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情報BOX:新型コロナワクチン「有効性90%超」の意味とは

[チューリヒ 12日 ロイター] - 今週は新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発者から朗報が相次いだ。米製薬大手ファイザーPFE.Nとドイツのバイオ企業ビオンテック22UAy.DEは、共同開発するワクチンの臨床試験(治験)の暫定データで90%以上の有効性が示されたと発表。翌日にはロシアが、同国のワクチン「スプートニクV」の治験で有効性が92%だったと発表した。

 今週は新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発者から朗報が相次いだ。米ファイザーと独ビオンテックは、共同開発するワクチンの臨床試験の暫定データで90%以上の有効性が示されたと発表。翌日にはロシアが、同国のワクチン「スプートニクV」の治験で有効性が92%だったと発表した。写真は4月撮影(2020年 ロイター/Dado Ruvic)

今回の有効性データが何を物語るかについてまとめた。

<今回の治験方法>

ファイザーの場合、ボランティア4万3500人超が参加する後期治験で半数にワクチンを、半数にプラセボ(偽薬)を投与し、症状が出てウイルス検査で陽性が確認された人数が94人に到達してから発表した。

治験で有効性が90%超なら、ワクチンを受けていて陽性になったのは94人のうち8人を超えないことになる。つまり、残りはすべて偽薬を投与された人々ということだ。

ケンブリッジ大学のデービッド・シュピーゲルハルター教授(リスク統計学)は「大まかに言って、ワクチン投与と偽薬の比率は8人対86人だったことになる」とし、「これがとても印象的な結果だということを示すのに特殊な統計分析はいらない。衝撃的だ」と述べた。

ロシアでは、スプートニクVを開発したガマレヤ記念国立疫学・微生物研究センターは、ボランティア1万6000人を対象にした後期治験で20人が発症した時点で、有効性92%の暫定データを公表した。被験者の約4分の1が偽薬を投与された。センターは被験者数を4万人に拡大する方針。

ケンブリッジ大のシュピーゲルハルター教授はスプートニクVについては「ある程度効果があることを示したが、その程度を推定するには十分ではない」とした。

<大規模治験で必要な感染者数>

何人かの専門家は、理想的にはワクチン有効性について信頼できる評価をするには数万人規模の治験で、150人から160人の感染を確認・観察することが必要としている。ただ、これは経験則的なもので、まださまざまな判定の余地がある。

スイス臨床試験機関(SCTO)によると、治験で信頼できる判断をするのに何人が必要かという規制上の基準はない。「(感染者の)数は疾病やリスク要因にもよる。かなりケースバイケースの評価になる」と同機関は指摘する。

規制当局は一般的に、治験の評価が、対象のワクチンや薬と無関係にたまたま発生した事象ではないということを見るため、少なくとも95%の確率を目指す。

治験を行う側にとっては、十分な規模の治験をすれば95%のハードルを越えるのを確実にできるため、大人数の治験の方が安心だ。しかし、治験の規模のメリットが大きくなるほど、厳密な結果が求められる治験参加者が少なくなる。

ファイザーとビオンテックの治験では、164人が感染したところで最終分析をする計画にしていた。感染者が32人に達した時点での分析を飛ばし、62人になった時点での暫定分析を発表する準備をしていたところ、94人の感染が判明した。

スプートニクVの治験は手順などが入手できないため、詳細は不明。

<今回の結果は薬や他の病気のワクチンに援用できるか>

末期がん治療薬などに対する一般的な薬品治験では、新しい医薬品のメリットがそれほど明白ではないこともある。余命がわずか数カ月延びたというだけでも、そうした患者にとっては革命的なことがあるからだ。

しかしワクチンの場合、わずかな効果では不十分だ。世界保健機関(WHO)は治験の有効性では理想的には少なくとも70%が望ましいとしている。米食品医薬品局(FDA)は少なくとも50%の有効性を求める。

ファイザーとロシアの今回の有効性はいずれもこれを達成しているし、通常のインフルエンザワクチンに求められる比率も上回っている。米疾病予防管理センター(CDC)は通常のインフルワクチンに対しては40-60%の確率で感染リスクを減らすことを見込んでいる。

CDCによると、ワクチンを1コースで2回投与する方法で、はしかワクチンは97%、水疱瘡ワクチンは90%の有効性が見込まれている。ポリオワクチンは2回投与で90%、3回目も投与すると有効性が100%近くなる。

<最終分析で結果が変わるか>

ファイザーは9日、今回のワクチンの有効性は最終分析で変わるかもしれないと認めた。ただ、ケンブリッジ大のシュピーゲルハルター教授は、今回の治験の方法なら、94人段階での分析に基づいて考えると、最終分析でもデータはほぼ同じになる可能性が高いとみている。「今回の事例で示されたワクチンの効果は極めて大きい。このあとで数字が多少落ちたり、そのうちに効果がやや低減したとしても、それが大きな程度になるとは考えにくい」とした。

<実社会での有効性は>

中間結果は有望だが、大量生産への移行が新たなハードルだ。特にファイザーとビオンテックのワクチンはメッセンジャーRNA(mRNA)技術で製造されているため、マイナス70度以下で保管・輸送する必要がある。

このワクチンは1コースで2回の投与が必要で、それも理想的には21日間、間隔を空けることが求められる。この間隔が守られないとワクチンの有効性に影響する可能性がある。

おたふくかぜワクチンの場合、2度目の投与をしないと、90%近いはずの有効性が78%に落ちる。

スイス芸術科学アカデミー会長で疫学者のマルセル・タナー氏によると、免疫システムが弱まっている高齢者や、免疫不全の人に対しては、ワクチンの有効性が変わってくるとみられる。

タナー氏によれば、最適条件での試験で見る有効性(Efficacy)を巡っては「効くかどうか」が大事だが、実社会など、より現実的な条件での有効性(Effectiveness)は「応用できるか」が問題になる。

ただ同氏はファイザーとビオンテックの発表について、「後期治験のこの段階で、最適条件での有効性データが90%なら、これが極めて素晴らしいのは疑いようがない」とも述べた。

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