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アングル:小頭症の赤ちゃん急増、ブラジル襲うジカ熱の脅威
2016年1月31日 / 03:38 / 2年後

アングル:小頭症の赤ちゃん急増、ブラジル襲うジカ熱の脅威

[レシフェ 27日 ロイター] - ブラジル北東部の小児科医アンジェラ・ロチャ氏が「小頭症」の子どもの頭部を計測している。小頭症は先天的な神経系の合併症で、現在アメリカ大陸で猛威を振るう「ジカ熱」ウイルスに関連して発症するとされている。

診療室の外では、頭部が異常に小さい乳児を抱いた母親が7人、検査を受けるために何時間も並んで待っている。蚊が媒介するジカ熱感染流行の震源地となったペルナンブーコ州では、わずか数カ月間で1000を超える小頭症の症例が報告された。

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「不意を突かれて驚いた」と州都レシフェのオズワルド・クルス大学で感染症を長く研究しているロチャ医師は語る。そこでは医師が小頭症と診断された300人もの乳児の治療に奮闘している。

驚いたで済ませるのは控えめすぎるだろう。

ブラジルはこれまで長年にわたり、デング熱、黄熱などの熱帯病流行の原因となったネッタイシマカと闘ってきた。だが、ジカ熱の流行は政府、公衆衛生機関、そして医師のいずれにとっても完全に不意打ちだった。

熱帯性気候、人口稠密な都市、劣悪な衛生状態、そしてずさんな建築は、蚊の発生源として、そしてジカ熱ウイルスの蔓延にとっても理想的な条件を備えている。ブラジル北東部から始まったジカ熱の流行は瞬く間に全土に広まり、さらに米州20カ国以上で猛威を振るっている。

「蚊やウイルスを止めるのに必要な条件や情報が欠けていた」と、隣接するバイーア州の疫学者で、公衆衛生のプロの集まりであるブラジル公衆衛生保健協会のマリア・ダ・グロリア・テイシェイラ理事はこう指摘する。

政府や国際保険機関らが警鐘を鳴らすなか、ブラジルでは、少なくとも感染拡大が沈静化するか、この先何年かかるか分からないがワクチンが開発されるまでは、妊婦が蚊に刺されないよう対策を取り始めている。

ブラジル保健省は今週、米国立衛生研究所とワクチン開発協力に関する合意を締結する見通しと発表した。南米では、女性にしばらく妊娠を控えるよう呼びかける国も出てきている。

<圧倒>

因果関係はまだ証明されていないものの、科学者は、妊娠中にジカ熱に感染したと思われる母親と小頭症の子どもとのあいだに臨床的な関連を見出している。

9月以降にブラジル全土で報告された約3700の小頭症の症例の3分の1以上はペルナンブーコ州に集中しており、現在、同州の病院はその数に圧倒されている。

ブラジル保健省によれば、新たに報告される症例の数は他の地域では増加しているものの、ペルナンブーコ州では減少している。

しかし今回の危機は、小頭症など神経学的な異常を持つ多数の子どもに対し、将来的に特別のケアを必要とする。財政赤字と景気後退によってブラジル政府が公共医療制度の予算を削るなか、すでに赤字に苦しむ病院はさらなる負担を強いられている。

ロチャ医師によれば、レシフェの同病院には毎日5人程度の新たな患者が訪れている。ピークだった11月下旬にはその数は18人にも上ったという。

同医師らは、症例の減少が最悪期の終わりを意味することを期待しているが、このウイルスと合併症について明らかになっていることが極端に少ないため、確信は持てずにいるという。

現時点でジカ熱の治療法はない。ジカ熱に感染すると、通常、軽い発熱と一時的な身体の痛みが生じるが、これらは、昨年ブラジルで160万人が感染し800人以上が死亡したデング熱の、軽微な症状と間違えやすい。

