June 23, 2015 / 1:29 AM / 4 years ago

コラム:「イスラム国」との戦争はどう終わるのか

[19日 ロイター] - 「これがどう終わるのか教えてくれ」。2003年のイラク戦争開戦から間もないころ、ペトレイアス米陸軍大将(当時)は、1人のジャーナリストとの私的会話でこう切り出した。後に、ペトレイアス氏はその問いを何度も繰り返すことになる。

 6月19日、イスラム国との戦争がどう終わるかという質問は、実際のところ、戦争後のイラクとシリアがどんな姿になるのかという問いを意味する。写真はイスラム国への空爆に参加している米軍の戦闘機。18日撮影(2015年 ロイター/Hamad I Mohammed)

当事の米政権は紛争から抜け出す方法を模索しており、ペトレイアス氏の質問には、他の当局者たちの混乱した考えを整理する意図があったのだろう。結果的にはイラク戦争は、米軍が当初見込んでいたよりもはるかに複雑なものになった。

ペトレイアス氏の問いかけに対する最も重要な答えは、「それ」は終わらないということだ。確固たる結末を迎える戦争というものはめったにない。1945年のドイツ軍敗北や2009年のスリランカ内戦終結は例外的と言えるだろう。たとえ殺りくが終わっても、政治などを通じて対立は続く。

米軍撤退後のイラクは、混乱の一途をたどった。かつてペトレイアス氏が率いた米軍増派部隊を支えたスンニ派組織の一部は、今は過激派組織「イスラム国」と共に戦っている。「多民族国家イラク」の試みは、米軍がイラクを離れる前から瓦解が始まっていたのだ。

ソマリアやインドなどの歴史は、帝国型の巨大権力が去った後、残された者同士の間で権力争いが起きがちであることを教えてくれる。アフガニスタンでも、それはすでに起こっている。

とはいえ、イラクやシリアでイスラム国との戦争も永久には続くわけではない。それはどう終わるのだろうか。そして、そのために今、何ができるのだろうか。

米国家安全保障会議(NSC)の元イラク部長であるダグラス・オリバント氏は今月に入り、イスラム国の拡大には限界があるように見えると語った。イスラム国はこれまで、イラクとシリアおよびリビアでは、政府の基盤が弱かったスンニ派地域で勢力を伸ばしてきた。一方で、ヨルダンやサウジアラビアやトルコなど、より機能的な国家や他の民族・部族との衝突では苦戦している。

昨年には一部の終末論的な分析が「イスラム国による中東全域の支配」を示唆したが、それはなさそうである。そうであれば課題となるのは、いかにして比較的限られた場所に彼らの拡大をとどめ、そこから押し戻すかだ。

イスラム国は最近、イラクの要衝ラマディやシリアの世界遺産都市パルミラなど、注目度の高い場所を制圧した。「旧来の」アルカイダとは違い、領土を抑えることは彼らの存在理由の核となっている。たとえ西側相手の戦いでも、奇襲攻撃を仕掛けるだけでは十分ではない。だからこそ、ラマディとパルミラでの勝利は彼らにとって、イラクでの他の地域での敗北を埋め合わせるほどに極めて重要なのだ。

恐らくイランを除き、イスラム国に対して一貫した戦略を持っている国はない。米国および西側は、イラクでは戦略を持っている一方、シリアでは戦略と呼べるほどのものはない。しかし、それは見掛けほど愚策ではない。イラクでイスラム国を倒せば同組織の正当性を打ち砕き、地域での支配力を弱らせることになるからだ。

イスラム国が自ら公言する目標の1つは、イラクとシリアの国境を解体し、新たな「国家」を築くことにある。しかし多くの専門家は、両国の崩壊は大きな混乱を招くため、ほぼ誰も望んでいないと指摘する。イラクのスンニ派とシーア派とクルド人は、お互いに忌み嫌っているかもしれないが、それぞれ別の国家になるのは無理がある。スンニ派とクルド人はシーア派の多いイラク南部の石油収入の恩恵を受けており、一方で小さなシーア派国家だけでその石油資源を守ることはできないはずだ。

今から2年前、一部の専門家は、シリアは崩壊する可能性があると指摘していた。しかし現在、その可能性はかなり低い。外交官らは声高には言わないが、より可能性が高いのは、恐らくアサド大統領ではないダマスカスの誰かが、現在と同じ国境を持ったまま国を支配し続けるというシナリオだ。

つまり、イスラム国との戦争がどう終わるかという質問は、実際のところ、戦争後のイラクとシリアがどんな姿になるのかという問いを意味する。

ペトレイアス氏ら米軍司令官のアドバイザーも務めていた英国の元特殊作戦部長グレーム・ラム氏が指摘するように、イラクが抱える現在の問題は、シーア派中心の政府が、シーア派民兵やイランからの支援に依存しすぎていることだ。スンニ派住民の多くは、イスラム国がいなくなった後には、そうしたシーア派による報復行為と残忍な支配が待っているのではないかと恐れている。

今の状況を変えるには、スンニ派にとっても安全なイラクの未来図を作成することが肝心だとラム氏は語る。もしスン二派がそうした未来図を可能性のある現実として受け入れることができれば、彼らの一部がかつてアルカイダを掃討したように、イスラム国とも戦うようになるだろう。しかし、これには、現在のイラクとは全く異なる政治環境が必要だ。

シリアでは、西側各国はイラクで徐々に手に入れたような理解が不足している。

西側などの当局者の多くは、米ロと地域大国の間などシリア以外の場所で、今後に向けた大枠が決まるとみている。それには、訴追免責などアサド政権側への譲歩が含まれるかもしれない。

「カリフ」(預言者ムハンマドの代理人)を頂点とする国家を樹立し、それを維持しようとすれば、イスラム国は大きな問題に直面する。国家ではない組織が政府の強い反対を受けながら広大な地域を領土にしようとする試みは、これまで歴史的に失敗に終わってきた。パキスタンの「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」しかり、ナイジェリアの「ビアフラ戦争」しかりだ。

もちろん、コソボやエリトリア、南スーダンなど、一握りの例外はある。しかし、国として認められるためには一定の国際的支持が必要だった。イスラム国にそれはほぼ不可能だ。

非国家組織と国家の間には、非常に大きな差がある。国家は国際的財政援助を求めたり、武器を購入したり、他国政府からの諜報支援を期待することもできる。イスラム国は武装組織としては資金力があるかもしれないが、すでに限界を感じているはずだ。

イスラエルの情報機関は5月に海外メディアに対し、昨年の中盤には月間6500万ドル(約80億円)あったイスラム国の収入が、今では約2000万ドルにまで落ち込んでいると明らかにした。税収や身代金収入は増えているが、特に石油収入が減った。

対イスラム国では、米国主導の有志連合による空爆が効果を見せており、現地部隊への新たな武器供与も効いてくるはずだ。専門家はラマディ陥落の大きな要因は、対戦車兵器の不足だったと指摘する。シリア北部のアインアルアラブ(クルド名コバニ)では、空爆とクルド部隊への武器供与がイスラム国を撃退する力となった。

米国などの軍事顧問増派も、あまり多過ぎると外国による新たな侵攻と受け取られるかもしれないが、変化をもたらす可能性がある。

だが、イスラム国に敗北の兆しはまだ見えない。

*筆者はロイターの防衛担当記者で、シンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」の理事も務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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