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アングル:米ワクチン正式承認、接種義務化が「劇的に」進展か

[24日 ロイター] - 米食品医薬品局(FDA)が23日、製薬大手ファイザーと独ビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチンを正式承認したことで、従業員が接種義務化に反対して雇用主を訴えても、勝訴することはほぼ不可能になる見通しだ。複数の法律専門家がこうした見解を示した。

 米食品医薬品局(FDA)が8月23日、製薬大手ファイザーと独ビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチンを正式承認したことで、従業員が接種義務化に反対して雇用主を訴えても、勝訴することはほぼ不可能になる見通しだ。複数の法律専門家がこうした見解を示した。写真は18日、ニューヨークの施設でファイザー/ビオンテックのコロナワクチンの接種を受ける人(2021年 ロイター/David 'Dee' Delgado)

ワクチン関連法についての論文執筆者、ブライアン・ディーン・エイブラムソン氏はFDAの決定について「劇的だ」と述べ、この決定と、決定に伴う接種義務化を巡って訴訟を挑むのは極めて難しくなると予想した。

FDAによる正式承認を受け、政府や民間企業による接種義務化を予想する声が強まっている。

米国では昨年12月から、FDAによる緊急使用許可(EUA)に基づいて新型コロナウイルスワクチンの接種を受けられるようになった。

EUA法は、接種を受ける人はワクチンの利点とリスクについて説明を受けるとともに、接種を受けるか拒否するかを選べなければならない、と定めている。

USヘイスティングズ・ローのドリット・リース教授によると、雇用主による接種義務化は通常、合法と考えられているが、EUA法の文言によってやや不透明感が生じていた。その不透明感が「正式承認によって取り除かれた」という。

FDAの発表を受け、ドラッグストア大手CVSヘルスや石油大手シェブロン、金融大手ゴールドマン・サックスなどが一部従業員への接種義務化を発表した。

法律専門家によると、雇用主はワクチンの緊急接種を義務化できる、との総意は既に形成されつつあった。雇用機会均等委員会と司法省はともに、健康状態や宗教上の理由による例外を設けた上で接種を義務化することを支持する指針を発表していた。

しかし、緊急時の接種を義務化して訴えられた組織もある。これまでに起こされた訴訟は少なくとも十数件。大半は学生が大学を訴えたものだが、中には接種拒否を理由に不当解雇されたとして従業員が企業を訴えた事例もある。

大半の訴訟は、接種を受ける人の同意を義務付けたEUA法の文言をとらえ、義務化は不可能だと主張するものだ。

法律専門家は、今後もワクチン接種義務化を巡る訴訟が続くのはほぼ確実だと言う。特に公的組織や公立大学に対しては、政府が個人の憲法上の権利を侵害しているとの主張が展開されそうだ。この主張は民間の雇用主には当てはまらない。

ただ法律専門家に聞くと、政府が雇用や教育の条件として接種を義務化している限りにおいて、こうした訴訟が勝利を収めるのは難しい。 「別の雇用主の下で働いたり、接種を義務付けていない学校に通ったりすることは、いつでも可能だからだ」(法律事務所ホーランド・アンド・ナイトの弁護士ジェフリー・ノーラン氏)。

多くの雇用主は、接種を受けた人にギフトカードや特別休暇を与えるなどの接種促進策を試みてきた。法律専門家によると、こうした取り組みは自然消滅しそうだ。

FDAの正式承認が下りたことで、雇用主は従業員への接種義務化を進める準備が整っているもよう。

雇用主を代表する法律事務所フィッシャー・フィリップスの弁護士サマンサ・モンシーズ氏は、「ここ2日間で私に入ってきた仕事を見る限り、FDAの承認によって多くの雇用主の局面が変わろうとしている」と語った。

(Tom Hals記者)

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