 1月27日、蚊が媒介する「ジカ熱」感染流行の震源地となったブラジルのペルナンブーコ州では、わずか数カ月間で1000を超える小頭症を抱える新生児の症例が報告された。写真は26日、州都レシフェの病院で、7日前に生まれた、先天的に頭部が小さい「小頭症」のMilenaちゃん(2016年 ロイター/Ueslei Marcelino)

蚊の発生防止を強化するため、ブラジルは兵士を含む何千人もの自治体や州、連邦政府の職員を動員。各都市の蚊の発生源を除去し、燻蒸消毒を行い、メスの蚊が卵を産みやすい淀んだ溜まり水の危険性を住民に周知している。

2月13日には、政府は22万人もの部隊を動員してパンフレットなどを配布、潜在的に危険があると思われる場所を特定する予定だ。

<長い闘い>

ブラジルで七番目に大きな都市であるレシフェでは、市側が長期戦への備えを固めている。

「今はまだ、問題の大きさがようやく垣間見えた段階だ。この問題は今後何年間も続く可能性がある」と、レシフェの保健福祉官ジェイルソン・コレイア氏は語る。

レシフェは11月、ブラジル連邦政府に対し、危機対応の資金として2900万レアル(約8.8億円)を要請したが、現時点までに支給されたのは130万レアルにとどまる。

 1月27日、蚊が媒介する「ジカ熱」感染流行の震源地となったブラジルのペルナンブーコ州では、わずか数カ月間で1000を超える小頭症を抱える新生児の症例が報告された。写真は25日、小頭症を患う娘のマリア・ジョバンナちゃんを抱くグリーゼ・ケリー・ダ・シルバさん。ブラジルのレシフェで撮影(2016年 ロイター/Ueslei Marcelino)

ロチャ医師は、障害を持つ子どもが立て続けに生まれることの精神的・経済的コストは計り知れないと訴えている。

こうした乳児の多くは、その後けいれんなどの発作を起こす可能性が高く、生存の確率を高めるためには直ちに脳の刺激療法を受ける必要がある。最近でも、同州では少なくとも12人の小頭症の乳児が死亡している。

さらに、視覚障害や聴覚障害、そして四肢の著しい変形など、他の合併症の例も現われはじめている。

ペルナンブーコ州にわずか5人しかいない神経科医の1人、バネッサ・バン・デル・リンデン氏は、嚥下できない子どもも多く、最も深刻な症例では重篤な呼吸障害が見られると明かす。

同氏は、昨年9月に小頭症の症例が不自然に増えていることに初めて気付き、保健当局に注意を促した医師の一人である。異常は11月になると急増し、彼女が勤務するバラオ・デ・ルセナの老朽化した小児病院では、一晩に3人もの小頭症の子どもが生まれた。

「パニックだった」と、ヴァン・デル・リンデン医師は振り返る。

当時と比べれば、事態は落ち着いてきている。

先週、ペルナンブーコ州全域で新たに報告された小頭症患者は、ピークだった11月下旬の196例に対して、29例にとどまった。最も危機的だった2カ月間、ドラッグストアの棚からは昆虫駆除薬が消えたが、これらの商品も店頭に戻りつつある。

もちろん、多くの人々にとって対応が遅きに失したことは否めない。

料金所で働く27歳のグリーゼ・ケリー・ダ・シルバさんは、昨年4月に発疹、微熱、そして腰痛が3日間ほど続いたという。

そして、10月に生まれた娘のマリア・ジョバンナちゃんは小頭症と診断された。シルバさんは今でも、いつか娘が言葉を話せるようになるという希望を失ってはいないが、いまだに何の治療法も提示できない公的医療機関に対しては、苛立ちを隠さない。

「治療開始が早ければ早いほど、娘のためになる。子どもの数が多いので、もっと大勢の医師が必要だ。母親たちは診療予約を取るにも苦労している」と彼女は語る。

(Anthony Boadle記者)(翻訳:エァクレーレン)

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