May 7, 2020 / 5:06 AM / a month ago

迫りくる我が国の介護崩壊の危機


*13:56JST 迫りくる我が国の介護崩壊の危機
米国におけるコロナウイルス感染死亡者7万1,400名(5月6日)のうち、2割以上が高齢者施設で死亡したことが報じられた(ニューヨークタイムズ)。高齢者施設は、感染拡大のリスクが高く、医療機関と同様の防護対策が必要であるにも拘らず、マスクや防護服が不足している。新型コロナウイルスの感染でスタッフが入院したり、感染を恐れたスタッフが離職することにより、「介護崩壊」が起こってしまった事案が全米各地で発生している。

4月17日、米ニュージャージー州の介護施設で17人の遺体が見つかった。収容人数4人の非常に小さな遺体安置所の中に、17人もの遺体が安置されているのを警察が発見したという。この介護施設では最近68人もの関係者が死亡している。同施設の共同所有者の一人は、時間外や休日勤務の問題が発生していると訴え、入所者76人と同施設の2棟に勤務するスタッフ41人が新型コロナウイルスに感染していると述べた。

一方、欧州でも、介護施設の高齢者の感染及び死者数の増加の実態が浮き彫りになってきている。日本と同様に高齢化が進んでいる欧州について、WHOハンス・クルーゲ欧州地域事務局長は「欧州で蔓延している新型コロナウイルス感染のうち介護施設での死亡者の割合が全体の死亡者の半分まで占める国がでている、想像を絶する人類の悲劇が起こっている」と述べた。

欧州における新型コロナウイルス感染死亡者のうち介護施設入所者が占める割合は、フランスが49%(4月15日現在)、ベルギーが49%(4月16日現在)。ポルトガルが33%(4月17日現在)、スペインが53%(4月17日現在)となっている(AFP5月1日)。英国では、イングランドとウェールズで死亡した人の3割が介護施設で亡くなっていることが明らかになった(国家統計局4月28日)。また、集団免疫獲得という独自の政策をとるスウェーデンでは、スウェーデン公衆衛生局疫学者アングース・テグネルが「我が国の死者のうち半数は、高齢者施設の中で集団感染した人々だ」(ニューズウィーク5月1日)と述べている。

我が国においても介護にかかわる問題が顕在化してきている。我が国には、およそ667万人の要介護・要支援認定者がおり、573万人が介護サービスを受給している(居宅サービス受給者389万人、地域密着型サービス受給者89万人、施設サービス受給者95万人、令和2年1月「厚労省介護保険事業状況報告」)。また、有料老人ホーム(約1万3,500施設)、特別養護老人ホーム(約8,000施設)、その他グループホーム等(約1万2,000施設)が介護サービスを提供している(平成29年度社会福祉施設等調査の概況)。

そのような中、残念ながら、全国の介護施設において新型コロナウイルスの集団感染が発生し、大きな問題となっている。我が国においても欧米に見られたような医療崩壊のみならず、介護崩壊の兆しが表れている(介護崩壊とは、一般的に「介護施設経営上の事情(自主休業など)、衛生用品などの物資不足や介護スタッフ不足により、介護サービスが提供できず、要介護者要支援者に対する介護支援が滞る事態」をいう)。最近の集団感染の事例として、北海道の介護老人保健施設「茨戸アカシアハイツ」にて68人(札幌市5月6日)、東京都の特別養護老人ホーム「北砂ホーム」にて39人(江東区4月29日)、千葉県の障害者福祉施設「北総育成園」(香取郡東庄町4月21日)にて118人の感染者が発症している。

介護の現場においては、サービスの特性上「3密」が避けられず、防護服、マスク、ゴム手袋などの防護用衛生用品の不足が喫緊の課題となっている。また、PCR検査陽性患者をただちに病院に収容することなく、施設で待機させられる事例も多数あるとのことである。認知症の陽性者が、施設内で徘徊することにより他の入所者や職人に感染させる危険を孕んでいるという。また、職員に陽性者が発生した場合、その職員及び濃厚接触者が自宅待機や隔離処置となり介護現場の人手を削がれてしまい、現場の労力が不足し、残った職員には負担がのしかかる。また、自身の家族への感染を防止するため施設周辺の宿泊施設を要求しても断られ、やむなく自施設の会議室等への泊まり込みを行う事例も多数報告されている。

厚労省は1月6日以降、「職員の確保」「感染の拡大防止」「衛生用品の確保」について多数の通知を発簡して、医師会や行政機関に対し注意喚起や業務継続の依頼を行っている。さらに、2月13日に「新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策」を、3月10日には「同第2弾」を発表した。そのうち保育・介護施設関連には約100億円の支援が盛り込まれているものの、支援内容は「消毒液購入費」「施設の消毒費」「地方自治体の広報・啓発経費」「介護施設等の多床室の個室化改修費」となっている。残念ながら、現段階で、介護職員への手当て増額、介護現場の十分な防護用衛生用品の優先配布や介護施設の高齢陽性患者の優先入院などの制度的問題点への対策がとられていない支援内容となっている。介護崩壊阻止のために、是非とも政府の有効で目に見える迅速な支援体制の実現を期待したい。
《SI》

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