[ロンドン 30日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米政府が今月、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]を禁輸リストに載せたことで、欧州の通信事業者は米国に追随して調達先を他社に切り替えるか、もしくは事態の改善を期待して静観するかの決断を迫られている。総合的に考えると、静観するほうが良さそうだ。
英BTグループBT.Lや英ボーダフォンVOD.Lが既に実施したように、次世代通信規格「5G」ネットワーク構築事業からファーウェイのスマートフォンを排除するだけなら容易にできる。
禁輸措置に対応し、グーグルGOOGL.Oがファーウェイへのソフト提供を停止したことで、グーグルのアプリが好まれる欧州においてファーウェイ端末は使い物にならなくなる見通しだからだ。より難しいのは、電波塔やサーバーなど、同社のインフラ設備の購入を断ち切るかどうかの判断だ。
欧州通信事業者にとって、ファーウェイとの設備取引を中止する論拠は、同社の部品調達支出のうち、米国の半導体製品向けが3分の1を占めているという事実(ローゼンブラット・セキュリティーズ調べ)だ。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによると、ファーウェイは330億ドル規模の世界移動通信インフラ市場の31%を支配しているが、米国からの調達を断たれれば通信網を円滑に動かすのに必要な部品、ソフトウエア、交換部品の製造が難しくなるからだ。
欧州事業者は影響を免れるために今すぐ取引先を切り替えることも可能だが、それには代償を伴う上、時間もかかる。BTは2016年にネットワーク設備の取引先からファーウェイを外し始めたが、今なお手続きが続いている。リフィニティブの推計では、欧州通信事業社の上位10社は今年、合計売上高の19%を設備投資に回す計画だ。ファーウェイ製品をノキアNOKIA.HEやエリクソンERICb.STの製品に切り替えれば、投資はさらに増えるだろう。
静観すべき根拠になるのは、ファーウェイと通信事業者がともに、米国の禁輸措置による影響を和らげるため主要部品の在庫を積み上げているという事実だ。複数の業界筋がこのことを確認している。ファーウェイの事業に詳しい人物は、同社が少なくとも1年分の部品を既に確保したと述べた。
それよりも説得力のある論拠は、トランプ米大統領の気まぐれさではないだろうか。トランプ氏は既に、ファーウェイ問題が米中貿易協議の枠組み内で解決できる可能性を示唆した。欧州通信事業者にとっては、これだけでも静観すべき十分な理由になる。
●背景となるニュース
・トランプ米大統領は23日、ファーウェイを巡る不満は貿易協議の枠組み内で解決できるかもしれないと述べた。ただ、同社のことを「非常に危険だ」とも話した。
・英ボーダフォンと、英BT傘下のEEは22日、ファーウェイのスマートフォンを5Gサービスから除外した。
・米商務省は16日、ファーウェイに対する米製品の輸出を禁止すると発表した。
・ファーウェイ端末は、中国以外ではグーグルの基本ソフト(OS)、アンドロイドを利用しているが、グーグルの親会社アルファベットは米政府の禁輸措置を受け、ファーウェイとの取引を中止した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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