[ニューヨーク 16日 ロイター] - S&P総合500種は7月半ば以来、17%持ち直しているが、市場関係者やデータによると、弱気ポジションで大きく損失を抱え込んだはずの株式ヘッジファンドがなおも相場上昇から距離を置いている。米株の行方が不透明なためだ。
S&P500種は今年1─6月には、米連邦準備理事会(FRB)によるインフレ抑制の積極利上げが米景気後退につながりかねないとの懸念から20%以上、下落した。ただ、その後は値が戻ってきている。インフレ高進が落ち着き始めているかもしれない兆候が出てきたことが背景だ。
しかし、BNPパリバが先週の当局データから計算したところでは、ヘッジファンド勢によるS&P500種先物の売り越しポジションはなお記録的な1070億ドル。プライムブローカーらはそうしたヘッジファンドの懐疑姿勢について、相場上昇が一時的にとどまる可能性を示唆するとみる。「どのタイプの顧客にとっても、今回の相場上昇は最も頂けない上昇の一つだ」との声さえ聞かれる。
ヘッジファンド勢が相場上昇の際に、むしろロングポジションを売っていたと指摘するプライムブローカーは、8月1週目は過去5年で最も「リスク外し」の動きが大きかった週だったと語った。
BNPパリバの米株・デリバティブ担当ストラテジスト、マックス・グリナコフ氏によると、8月に入ってからも10日に米消費者物価指数(CPI)が米インフレのピーク入りの可能性を示唆し株が上がった場面を中心に、ショートポジションの買い戻しは続いてはいるもよう。
ただ、ヘッジファンドに投資する資産運用会社、コモンファンドの市場ストラテジスト、クリス・クェート氏は「相場上昇時にヘッジファンドによるショートの買い戻しは多く見られる」とした上で、相場上昇がこうした買い戻しに頼るような状況は「上昇局面の持続性という面であまり良い兆候ではない」と指摘した。
金融分析会社S3パートナーズの16日のリポートによると、ショートポジションのうち買い戻された分は計455億ドル相当とみられ、ショートポジション勢は6月16日以降で計1740億ドルの損失を抱え込んだとみられる。一方で今年の未実現の利益もなお推計1620億ドルに上るという。
S3によると、その後、直近までにショートポジションは再び13.7%増えて計1260億ドルに達している。主にITやヘルスケア、裁量的な消費財などのセクターが対象という。
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