*12:08JST 日経平均は続伸、ハイテク集中買いがけん引する構図はどこまで続くか
日経平均は続伸。300.47円高の31101.60円(出来高概算5億7402万株)で前場の取引を終えている。
25日の米株式市場でダウ平均は35.27ドル安(-0.10%)と5日続落。債務上限交渉を巡る先行き不透明感が重しになったほか、経済指標が軒並み予想を上振れたことで追加利上げが織り込まれたことも売り圧力となった。一方、前日引け後に発表されたエヌビディアの強い決算を受け、半導体株を中心にハイテクに買いが入り、ナスダック総合指数は+1.71%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は+6.80%と3日ぶり反発。エヌビディアの決算は前日の東京時間においてすでに一部織り込み済みではあったが、SOX指数の上昇に刺激を受けたハイテク株高が続き、日経平均は108.48円高からスタート。一時140円台に乗せた円安・ドル高も支援材料となり、その後は31000円を挟んだ一進一退が続いた。
個別では、東エレク8035、アドバンテスト6857、スクリン7735をはじめとした半導体株が軒並み大幅に上昇し、芝浦メカトロニクス6590は連日の急伸。TDK6762、太陽誘電6976のハイテク関連も全般高い。丸紅8002、三菱商事8058、伊藤忠8001の商社が強い動きを見せ、JR東海9022、JAL9201、エアトリ6191、寿スピリッツ2222などのインバウンド関連には買い直しが入っている。レーティングの格上げが観測されたイビデン4062、新光電工6967、三菱重7011、川崎重7012は大きく上昇。メキシコでの新拠点開設を発表した三井ハイテック6966は大幅高。国内証券が目標株価を引き上げた凸版印刷7911も高い。ユーグレナ2931は、経済産業省が日本の空港で国際線に給油する燃料の1割を再生航空燃料にすることを義務付けるとの報道を受け、大幅高となっている。
一方、三菱UFJ8306、三井住友8316の銀行、日本製鉄5401、JFE5411の鉄鋼、INPEX1605、石油資源開発1662の鉱業など、景気敏感やバリュー(割安)系が軟調。また、第一三共4568、武田薬4502の医薬品、NTT 9432、KDDI9433の通信、三井不動産8801、三菱地所8802の不動産、東京電力HD9501、関西電力9503の電力など、ディフェンシブ系のセクターが冴えない。
セクターでは空運、陸運、精密機器が上昇率上位に並んだ一方、鉱業、石油・石炭製品、電気・ガスが下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の42%、対して値下がり銘柄は52%となっている。
日経平均はハイテク株高がけん引する形で続伸、再び31000円を捉えている。ただ、東証プライム市場の値上がり銘柄と値下がり銘柄の割合が拮抗する日が多くなっており、本日は値下がり銘柄の割合の方が高い。マザーズ指数や東証グロース市場指数の低迷ぶりからも一目瞭然のように、新興市場を中心とした中小型株は「蚊帳の外」状態が続いている。
米国でもナスダック指数やフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の強い動きが続いているが、一方でダウ平均は4月以降の保ち合いを下放れてきている。生成AI(人工知能)ツールの普及を背景にハイテクブームが巻き起こっていることは悪いことではないが、ハイテクに一極集中しているような今の相場は心もとない。
東京証券取引所が発表する投資部門別売買動向によると、海外投資家は5月第3週(15-19日)も現物・先物合算(ミニ除く)で1兆3434億円と大幅な買い越しを見せ、現物だけでは7167億円の買い越しだった。足元ではロングオンリー、いわゆる買い持ち高しか作らない長期目線の海外投資家も日本株買いに動きはじめたとの指摘が聞かれている。投資委員会などで承認を得た後に動くプロセスを踏まえると、これら実需筋の買い越しはまだ続く可能性が高く、日本株の底堅さは続きそうだ。
一方、投資部門別売買状況によると、個人投資家や年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行の売り越しは続いており、国内勢はほとんど足元の上昇相場に追随する動きを見せていない。日本株への期待が高まっているとはいえ、期待だけでどこまで海外勢が買い越しを続けるのかも未知数だ。
一部外資証券が、日本での近々の解散総選挙および日本維新の会の伸長と連立政権入りの可能性を示唆するレポートを発行している。海外勢の日本株買いの背景にはこうした政治への期待もあるようだ。しかし、候補者の擁立を巡って自民党と公明党による亀裂が生じているために解散へ踏み切ることは不可能との指摘もある。また、25日に開かれた7&iHD3382の株主総会では対立する米ファンドの提案が退けられた。これから株主総会が本格化していくが、海外勢への日本企業への変革期待が尻すぼみに終わる可能性も頭の片隅に置いておきたい。
午後の日経平均は堅調な動きが想定されるものの、上値追いには慎重になるべきか。来週は中国で購買担当者景気指数(PMI)、米国ではISM製造業景気指数、雇用統計など重要指標が発表される。米債務上限問題も合意に近づいていると報じられているが、最後まで予断を許さない。海外動向を見極めたいとの思惑も働くなか、国内勢の追随買いは引き続き期待しづらく、海外勢の買いがどこまで続くかを見極める局面に入ったといえよう。(仲村幸浩)
《AK》
当コンテンツはFISCOから情報の提供を受けています。掲載情報の著作権は情報提供元に帰属します。記事の無断転載を禁じます。当コンテンツにおけるニュース、取引価格、データなどの情報はあくまでも利用者の個人使用のために提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。当コンテンツの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。提供されたいかなる見解又は意見はFISCOの見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。情報内容には万全を期しておりますが、保証されるものではありませんので、万一この情報に基づいて被ったいかなる損害についても、弊社および情報提供元は一切の責任を負いません。 【FISCO】