[フランクフルト 21日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は21日、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.00%に据え置くことを決めた。
上限金利の限界貸出金利と下限金利の中銀預金金利も、それぞれ0.25%、マイナス0.40%で据え置いた。
ドラギECB総裁の会見での発言要旨は以下の通り。
<イタリアの銀行不良債権による影響>
(不良債権問題が)長引けば長引くほど、銀行システム全体、もしくは少なくとも多くの不良債権を抱える銀行の機能は低下する。こうした銀行がわれわれの金融政策の影響を実態経済に伝える能力も低下する。さらに、不良債権の水準が高まれば銀行の市場に対するぜい弱性も増す。
<ドイツの銀行はリスクに直面しているか>
(国際通貨基金(IMF)はフランクフルトに本社を置く大手金融機関が世界的な金融安定に対する主要リスクの1つとなっていると名指ししているが、こうした懸念を共有しているかとの質問に対し)特定の金融機関に関してコメントするつもりはない。
<トルコ>
こうした地政学上の事件が(ユーロ圏)経済にどのような影響を及ぼすのか、見極めるのは非常に難しい。信頼感が損なわれる可能性は非常に高いが、直ちにどのような影響が表れるか予見することは非常に困難だ。
<ブレグジットのユーロ圏成長への影響>
英国のEU離脱(ブレグジット)に伴い、3年間で0.2-0.5%の影響が(ユーロ圏成長に)出るとの見方が広がったが、欧州委も0.25-0.5%と似たような試算を行っている。
この問題にはかなりの不透明感が存在するため、試算結果の取り扱いには一定の注意が必要と考える。ブレグジットの交渉期間やその後の結果いかんで、実際の影響は変わってくるからだ。
はっきりいえることは、金融市場や銀行セクターがこの問題に柔軟な形で反応しているということで、いずれも混乱は確認されていない。
<ECBの買い入れ対象となる債券枯渇か>
2017年3月まで、もしくはそれ以降も、月額800億ユーロの購入を実施していくわれわれの能力については、これまでに十分示してきている。
<銀行株の下落>
銀行株の下落は、政策担当者にとりある程度、重要性を持っている。これは、これまでに見られたように銀行株が下落した場合、こうした状態が続くとの見方が台頭し、資本コストが上昇、その結果、融資による純リターンが減少し、銀行が融資を行なうにあたりより保守的になる可能性があるためだ。
こうした理由で、ECBの金融政策の波及という面から銀行の株価水準について気に留めている。
<不良債権>
金融政策は半分、経済活動を支援し、物価安定の維持に焦点を当てている。だが金融政策の恩恵をすべて享受するには他の政策措置も必要で、そのうちの1つが不良債権、より広義ではユーロ圏内の不良債権へのエクスポージャーだ。
リスクとは考えないが、対処する必要がある。
われわれは公的救済の規定などを整備しており、これまでにも何度か申し上げたが、こうした規定は異例の状況に対応するだけの柔軟性を持ち合わせている。
規定を発動する権限と責任は欧州委員会にある。
<ブレグジットとインフレ率>
インフレ見通しに関して、ブレグジットがインフレ期待に影響を与えている兆候はないようだ。一方で、市場ベースのインフレ期待指標は(インフレ期待の)大幅な低下、その後の回復を示している。
<ブレグジットー行動するのは時期尚早>
決定するのに十分な情報がないとの結論に至り、新たなスタッフ見通しも含め、より多くの情報が入手できる向こう数カ月で基調のマクロ経済動向を評価するのに一段と望ましい状況になると判断した。
現段階では、特定の手段に関する協議はなかった。
<英国のEU離脱決定の影響>
ユーロ圏の金融市場は、英国の欧州連合(EU)離脱決定を受けた不確実性やボラティリティーの高まりを底堅く乗り切っていると判断している。中銀が必要なら流動性を供給する方針を表明していたことに加え、われわれの緩和的な金融政策措置や強固な規制、監督の枠組みも市場の緊張抑制に寄与した。金融状況は引き続きかなり支援されている。
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