April 1, 2020 / 3:34 AM / 4 months ago

焦点:新型コロナ、全米規模で警官を直撃 犯罪捜査にも影響

[ニューヨーク 30日 ロイター] - 3月25日、ブロンクスのメルローズ・アベニュー近く。容疑者逮捕のために9人の警察官が駆けつけた。だが、その誰一人として、新型コロナウイルス対策のマスクや手袋を着用していなかった。

同じような光景は、市内のいたるところで日常的に見られる。20人を超えるニューヨーク市警察官へのインタビュー、そしてロイターの記者が目撃した状況から分かったのは、容疑者を逮捕し、担当地区をパトロールし、緊急通報に対応する警察官は、身を守るための衛生用品を着用していないという現実だ。

国内最大規模の警察であるニューヨーク市警察によれば、30日の時点で新型コロナウイルス陽性の判定を受けた者は930人。内訳は制服警官が824人、内勤職員が106人である。全職員5万5000人のうち、5199人が病欠しているという。

ロイターが25日から29日にかけて国内で最も規模の大きな警察上位20機関を対象に行った調査では、ヒューストンやデトロイトなど大都市の警察では、現場レベルでの感染の拡大により、警察官が職場離脱を余儀なくされていることが分かった。この調査と、各警察の公式発表を検証した結果、警察官・内勤職員1169人の新型コロナ感染が確認されている。

ただでさえ人員不足に悩んでいるのに、このパンデミック(世界的な大流行)によって警察の陣容は縮小している。多くの警察では配下の警察官に対し、公衆とのやり取りを制限し、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)を維持するよう命じている。パトロールに当たる警察官のなかで病欠が増えているため、私服警察官や管理部門の職員を配置転換し、緊急対応に当たらせている警察もあるが、そのためには大事件の捜査担当者を引き抜かざるをえない。

警察向けに政策課題に関する勧告を提供しているシンクタンク、ポリス・エグゼクティブ・リサーチ・フォーラムでエグゼクティブ・ディレクターを務めるチャック・ウェクスラー氏は、「盛んに訓練が行われている」と言う。「多くの警察では、優先課題や通報対応の順位付け見直しを迫られつつある。警察は、自らのリソースの使い方を再編しなければならない」

最大の課題に直面しているのはニューヨーク市警察かもしれない。それだけ同市では感染拡大が深刻なのだ。30日の時点で全米で報告されている新型コロナウイルスによる死者は3017人、そのうち914人がニューヨーク市内だ。

ロイターが取材した警察官によれば、衛生用品が不足しているために脆弱な状態に置かれており、家族や市民にウイルスを拡散させてしまうことが心配だという。

第33警察管区の警察官は、「我々は何が起きても真っ先に駆けつけるが、完全に無防備だ」と話す。

ロイターがインタビューした警察官は全員、匿名を条件に取材に応じている。記者に話をすることは警察本部から禁じられているという。

ニューヨーク市警察の広報官を務めるジェシカ・マクローリー巡査部長によれば、同市警察は「前例のない」危機への対応を進めており、警察官向けに、身を守る方法について詳細なガイドラインを配布したという。マクローリー巡査部長によれば、感染拡大が始まって以来、同市警察は職員に対し、手袋20万4000組、N95マスク7万5000枚、サージカルマスク34万枚、そしてアルコール除菌剤、除菌用ローションを12万5000個配布したという。

ロイターは、警察官3万6000人、内勤職員1万9000人を保護するために、これだけの数量(そのほとんどは使い捨てである)で十分なのかと質問したが、ニューヨーク市警察からの回答は得られなかった。また同市警察は、「衛生用品はほとんどまったくない」という警察官の証言や、十分な備品の調達が困難になっているかという点についてはコメントしなかった。

パンデミックによる世界的な需要急増に伴い、マスクその他の衛生用品は品薄になっていることが多く、救急隊員や医師、宅配便ドライバーに至るまで、日常的に公衆に接する幅広い職種の労働者から、安全性を懸念する声が上がっている。

ニューヨーク市警察では、感染に関する情報を知らされていなかった警察官1人、内勤職員2人が、COVID-19により死亡している。勤続23年のベテラン刑事、ハーレム地区を担当する第32警察管区のセドリック・ディクソンさんが亡くなったのは29日のことだ。

3月13日、ニューヨーク市警察組合は、保健安全分野を監督する州当局に、市警察本部が衛生用品と適切な洗浄・消毒用品を提供していないとして苦情申立を行った。同組合では、警察官の家族に対する脅威を強調している。

「警察上層部は、リスクにさらされているのが我々警察官だけではないという点を思い起こすことが重要だ」と市警察組合のパトリック・J・リンチ委員長はコメント。「我々の夫や妻、娘や息子たちは、警察官という仕事を選んだわけでもないのに、我々とともに犠牲になってしまう」

ニューヨーク市警察に所属する警察官の家族に感染者が出ているか否かについては、ロイターでは確認が取れなかった。

<警察官は職場離脱、逮捕の先送りも>

全国各地の警察は配下の警察官を守ろうと努めているが、体調を崩した警察官抜きで業務を回していくのも一苦労だ。ロイターの調査では、職員のうち新型コロナ陽性となった人数、隔離されている人数、感染拡大により業務にどのような影響が出ているかを各警察に尋ねた。

