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焦点:アストラゼネカ製ワクチンの血栓リスク、何が起きたか

[フランクフルト/パリ/アムステルダム 18日 ロイター] - 欧州諸国の医薬品規制当局は、アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた人に出血、血栓、血小板数低下が見られるとする少数の報告について検証を進めている。

 3月18日、欧州諸国の医薬品規制当局は、アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンの接種を受けた人に出血、血栓、血小板数低下が見られるとする少数の報告について検証を進めている。写真は同社製ワクチン、ベルギーで撮影(2021年 ロイター/Yves Herman)

欧州連合(EU)の医薬品規制当局である欧州医薬品庁(EMA)は18日、このワクチンについて、報告事例に関する調査を行った結果、引き続き利点がリスクを上回るという「明確な」結論に至ったと表明した。EMAのエグゼクティブディレクター、エマー・クック氏は同時に、ワクチン接種と血栓の因果関係を完全に排除することはできなかったとし、調査を継続すると明らかにした。

これを受けて、ドイツ、フランス、イタリアなどが同ワクチンの接種再開を決定した。

17日時点で分かっていることをまとめた。

<何が起きたのか>

約3カ月前に新型コロナのワクチン接種が開始されて以来、EU及び欧州経済地域では、すべてのメーカーを合計すると4500万回以上の接種が行われてきた。

EMAが調査しているのは、EU域内でアストラゼネカ製ワクチンの接種を受けた500万人のうち、一般的でない血液疾患が生じた30症例の報告だ。

EMAが主要な懸念として注目しているのは脳内に血栓が生じる症例。脳静脈血栓症(CVT)と呼ばれる、治療の難しい珍しい症状だ。

ドイツでは16日時点で、20―50歳の7人がワクチンを接種してから最長16日以内にCVTと診断されている。国立のワクチン研究機関であるポール・エーリッヒ研究所(PEI)が明らかにした。PEIによれば、人口全体における通常のCVTの発症率は160万人に1人だという。

<他国やアストラゼネカの見解は>

英国ではアストラゼネカ製ワクチンを1100万回以上接種しており、血栓の発生率は通常より大きくないと報告している。英国の医薬品規制当局は国民に対し、アストラゼネカ製を含め、ワクチン接種を続けよう呼びかけている。

カナダは、アストラゼネカ製も含め、国内で接種されているすべての新型コロナワクチンについて、医学専門家が安全性を確信していると述べている。

アストラゼネカは15日、英国及び欧州連合で同社製ワクチンの接種を受けた1700万人以上の安全性データを検証したが、血栓リスクが増大するとの証拠は見られなかったと発表した。

<EMAは何を調べているのか>

EMAの調査担当者は17日の時点で、ワクチン接種を受けたグループにおいて症例の頻度が通常の発生頻度より上がっているかどうかをチェックしている。

通常の発生頻度は、公衆衛生統計や保険記録から得られる。これに、それぞれの症例の医学分析や科学文献から得られる知見を組み合わせることになる。

EMAで安全性モニタリング業務を率いるピーター・アーレット氏は、CVTは稀な症状であり、EMAとしては乏しい統計データよりも症例ごとの分析に頼らざるを得ないだろうと説明を加えている。

調査に参加しているドイツのワクチン担当当局の広報担当者は、EMAは因果関係については判断を下さないだろうと述べている。

EMAでは因果関係の解明よりも、ワクチン接種によってCVTのリスクが増加する可能性を評価し、新型コロナの感染を防ぎ医療体制に余裕をもたらすという利益と比較検討することになるだろう。

たとえばファイザーやモデルナが開発したワクチンは、アナフィラキシー症状の増加リスクと関連付けられているが、治療可能な副反応のリスクよりも利益が上回るという理由で、引き続き接種が奨励されている。

EMAは、現時点ではいかなるリスクよりもワクチンによる利益の方が上回っていることを「確信している」と語っている。

<臨床試験ではどうだったのか>

アストラゼネカと欧州各国の規制当局は、人間を対象とした治験においては、血液凝固障害についての懸念は生じなかったと述べている。

PEIによれば、承認後の安全性モニタリングが鍵になるという。きわめて稀な副反応、つまり人口のごく一部に影響を及ぼす副反応を臨床試験の中で特定することは不可能に近いからだ。

<ワクチン忌避の前例は>

日本では、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンの接種が政府によって勧奨されてきたが、疼痛症候群の訴えがメディアで報道されたため、2013年以降は積極的勧奨が中止されている。この対応はWHOからの批判を受けている。

昨年「ランセット・パブリック・ヘルス」誌に発表された研究は、HPVワクチン接種が中止されたままの場合、今後数十年間でがんによる死亡数が数千件増加すると結論づけている。

ウクライナではワクチンに対する不信感が深く、麻疹(はしか)の流行を許す状況となっている。ワクチンに対する忌避は、汚職への怒りや当局に対する不信感に根ざしているが、2008年に麻疹・風疹混合ワクチンの接種を受けた17歳の少年がまもなく死亡したことを受けて、政府が一時的に接種を中止したことも一因となっている。

(翻訳:エァクレーレン)

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