルの治療を許されている診療看護師のマーティン・ベルさんは言う。

ローラ・ボンテンポさん(50歳)。9時間のシフトを終えたところ。「患者の治療には慣れている。これまでもずっとやってきた。だが、自分が治療している患者が、実は自分にとってもリスクになることが分かっているというのが、非常に異なる点だ。病院で働く人間が、病人の治療を恐れることはない。ただ、スタッフの安全も、患者の安全も同時に守りたい」と話す。

救急医療医のローラ・ボンテンポさんは、自宅の外に作った除染テントのなかで手術着と防護具を外し、タオルを身体に巻いてシャワーに駆け込むという。

それから、他の衣類との接触を防ぐため、手術着だけを洗濯機に放り込む。

ミーガン・シーハンさん(27歳)は、12時間のシフトを終え、「一番辛いのは、私たち一人一人の中ににある恐怖だ。未知の要素がたくさんある。明日何が起きるのか、来週私たちが足を踏み入れるとき緊急治療室がどうなっているのか、心配している。同僚についても、感染してしまうのではないかと心配している。自分が無症状の感染者になって、自宅の家族や愛する人のもとにウイルスを運んでしまいかねないという恐怖もある。医療用品が底を突いてしまう懸念も大きい。そして患者を前にして、いつもなら命を救うためにできることを、今はやり尽くせないのではないかという不安もある」と語る。

診療看護師のミーガン・シーハンさん(27歳)は毎晩、車で帰宅するとき、ラジオのスイッチを入れないという。静かなひとときの間に、その日のシフトと患者のことを考える。家に帰ったら、昼間のことについては考えないようにしている。

「家に着いたらすぐにシャワーを浴びて、家族と夕食をとり、病院の話題は出さないようにしている」と彼女は言う。「いちばん辛いのは何と言っても夜だ。翌日はどうなるのだろうと絶えず考えてしまうから」

(翻訳:エァクレーレン)

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