感染者数が2番目に多かったのはナッソー郡警察(ロングアイランド島、ニューヨーク市に隣接)であり、職員68人が陽性と診断されている。デトロイトでは、警察本部長を含め少なくとも69人の警察官が陽性と診断されたことで、総勢2200人のうち、598人が隔離されている。部隊長1人、緊急車両指令担当者1人が新型コロナ感染後に亡くなっている。

感染が確認された職員が報告されていないのは、サンアントニオ警察のみである。

ニューオーリンズとシアトルは、調査対象とした上位20機関には含まれていないが、感染が集中する「ホットスポット」であり、両市の警察がロイターに語ったところでは、警察職員7人が陽性判定を受けている。

新型コロナの感染拡大によって、全国の警察は、業務戦略の広範囲にわたる変更を余儀なくされている。

国内の警察として4番目に大きく、警察官6540人を擁するフィラデルフィア警察は、暴力性のない一部の犯罪については逮捕を先送りしはじめている。つまり、容疑者を刑事部門で処理するのではなく、身許の確認と必要書類の作成のためだけに一時的に拘置される、という意味だ。容疑者は後日逮捕されることになる。

警察官2440人を擁するナッソー郡警察では、28日の時点で警察官163人が隔離されている。緊急車両指令担当者は、緊急通報すべてを精査して、助けを必要としている人がCOVID-19の症状を示しているかどうかをチェックする。対応する警察官・医療担当者は、N95マスク、手袋、防御用アイウェア及びガウンの着用を命じられるという。

一部の警察では、庁舎への立ち入りを制限している。やはりロングアイランド島にあり、警察官2500人近くを擁するサフォーク郡警察では、7つの警察管区すべてで庁舎入口にインターフォンを設置した。立ち入りを許可する前に、来訪者に症状が出ていないか確認するためだ。

職員のうち2人が陽性判定を受け、34人が隔離されているダラス市警察では、もはや一部の軽犯罪の通報については警察官が直接立ち会って対応することはない。その代わり、オンラインで通報内容を提出するよう市民に要請している。

主要な警察では、衛生用品の不足に対する不満が高まっている。たとえばダラス市警察の場合、3000人を超える警察官に、N95マスク、手袋、除菌用ローションを配布した。だが同市警察組合の委員長によれば、これでも十分ではなく、N95マスクは再利用を想定したものではないにもかかわらず、多くの警察官は同じマスクを何日も使っているという。

ダラス市警察協会のマイケル・マタ会長は、「マスクの需要はそこまで切迫している」と語る。「我々は非常にまずい状況にある」

マタ会長によれば、市警察がさらに多くの衛生用品を発注したという話を聞いているという。ダラス市警察の広報担当者は、新たな調達分については30日から配布が始まる予定だと述べ、一部のパトロール地域で不足していることを認めた。

現・元警察官へのインタビューによれば、ニューヨーク市では衛生用品の不足に対する不満が深く浸透しているという。「9.11」の直後、くすぶり続ける世界貿易センタービルのがれきの処理に携わった警察官らは、現場の空気は呼吸しても問題のない状態だと言われていたという。だが数年後、「9.11」に関連してガンなどの命に関わる疾病を発症した者は多い。

ニューヨーク市警察のある警察官は、「9.11のときよりもひどい」と語る。「ウイルスを家族のいる自宅にまで持ち込むことになる」

<犯罪者には「ビジネス・アズ・ユージュアル」>

各地で外出禁止命令が出され、企業活動の停止によって経済がまひ状態にある一方で、犯罪が大きく減少した様子は見られない。ロイターはいくつかの大都市における警察出動記録を検証したが、車両停止件数ははるかに少なくなっているものの、もっと深刻な犯罪に関する通報率はこれまでと変わっていない。

30日、メリーランド州知事による、必要不可欠なものを除く企業活動停止命令の後、ボルチモア市警察の出動記録によれば、車両停止を命じた件数はわずか71件だった。これに対し、新型コロナ騒動以前の数カ月は、平均1日350件を超えていた。

だが、もっと深刻な事件に関する出動は減少していない。たとえばDVなど家庭内でのトラブルに関する通報件数は、3月16日に州知事が最初に企業活動の制限を命じた後、わずかに増加している。身体的暴力を伴う事件に関する出動件数はほぼ変化していない。

ボルチモア市警察にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

 3月25日、ブロンクスのメルローズ・アベニュー近く。容疑者逮捕のために9人の警察官が駆けつけた。写真はニューヨークの警察官。30日撮影(2020年 ロイター/Andrew Kelly)

多数の大規模警察について、集音マイクのネットワークを使って発砲件数を追跡調査している企業ショットスポッターによれば、ニューヨーク、ワシントン、シカゴ、サンフランシスコ、マイアミに関しては、発砲件数の顕著な減少は見られないという。

ショットスポッターのラルフ・クラーク社長は、「銃器犯罪に関しては、残念ながら、ビジネス・アズ・ユージュアルだ」と語る。

(Michelle Conlin、Linda So、Brad Heath、Grant Smith記者、翻訳:エァクレーレン)

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