March 29, 2018 / 6:13 AM / a month ago

焦点:きしむ「ドルペッグ制」、香港ドルが33年ぶり安値

[東京 29日 ロイター] - 香港の「米ドルペッグ制」がきしみ始めている。経済は中国依存、金融は米国連動という矛盾が広がるなか、香港の市場金利は米利上げと香港の政策金利引き上げに付いて行けず、香港ドルは33年ぶり安値圏に下落した。香港金融当局はペッグ制を維持する意向を示しているが、中国が構築する経済新秩序の中で、制度の意義を問われることになりそうだ。

 3月29日、香港の「米ドルペッグ制」がきしみ始めている。経済は中国依存、金融は米国連動という矛盾が広がるなか、香港の市場金利は米利上げと香港の政策金利引き上げに付いて行けず、香港ドルは33年ぶり安値圏に下落した。写真は昨年6月撮影(2018年 ロイター/Thomas White)

<「米ドル離れ」する香港ドル>

香港金融管理局(HKMA、中央銀行)は22日、銀行向け貸出基準金利を0.25%ポイント引き上げ、2.0%とした。米連邦準備理事会(FRB)の利上げを受けた措置で、香港ドルHKD=D3を1米ドル=7.75―7.85香港ドルの範囲に抑える「米ドルペッグ制」の下で、金融政策を米国と連動させ、自国通貨の為替変動リスクを抑える目的だ。

しかし、香港ドルの対米ドルレートは23日に7.8495香港ドルと33年ぶり安値まで下落し、現在も7.8480香港ドルと軟調。HKMAは7.85香港ドルを守るために介入する姿勢を示している。

追随利上げにも関わらず香港ドルが下げ止まらないのは、香港の民間金利が利上げに追随しないためだ。中国から大量の資金が流入し、米国よりも中国本土との経済の一体性が強い香港において、利上げの効力が実体経済に浸透しないことが背景だ。

HSBCやスタンダード・チャータードなどの大手金融機関は、追随利上げ後も企業向け最優遇金利(プライムレート)を5.25%に据え置いた。短期金融市場では、ドルLIBOR(ロンドン銀行間貸付金利)が昨年12月から着々と上昇しているのに対し、HIBOR(香港銀行間貸付金利)は昨年12月の4.9%台から、現在は4.59%へと低下している。

三井住友銀行のチーフストラテジスト、宇野大介氏は「香港の民間金融機関には潤沢な手元金融資産があり、貸出金利を上げる必要はない。同時に住宅ローンの貸出競争が激しいため、金利を米国に連動して上げる必要性が薄い。結果的に双方の金利差が拡大し、米ドル買い/香港ドル売りを増幅させている」と指摘。ドルペッグ制の限界を表しているとみる。

<中国経済との強まる結びつき>

自国通貨をドルなどに連動させるメリットは、為替変動による経済への影響を小さくできることだ。一方で、金融政策は自由度を失う。

HKMAのノーマン・チャン長官は「米国金利に連動して、香港ドルの金利が正常化することを望む」と述べる。

しかし、香港は、オフショア人民元や中国H株、債券などに向かう中国の投資資金の受け皿であり、インターバンク市場の流動性は1800億香港ドルと、2015年のピーク時よりは減少したものの、なお潤沢でHIBORを押し上げるには至っていない。

1997年の返還以降、香港と中国と結びつきは一層強固となっており、香港はマネーを中国に再投資する「リサイクルセンター」でもある。

2017年上半期の香港からの対中直接投資は、実行額で前年同期比8.6%増の462億ドルと、海外からの対中投資全体の7割を占め、国・地域別で引き続き1位になっている。

現在は、人民元が世界の金融・経済取引に使われる割合は相対的に小さい。しかし、中国は国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)構成通貨への組み入れや、「一帯一路」構想など、着々と「人民元が使われる世界」への布石を打っている。

26日には、価格形成を巡る影響力の拡大と米欧の国際指標への対抗を目指して、人民元建て原油先物の取引を上海国際エネルギー取引所で開始した。中国は世界最大の原油購入国だ。

「習国家主席の長期政権が敷かれた中国では、通貨システムを含めた国際ルールを自ら創りあげようとする機運が高まるだろう」と三井住友銀の宇野氏は言う。

<「ライバル」は深セン>

ただ、中国のお墨付きと経済合理性から香港がドル離れしたとしても、「苦労」は続くかもしれない。

中国は深センを経済発展の戦略的拠点として位置付けており、ハイテク分野の技術開発とそれを支える金融が好循環する産業構造をめざす深セン市には、中国本土や海外からのマネーが押し寄せている。

17年の深セン市の実質国内総生産(GDP)は2兆2000億元余りで、人民元換算した香港のGDP2兆1800億元を上回った。

「ベンチャー企業を中心に、欧米・日本など各国企業の深セン詣でが活発化している。中国本土からも豊富な資金も集まり、ベンチャーキャピタルにファイナンスする金融ビジネスも拡大している」と伊藤忠経済研究所・主席研究員の武田淳氏は話す。一方で、香港は不動産ビジネス以外は覇気がないという。

今後の香港ドルの動向は、米国が構築した金融秩序と中国が作ろうとする新秩序の攻防を見る上でも、重要なベンチマークとなりそうだ。

*見出しを修正しました。

森佳子 編集:伊賀大記

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