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アングル:増える「最高酷暑責任者」、自治体レベルで熱波対応

[ボゴタ 9日 トムソン・ロイター財団] - 気候変動対策を話し合う国連の会議「COP27」が開かれているエジプトには各界のリーダーが集結し、地球温暖化問題を話し合っている。その一方、各国の自治体レベルでは「最高酷暑責任者(CHO)」という役職が新設され、都市特有の熱波問題に取り組む動きが地道に広がっている。

 11月9日、気候変動対策を話し合う国連の会議「COP27」が開かれているエジプトには各界のリーダーが集結し、地球温暖化問題を話し合っている。写真は7月、気温45度を示す仏ナントの薬局の温度表示(2022年 ロイター/Stephane Mahe)

CHOは米シンクタンク、大西洋評議会のアドリアン・アーシト・ロックフェラー財団レジリエンス・センターの働き掛けによって生まれた。2021年4月に米フロリダ州マイアミデード郡で指名されたのが始まりだ。

これまでに就任したのは8人と一握りで、たまたまとはいえ女性が独占。女性や高齢者、低所得層コミュニティーなどを中心に、もっとも弱い立場に置かれた人々を守ることに重点を置いている。

「1つの都市の動きにとどまらない」と話すユージェニア・カルグボさんは昨年、レジリエンス・センターの事業の一貫としてシエラレオネの首都フリータウンのCHOに就任した。アフリカ地域で初のCHOだ。

「影響を受けているのは女性だけはないが、私たちは最も弱い立場の人たちの支援に力を入れていて、そうした立場に置かれているのは女性であることが多い」

世界保健機関(WHO)が今週発表したデータによると、今年に入ってから欧州だけで少なくとも1万5000人が酷暑により死亡した。レジリエンス・センターによると熱波は頻度、期間、強度を増しており、影響を受ける人の数は2050年までに世界中で35億人余りに達し、その半数が都市中心部に集中すると予想されている。

医療専門家によると、数十億人が熱中症や腎不全に見舞われたり、心臓や呼吸器系の疾患を悪化させたりするなど健康上のリスクにさらされるという。

<無言の死>

気候変動は都市の「ヒートアイランド現象」を増幅させている。都市部に多く存在するコンクリートや金属などの素材は熱を吸収後、放射するため、近隣の農村部より気温が数度も高くなることが多いと科学者は指摘する。

気候変動問題に取り組む主要都市のネットワーク「C40シティーズ」の見積もりでは、現在350余りの都市で夏の最高気温が摂氏35度を超えており、2050年までに約970都市に増えると予想されている。

カルグボさんは、人口100万人超のフリータウンでは、住民が猛暑のために「無言のままひっそりと死んでいる」と訴える。

酷暑で最も大きな影響を受けているのが露天商で、そのほとんどが女性だ。露天商は主な商品である野菜や果物が高温で傷んでしまうため、経済的なリスクにもさらされている。

カルグボさんは市内の大規模な3つの露店市場に熱を反射するパネルを設置し、日陰を作るプロジェクトに取り組んでいる。約2000人の女性が直接恩恵を受けるという。

また1月から始まる乾燥・高温期を前に酷暑マップ作りを進め、「目に見えない脅威」が都市の住民に与える影響を把握するためのデータ収集を行っている。

<最貧困層を守れ>

スレリャ・セグーさんは、メキシコ北部の工業都市モンテレイの住民500万人に、猛暑の危険性に対する理解を広める仕事を担っている。4月にモンテレイ市のCHOに就任したセグーさんによると、市は6月と7月に記録的な水不足に見舞われ、住民の間で危機感が高まった。「住民は『今年も暑い夏が来ただけだ』と話すが、現実には毎年どんどん気温が上昇している」と、セグーさんは言う。

セグーさんは、市の約70%がヒートアイランド現象に見舞われていると説明。特に低所得者層の居住地域は緑の公共空間や公園が不足し、エアコンもないことが多く、酷暑による影響が最も大きい。

建築家で都市計画もするセグーさんは、公共スペースを涼しくするための都市公園や「緑の回廊」の建設計画に取り組み、また水不足を防ぐために、地下水のかん養など水資源の管理の改善も進めている。

ただ、こうした取り組みを進めるには水の使用量や車の運転を減らし、温暖化の一因である大気汚染を減らすなど、生活様式を変えることの重要性を住民に納得してもらう必要がある。「文化を変えない限り、街を変えることはできない。時間がかかると思う」と語る。

<熱波のランク付け>

昨年、ギリシャのアテネのCHOに就任したエレニ・ミリビリさんは、今年相次いだ熱波とアテネ近郊で起きた山火事が、猛暑の問題に注目を集めるきっかけになったと振り返る。

熱波が起きると住民は屋内に閉じこもり、地元企業は収入減や生産性の低下によって経済的な負担を強いられる。

熱波は健康に害をもたらす最大の気候問題の1つだが、ハリケーンなど分かりやすい災害に比べると注目度が低い。

レジリエンス・センターは米海洋大気局(NOAA)などの専門家を集め、熱波の名称やランク付けの標準的な方法を構築するためのグループを最近立ち上げた。

ミリビリさんは昨年、科学者らと協力してアテネで同様の試験的なプロジェクトを始め、熱波を「カテゴリー1」から「カテゴリー3」までランク付けする仕組みを整えたところだ。

「これで状況が大きく変わると信じている。人々がさまざまな種類の暑さを理解する方法の1つになる」と、ミリビリさんは言う。

(Anastasia Moloney記者)

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