August 2, 2019 / 9:07 AM / 19 days ago

貿易戦争、トランプ、ファーウェイ、今後の中国の関わり方(1)【中国問題グローバル研究所】


*18:00JST 貿易戦争、トランプ、ファーウェイ、今後の中国の関わり方(1)【中国問題グローバル研究所】
【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信しているフレイザー・ハウイー氏の考察を2回にわたってお届けする。

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トランプ氏が二党の支持を得ていると主張できる分野はほぼ存在しないが、対中国の政策は、二党および世界中の多くの有権者に活力を与えた分野といえる。トランプ氏に中国政策はあるのか。これは多くの場合明確ではない。政策とは、いくつかの特定の目標を達成するための明確で一貫性があり、包括的な一連の措置および法律を意味する。トランプ氏の政策や目標を明確に説明できる人はほぼ存在しないが、彼が中国、そして中国の多くの国際規範への違反、貿易や商慣行の濫用に対し堂々と発言する意思や中国からの輸入品に関税を課す姿勢は、何十年にもわたって中国が関与するすべての分野で最も率直でダイナミックな議論を引き起こすきっかけとなった。

トランプ氏は、任期が一期であろうと二期であろうと、自身の政権よりも相当長く続くであろう中国問題のパンドラの箱を開けたのである。中国と直接取引したことのある多くの人々にとって、トランプ氏の不満は納得のいくものである。何十年もの間、ビジネスマンたちは、中国市場の将来の成長を公に称賛し、中国の指導者たちに優遇されようとへつらう一方、中国でビジネスを展開することの難しさを内々に訴えてきた。中国が友好と平和の言葉を口にしながらも、南シナ海のほぼすべての権利を主張し、人工島を建設し、約束を破ってそれらの島を即座に軍事拠点としていることに、隣国は警戒感を抱いている。中華人民共和国が自ら制定した憲法に従うことのみを主張してきた弁護士や反体制派のように、チベットや新疆の民族も長年にわたり迫害を受けてきた。
豊かで繁栄した中国が自然に政治改革をもたらすという潜在的な希望に支えられた長年の関係に、トランプ氏が待ったをかけた。天安門事件後の関係維持モデルは、次に何が起こるかを想定する物差しとしては役不足だ。

選挙前、トランプ氏は貿易問題で中国に厳しく対処するとの公約を掲げた。2017年までは従来通りであったが、2018年には争いが露呈し始め、トランプ氏は中国だけでなく、EU、日本、韓国という米国の最も強力な同盟国に対しても、太陽光発電製品、鉄鋼、洗濯機、その他の商品に一連の関税を課し始めた。トランプ氏は、当初は500億ドル相当、その後2,000億ドル相当というこれまでにないほどの広範な品目に対し、関税を10%から25%に引き上げることを明らかにした。数字的な面もトランプ氏に味方した。赤字があまりにも大きかったため、中国の率直な反応として、同一の条件でトランプ氏に合わせることはできなかった。しかし、二国間貿易赤字に固執することは、一点のみに集中して全体を読み取ろうとするようなものだ。それは単に一つの側面であり、二国間の経済関係においては極めて限定的な側面だからである。

中国が米国からより多くの農産物やエネルギーを購入するという対話は、二国間の貿易赤字を調整することにはなるが、米国や他の外国企業が中国との間に抱えている真の問題に対処することにはならない。市場へのアクセス、中国国内の競争条件の不均衡、膨大な知的財産の盗用、強制的な技術移転は不満のほんの一部だ。これらはいずれも貿易の赤字を見るだけで理解することはできないし、サービスの貿易や資本移動をこのような狭い視野で捉えることは難しい。

しかし、トランプ氏の単刀直入なアプローチは、他の人々が一歩踏み出して議論を広げることを可能にした。貿易戦争は、単に貿易赤字に関するもの、もしくは中国が大豆を何トン購入するまたはしないかに係る問題であると考えている人物はいないと願いたい。しかし、貿易協定に対する期待には致命的な欠陥が存在する。トランプ流の「取引」は、あのパンドラの箱から飛び出した問題すべてに対処することはできない。

2018年初めにこれらの初期の動きが始まって以降、貿易戦争はニュースの見出しを飾っている。過去一年間、交渉は進展したり、暗礁に乗り上げたりの連続だった。期待は高まり、そしてまた裏切られる。トランプ大統領と習近平主席との短い会談は、数日間にわたる休戦とも言える事態をもたらすが、すぐさま双方の公式または非公式のチャネルで、相手側の不誠実なアプローチや深刻な意見の相違について主張し合い始める。

ファーウェイの取引は貿易交渉の一部なのだろうか。孟晩舟氏は、罪を摘発され、正当な制裁のために拘束されたのだろうか。それとも、より大きな議論を進めるためだけの人質として拘束されたのだろうか。世界最大の経済二大国の関係が崩れ、その相互関係を再調整していく状況では、なにが起きてもおかしくはないように思える。以前の破壊的打撃を受けた制限が一部緩和されたことで、ファーウェイは今回の停戦における最新の受益者となったが、これにより、非常に混乱を招くメッセージが国内外に発信された。トランプ氏の中国政策とは、具体的には何なのか。中国は、政治的説得にもかかわらず、米国の予測可能な政権に慣れ、その安定性を自らの利益のために利用し乱用してきた。トランプ氏は戦いを仕掛ける無限の力を有しているが、その戦いを終わらせる、または戦いに勝利することにおいてはそこまでの印象はなく、今の中国は混乱状態に陥っている。

しかし、現実には、米中間に「取引」は存在せず、二国間に存在する無数の問題に対処できる包括的な取引もあるはずはない。貿易と執行のメカニズムの特定の側面をカバーする合意はあるかもしれないが、その基盤となる国の経済インフラは根本的に異なる。その合意でさえ、名称が変わったこと以外特に変更された点はなく、まだ発効していないNAFTAの再交渉の結果とほぼ変わらないかもしれない。

すでに起こっていることと言えば、世界のサプライチェーンの再編と世界の工場としての中国の役割の変化である。ここ数年、中国の製造コストは上昇しており、一部の産業においては最も安い生産国ではなくなっている。製造業者はすでに生産拠点を中国から移しており、移転先が米国であることは少ないが、東南アジア、または韓国や日本に戻すといった動きがみられている。自動化とロボット工学は、熟練度の低い多くの労働者への依存を減らした。米国で販売する「中国製」の商品には、利点はほとんどなく、懸念される事柄が数えきれないほど存在するため、中国で製造される製品は中国市場向けになっていくことが予想される。

※1:中国問題グローバル研究所
grici.or.jp/

この評論は7月20日に執筆

(「貿易戦争、トランプ、ファーウェイ、今後の中国の関わり方(2)【中国問題グローバル研究所】」へ続く)


《SI》

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