October 1, 2019 / 5:31 AM / 18 days ago

アングル:香港デモに貧困層が共鳴、明るい未来実現へ希望託す

[香港 30日 ロイター] - 香港の繁華街、旺角(モンコック)のある日、間もなく真夜中を迎える時間にやせこけた70代の男性が、警官にヤジを飛ばす群衆を押しとどめようと必死になり、その後ろで若い女性が「気を付けて」と叫ぶ──。

 9月30日、香港の繁華街、旺角(モンコック)のある日、間もなく真夜中を迎える時間にやせこけた70代の男性が、警官にヤジを飛ばす群衆を押しとどめようと必死になり、その後ろで若い女性が「気を付けて」と叫ぶ──。写真は、香港のレノン・ウォールの前にたたずむLou Tit-Manさん(73)。23日撮影(2019年 ロイター/Tyrone Siu)

もう何十年も路上で生活する年老いた活動家と、おしゃれな服を着た24歳の女性が一緒に行動する光景は、普通ならなかなかお目にかかれない。両者を結びつけたのは、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案への反対をきっかけに、6月に始まった抗議運動だ。

この運動はやがて、香港の行く末を巡る闘争へと姿を変え、香港社会の幅広い層を呼び込んでいる。参加者の大半は学生だが、教員やパイロット、看護師、調理師から、最貧困地区の労働者の顔も見える。路上生活者もいれば、摩天楼の陰に隠れて立つ、大勢がひしめき合って住むアパートの住人もいる。

中にはその日暮らしの人々も含まれているが、彼らも自分たちの個人的な不平を脇に置いて、全ての香港市民のより良い未来を期待し、運動を後押ししている。

73歳のLou Tit-Manさんは、一連のデモで掲げられている普通選挙実施や逮捕者の釈放などの5項目の要求に触れて「われわれは貧しい。それでも5大要求を支持する」と話す。

若者らが「テレグラム」など暗号化されたアプリを駆使して整然と行動するのに対して、Tit-Manさんは短波ラジオでデモの情報を追いかけている。このラジオは窃盗の被害から何とか難を免れた数少ない彼の財産の1つだ。

Tit-Manさんは2014年の「雨傘運動」にも参加。4カ月間投獄された経験がある筋金入りの活動家で、「鉄の男」の異名も持つ。シャツのポケットには、彼の活動を記事化した地元紙のコピーがしわくちゃになりながらも大事にしまわれていた。そこには、政府から支給された補助金を年若いデモ隊のメンバーの食料や水に充てたエピソードと「次の世代には、もっと豊かな暮らしをしてほしい。私はこの社会運動に全身全霊をささげる」という彼の言葉が記されていた。

<深刻な格差>

抗議運動は、中国への返還時に合意された香港に関する「一国二制度」による高度な自治が、十分実行されていないという政治的不満に起因する部分が非常に大きい。その一方で、経済的な苦しみに根差している部分もあると専門家は指摘する。

地元の大学が行った調査では、抗議者の84%は不公平な社会階層のあり方に怒りを表明し、92%は貧富の差が不当な水準に達しているとの見方を示した。

落書きとして指摘されているのは、あまりにも高い庶民の住居費への嘆きだ。実際、香港の住居費は世界最高で、この問題は林鄭月娥行政長官が26日に開いた対話集会でも取り上げられた。

香港は今や、ニューヨークを除けば世界で最も多くの富豪が住宅を構える都市となった半面、市民の5人に1人が貧困状態にある。政府統計によると、所得格差は過去40年余りで最も大きくなっている。

最貧困地域の深水埗の公園には、マットレスやベンチで眠る男性で混み合っている。多くは高齢で、健康状態も悪く、発疹に悩まされ、手足はがりがりだ。すぐ近くでは、ふわふわの毛に包まれた犬を乗せたベビーカーを押す女性たちが行き交っている。

中国人ギャングから暴行を受けるようなひどい環境でずっと寝泊りしてきたTit-Manさんは「富裕層は貧民から全てを奪っている。長い時間をかけて香港には公平な社会になってほしい」と訴えた。

あるソーシャルワーカーによると、香港で家賃がうなぎ上りとなっているため、ホームレスの増加と、政府が対処しきれない住宅危機に拍車が掛かっている。

深刻な住宅不足のせいで、公共住宅の平均的な入居待ち期間は5年以上にもなる。ほとんどの若者は両親との同居を余儀なくされ、20万人余りは毎月500ドル強も払って非常に狭い集合住宅に押し込められる状況だ。

当局は2027年までに28万戸の集合住宅建設を約束したが、建設数は目標に達しないだろうと認めている。

<大黒柱>

30代で中国本土から香港にやって来た60歳の女性は「政府が本当にわれわれを助けたいと思っているなら、2つの仕事をしながら狭小住宅地域になど住んでいない」と憤まんをぶちまけた。この女性は深水埗の暗い一室に5000香港ドル(637米ドル)もの家賃を払い、病気で働けない夫を抱えて大学の清掃員をしている。屋根は雨漏りする状態だ。

 9月30日、香港の繁華街、旺角(モンコック)のある日、間もなく真夜中を迎える時間にやせこけた70代の男性が、警官にヤジを飛ばす群衆を押しとどめようと必死になり、その後ろで若い女性が「気を付けて」と叫ぶ──。写真は、香港の警察署の前で抗議の言葉を書くLou Tit-Manさん(73)。23日撮影(2019年 ロイター/Tyrone Siu)

彼女は14年の雨傘運動に加わってから、学生との深い絆が生まれた。「何人かの学生は私をとても大切に扱ってくれた。私と雑談し、それはとても穏やかな時間だった。こうした若者が警察に殴打された。彼らは香港のより良い未来のために喜んで自分たちを犠牲にしていた」と明かした。

両親からは外国勢力に洗脳されていると言われた彼女だが、広東省の実家を訪れて中国国営テレビが放映するデモのニュースに見入る両親の姿を見ると、彼らこそが情報操作されていると思う。

「学生を支持しない人には、異を唱え続けていく。学生こそがわれわれの社会の大黒柱で、手助けをしなければならない」と言い切った。

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