August 9, 2019 / 7:58 AM / 3 months ago

トランプ、商人から外交官へ(3)【中国問題グローバル研究所】


*16:50JST トランプ、商人から外交官へ(3)【中国問題グローバル研究所】
【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、アーサー・ウォルドロン教授の考察「トランプ、商人から外交官へ(2)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。

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では、中国および世界にはどのような影響があるのだろうか。

中国の外交は、長期にわたり外国の役人に賄賂を贈ったり、貧しい政府に金を貸したりする無限の資金を以て、資金の受領者を罠にはめてきた。返済できなければ、港湾などの資産を中国に明け渡さなければならない。推定では、少なくとも1000億ドルがこうした用途に使われている。この資金が資本不足の中国になぜ投資されないのかを考えるまでもなく(おそらく、多くは偽装された国外への資本流出である)、中国の人民元外交が困難に陥ることは間違いない。


2049年までに中国を世界最強の国にすることが表向きの目的である中国の巨大な軍備増強計画も同じである。他国を強制しようとする試みが、おそらくほとんどの場合には自殺行為に近い恐ろしい戦争へとつながるであろう世界において、「力」をどのように理解しているかを考えるべきである。中国はすでに、軍事設備に巨額の投資を行っており、この設備が非常に優れている点に世界の他の国々は脅威を感じている。この動きは中国海軍が世界中に基地を建設し始めたことで知られるようになった。こうした軍隊の維持に必要なコストは、研究開発費を除いてもすでにかなりの額にのぼる。軍隊を動かすことに伴う致命的な危険を考えると、現在の大規模な軍備拡大はそれらが使用されないまま宝の持ち腐れになる可能性が高い。


しかし、最も差し迫った問題は国内にある。外国からの投資が撤回され、工場は閉鎖、他国における生産チェーンが再編されている。中国は実際、輸出競争をしている他の国と差別化するようなものを何も提供していない。

巨大な人口は、政府によって一定の生活水準と退職後の生活を約束されている(これは都市部でのことで、農民は実質的に自助努力となる)。アメリカの社会保障やメディケア制度以上に、これらの約束がどのように守られるかは誰にもわからない。現時点で考えられる唯一の方法は、約束された金額を給付できるよう通貨を膨張させ、購買力のない通貨にすることである。


この解決不能な問題の結果として、不穏な状況を迎えた後、異なる解決策を推進する競合派閥へと党の分裂が徐々に進むだろう。ゴルバチョフがソ連の実権を握った時に直面した状況と似ている。国の終わりは、欧米では通常「崩壊」と呼ばれているが、それをおそらく最も熟知しているロシア人や中国人は、その言葉を使わない。ロシア語ではraspad「распад」、中国語ではjieti「解体」で、どちらも「分解」と解釈する。 中国が、「中国」として残ったとしても、構成要素が徐々に分解していくのをどのように回避できるのかはわからない。20世紀初頭の中国で最も著名な学者だった胡適(1891-1962)の先見の明のある言葉を思い出してみる。(※訳注:胡適は1935年、中国はただ堪えて待っていればいずれ日本が自滅するという趣旨の評論を発表していた。)放っておいても中国は大戦の後に統一されたが、その後の中国の統一と標準化(習近平氏の政策などもそうである)に向けた試みは結局、分裂・分解へと向かっているようにみえる。KGBを有する主体として、ソ連は、あたかも最初から分裂する運命であったかのようだった。中国の地図には、分離線がすでに書かれているかのように見える。


次に、香港について触れる必要がある。中国が国民に望ましくない法律を強要しようとする試みに反対する前例のない大規模デモは、おそらくこの問題の最初の兆候である。政府側はこれを全く予期しておらず、考えていたよりも鎮火させることは難しそうである。北京派の政治家たちからしても、普通選挙権をめぐる基本的な要求が満たされない限りこうした事態は生じる。反面、中国はほとんど恐れていない。仮に、最高責任者が民主的に選出されたとしても、中国との良好な関係を維持しようと苦心するだろう。


中国政府は明らかに同様の見解を保持していないが、本文の執筆時点で、中央政府が全く何も行動していないことは、中国政府が何をすべきかわかっていないことを示唆している。最終的には「武力に訴える」必要があると言う人も多いだろう。これもまた、例えば1989年の天安門の大虐殺のように、世間知らずの抗議者たちが、人民軍が発砲するとは思わなかった事件よりも大変な問題となるだろう。実際、人民解放軍は強く反対していたことを、事件後30年が過ぎ、中国政府がついに何かが起こったということを認めたことで、我々も知ることができた。さらに、香港は中国にとって数兆ドルの価値がある。その香港を破壊することは上海に打撃を与えるより重大な結果をもたらすだろう。

著者自身も、故人となった最高位の元人民解放軍司令官を儀礼訪問した際、間接的に同じことを言われた。すなわち、党は軍隊を頼れないということで、これは今後起こりうる問題の基になるだろう。


では、関税戦争はどのように終わるのだろうか。中国は譲歩案を見つけるよりも、交渉における立場を軽率にも固定化したため、暫定協定のような解決ではなく、ストライキと反撃がますます激しくなることが予想され、中国が状況をコントロールできなくなるだろう。


中国の制度が世界の貿易制度と両立しないことにより、中国は常に、特別な処置がなされた場合のみ、世界経済に参加することができた。中国は外国製品を輸入し模倣するというソ連が決していしなかったことをしているが、中国の構造を支える梁である基本的な経済構造は依然として1950年のソ連時代のものである。自由経済は、どのレベルであってもそうしたシステムと相互作用することはできない。これは、異なるねじ山を有するパイプを螺合したり、AC電流とDC電流を混合したりできないのと同じである。中国は、真に自由な市場経済になるように改変するか、それとも徐々に遅れをとるかの選択を迫られるだろう。


トランプ氏はThe Art of the Deal(トランプ自伝、「取引の芸術」、1987年)で有名である。彼が知るのはここに書かれていることのみであり、国際政治ではない。しかし、トランプ氏は中国から学んでいる。かつてトランプ氏が、米中両国の納得がいくような解決を望んでいたことは知られていた。しかし今や習近平氏に裏切られ、友情も冷めてしまったようだ。習近平氏が中国経済に世界経済との互換性をもたせたいと思っていても、彼では実現できないかもしれないことを、トランプ氏は一層理解するようになった。そうなればトランプ氏は、自分の意志ではなく、遠い将来に向けた協力を推し進める一方で、中国の違法な活動に対してより多くの関税と一般的な制限を課すだろう。


関税は貿易問題の最適な解決策ではない。しかし、インセンティブや取引パターンは劇的に変化する。この場合、彼らは中国に損害を与えており、中国にはこれに対処する効果的な方法がない。未解決の問題が長引けば長引くほど、世界経済の構造が変化し、中国は隅に追いやられる。中国の「台頭」は、正当化できない、自信過剰の時代からの、やや時代遅れの説得法と見られるだろう。


そうなれば、トランプ氏の関税(民主党による撤回もほぼ考えられない)は、アメリカの鉄鋼やその他の製品を保護する以上の役割を果たしたことが明らかになるだろう。この関税は、世界経済システムの基本的な透明化と変化を加速させ、公正さ、合法性、透明性への道を拓いた。

※1:中国問題グローバル研究所
grici.or.jp/

この評論は7月18日に執筆

《SI》

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