April 12, 2019 / 1:36 AM / 3 months ago

コラム:元ピザ経営者ケイン氏、なぜFRB理事に不適任か

[ロンドン 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領が連邦準備理事会(FRB)理事に指名する意向を示したピザチェーン元経営者のハーマン・ケイン氏は、ある重要な点においてはFRB理事に就く資質を有している。

4月10日、トランプ米大統領が連邦準備理事会(FRB)理事に指名する意向を示したピザチェーン元経営者のハーマン・ケイン氏(写真)は、ある重要な点においてはFRB理事に就く資質を有している。ワシントンで2012年1月撮影(2019年 ロイター/Jonathan Ernst)

かつて外食業界のロビイストとして活動し、今は右派の主張を掲げるトランプ氏の支持者のケイン氏は、金融政策の本質が政治的だと分かっている。

ただ、総じて言えばケイン氏の指名はまずい選択だ。現在の中央銀行の仕事はあまりにも複雑で、経験の浅い空想家に託すことはできない。

西側先進国では一般的に、中央銀行は政治的に中立であるべきだと考えられている。金融エコノミストはしばしば自身の職能について、独立していて強力に論理的で、経験に裏打ちされており、極めて率直だと表する。トランプ氏によるケイン氏の選択はこうした主張を真っ向から否定するものだ。ただ、このような堅苦しい信条が正当とは言えない。

金融政策は些事にいたるまで政治的に中立ではありえない。中銀の主要なツールである政策金利は本質的に、経済に対して異なる主張の2つの政治グループ間の軋轢を調整した結果であり、金融規制もいずれかの政治グループの主張をより多く汲むことが避けられない。

ケイン氏は外食産業の業界団体のロビイストとして、従業員の最低賃金を巡る厄介な問題をうまく収めた経歴を持つ。こうした調整の手腕が必要なのはFRBなど中銀も同じだ。

実際のところ、FRBは欧州中央銀行(ECB)が2012年に直面していたほど政治的に深刻な判断を下す必要に迫られていないだろう。ただ、金融政策が政治的思惑から自由であることはけっしてないし、そのような国は存在しない。

トランプ氏はインドやトルコなどの指導者と同様に、金融政策について明確な主張を持ち、中銀に対してできるだけ速く潤沢な景気刺激策を進めるよう求めている。ケイン氏がFRB理事に就任すれば、こうした政策を一段と進めるよう努めるだろう。

中銀バンカーの多くは、こうしたあからさまに政治的主張に不安を抱くだろう。金融理論によれば、低金利と無制限の貨幣創出は最終的にインフレを生むからだ。しかしこのような理論は極限状況を除けば当てにならない。

問題は、標準的金融理論は洗練度が高い一方、そのモデルが多くの怪しい仮説に依存している点だ。問題の核心が「均衡利子率」で、この理論は実際に観察されたことも検証されたこともなく、さらに理不尽な強欲、金融や不動産市場での投機などがほとんと考慮に入っていない。

単純化が行き過ぎても運用の際には問題ないかもしれない。しかし現在の金融政策モデルはまだ生まれたてで、実際にどう作用するかが分かっていない。古い出来事は自信を鼓舞するようなものではなく、1980年代以前の標準的政策モデルは、インフレ率が望ましい、期待する水準を大幅に超えたときに破棄された。その後使われていた2008年以前のモデルは、世界金融危機を予測することができなかった。

そのため中銀は今、古い政策モデルのアップグレードを進めており、超低金利もしくはマイナス金利や量的金融緩和、規制強化などの新たな仕組みを取り入れている。サメが出没する濁った海のようなもので、FRBなど各国の中銀はこの暗闇の中を泳いでいる。

とても素人の手に負えるものではない。金融に対する考え方が金本位制という単純かつ非現実的な政策への支持にとどまっているケイン氏のような人物が取り組むのは無理がある。

●背景となるニュース

・トランプ米大統領は4日、連邦準備理事会(FRB)理事にピザチェーン元幹部で2012年大統領選で共和党候補者指名争いに出馬したハーマン・ケイン氏を指名する意向を明らかにした。ケイン氏の理事就任には上院の承認が必要。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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