September 3, 2019 / 4:56 AM / in 15 days

特別リポート:「可能なら辞任する」、香港トップが明かした胸の内

[香港 2日 ロイター] - 香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が先週、実業家グループとの非公開会合で、香港の政治危機を巡り「言い訳のできない大混乱」を引き起こしたとし、選択肢があるなら辞任すると話していたことが分かった。録音された発言をロイターが確認した。

この中で行政長官は、香港の混乱は米国との緊張が高まる中国にとって国家安全保障・主権の問題となっているため、自身によって解決する余地は「非常に限られている」と説明。英語で「もしも自身に選択肢があるなら」と断った上で「まずは辞任し、深く謝罪することだ」と述べた。

中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に端を発する6月以降の大規模デモは、幾度となく暴力的な抗議活動も伴い、収束の兆しは見えていない。

林鄭行政長官は、中国政府は今のところターニングポイントに至っていないと示唆。中国政府は10月1日に予定されている国慶節イベントの前に香港危機を終わらせる期限を設けていないとしたほか、人民解放軍を香港の街頭に展開させる計画は「絶対にない」と述べた。

ただ、問題が「国家レベル」になっていることから自身の選択肢はほとんどないと指摘。「残念ながら憲法で2つの主人、つまり中央人民政府と香港市民に仕えなくてはならない行政長官として、政治的な余地は非常に、非常に、非常に限られている」と苦悩をのぞかせた。

この非公開会合に参加した3人の関係者がこれらの発言内容を確認。行政長官の発言は約30分にわたったという。ロイターが入手した録音は24分間。会合は「あらゆる職業の人々」(林鄭行政長官)と行っている数多くの非公開会合の1つ。

林鄭行政長官の報道官は、行政長官が先週、実業家が参加する2つのイベントに出席したことを明らかにした上で、双方ともに事実上私的な会合だったと説明。イベントにおける行政長官の発言内容にコメントする立場にないとした。

中国国務院(内閣に相当)の香港・マカオ事務弁公室からはコメントを得られなかった。

国務院新聞弁公室からは今のところコメントを得られていない。

<体面を気にする中国政府>

林鄭長官は録音された発言の口調が公の場で見せる強面のイメージと異なり、3カ月に及ぶ抗議デモの影響が自身のプライベートな生活にも及んでいると明かした際には声を詰まらせる場面もあった。

林鄭氏は「香港にこのような大きな参事を引き起こしたことは行政長官として許されない」と吐露した。

また同氏は、中国政府の指導者は抗議デモ鎮圧のため香港に軍隊を送れば体面を損なうことを理解していると指摘。

「中国政府は軍介入の代償は大きすぎると分かっており、国際的な体面に注意を払っている。長い時間を掛けて国際社会で、単なる経済大国ではなく責任ある経済大国としての体面を築き、一定の発言力を得てきた。だから、こうしたプラスの変化を全て投げ捨てることが政策に含まれていないのは明白だ」と述べた。

ただ同氏は、抗議デモにより観光客の減少や新規株式公開(IPO)を含めた資本流入の減少などの経済的な痛みがあったとしても、中国政府はじっくりと構えて乗り切るつもりだとの見解も示した。

<大きな悲しみ>

林鄭氏は、香港における法の支配および安定回復の重要性や、政府によるメッセージ発信に向けた取り組みの必要性にも言及。録音では最後に拍手が起きている。

同氏は今は「自己憐憫」に浸っているときではないとしつつ、抗議デモと対峙している警察官への圧力を弱めたり、「香港政府、特に私自身に強い怒りを向けている多数の平和的な反政府活動家に納得してもらえるような」政治的解決策を提示することはできないことに、深い苛立ちを見せた。

「このような緊張状態を緩和する政治的立場を提示すること」は自分は不可能で、このことが「大きな悲しみ」の原因になっているという。

同氏は今回の騒乱の影響が自身の日常生活にも及んでいると嘆き、「最近は外出がとても困難だ。通りに出ることも、ショッピングモールに行くことも、ヘアサロンに行くこともできない。私がどこにいるかがソーシャルメディアで広まるので、何もできない」と語り、公の場に出る場合には「黒いTシャツと黒い覆面の若者の群集が待ち受けていることが予想される」と明かした。

行政長官就任直後は支持率が比較的高かった林鄭氏だが、パブリック・オピニオン・リサーチ・インスティテュートを運営するロバート・チャン氏によると、現在の支持率は1997年の香港返還以降の4人の行政長官で最も低い。

<香港は死なず>

林鄭氏は2017年7月に行政長官に就任。中国政府寄りの政策を強引に進め、中国の習近平国家主席から厚い信任を得ている。国営通信の新華社によると、昨年12月に長官が北京を訪れた際には習国家主席が「中央政府は林鄭長官の仕事ぶりと香港政府を全面的に支持している」とお墨付きを与えた。

前出のチャン氏は、林鄭氏は議論を呼んだ多くの提案を推進して成功を収めたことで、「逃亡犯条例」改正案も成立可能だと確信を持っていたと指摘。

「それまでの成功が重なって長官は自信満々だった。最初に抗議デモが起きたときにも、『心配ない。2日あれば事態は収まる』と考えていた。しかし長官は完全に間違っていた」と指摘する。

林鄭氏は先週の会合で、逃亡犯条例改正案は自身の進めたことで、「香港の制度の大きな抜け穴を塞ぐ狙いがあった。中央政府からの指示や強制はない」と説明した。

林鄭氏は逃亡犯条例改正案の成立を目指したことについて「状況を考えれば非常に軽率だった。香港の住民の間に中国本土に対する大きな恐怖と不安があり、それをわれわれは十分に感じ取り、把握していなかった」と語り、深い後悔の念を示した。

同氏は会合で、暗い見通しを示した。

9月2日、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官(写真)が先週、実業家グループとの非公開会合で、香港の政治危機を巡り「言い訳のできない大混乱」を引き起こしたとし、選択肢があるなら辞任すると話していたことが分かった。香港で開かれた記者会見で8月撮影(2019年 ロイター/Thomas Peter)

警察は今後も「暴力をエスカレートさせた」容疑者の逮捕を続けると断言。事態がいずれ好転するというバラ色の未来を示すのは甘い考えだと強調した一方、香港はいずれ「再生する」との期待も明らかにした。

さらに「香港はまだ死んでいない。極めて重い病にかかっているが、まだ生きている」と述べた。

*配信済みの記事に情報を追加し、再構成しました。

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