August 22, 2019 / 11:27 PM / 4 months ago

人民元安が進行、「中国の夢」で外貨準備高は減少ループへ【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】


*08:22JST 人民元安が進行、「中国の夢」で外貨準備高は減少ループへ【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】

◆フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議の主要構成メンバー
シークエッジ グループ代表 白井一成
アイスタディ代表取締役社長 中川博貴
フィスコ取締役 中村孝也

【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】は、フィスコ・エコノミスト、ストラテジスト、アナリストおよびグループ経営者が、世界各国の経済状況や金融マーケットに関するディスカッションを毎週定例で行っているカンファレンス。主要株主であるシークエッジグループ代表の白井氏も含め、外部からの多くの専門家も招聘している。それを元にフィスコの取締役でありアナリストの中村孝也、アイスタディの代表取締役社長である中川博貴が内容を取りまとめている。2016年6月より開催しており、これまで、この日本経済シナリオの他にも今後の中国経済、朝鮮半島危機を4つのシナリオに分けて分析し、日本経済にもたらす影響なども考察している。


中国は世界帝国復興への長期的野望「中国の夢」をかかげており、第二次世界大戦までに及ぶ列強による植民地化の屈辱に復讐すべく、中国共産党革命100周年に当たる2049年までに、世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取するという「100年マラソン」完遂を目指しているとされる。

中国が急速な経済成長を遂げた2000年後半以降、当初は平和的な台頭を遂げてきた。その頃より経済規模で日本はもちろん、アメリカを上回る予想こそあったものの、国際的なルールに従う意向を示すなど、その行動が警戒されることは少なかった。

明確な変化が起きたのは、リーマン・ショック後ということになる。経済、軍事とも世界で圧倒的ナンバーワンであるアメリカの覇権に陰りが見えたという事象が、中国の行動に変化を起こしたのかもしれない。アメリカの経済成長が止まり(むしろマイナスになり)、中国が経済規模でアメリカを抜く時期が早まったという見方に加え、4兆元におよぶ財政出動を行い、世界経済を救ったという自負も、それを後押ししたものと思われる。資金力にものを言わせた外交、九段線の策定による強硬な領土の主張なども、この頃から始まることになる。

結果、周辺国が中国に対して警戒を強めて結束し、アメリカはトランプ大統領の誕生もあいまって中国に対する強硬姿勢を強めてきた。覇権が脅かされるレッドラインを越えたという認識をアメリカが持っているとすれば(持っているだろうと想定しているが)、トランプ大統領のしかける貿易戦争はアメリカがしかける施策の一側面に過ぎない。中国はアメリカの虎の尾を踏んだ状況にある。

米中貿易戦争により、中国の景気は減速しつつある。元売りも止まらない。足もとでは11年ぶりとなる元安が進み、1ドル7元を突破した。一般的には、元安はアメリカの関税引き上げを相殺すると言われているが、負の循環を増幅する側面もある。中国経済が崩壊するとしたら、どのようなループであるかは「中国経済崩壊のシナリオ(フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議、実業之日本社より)」に詳しい。P146~147にはシステムダイナミクス(※)による外貨準備減少のループが掲載されているので、それを元に現状を把握しておきたい。

中国経済が減速する場合の最大の原因は、「世界需要」の減少(−)と国内「製造業のコスト」増加(+)であり、習近平の「中国の夢」に端を発する地政学リスクのヘッジであるチャイナプラス1がそれに拍車をかけている。「世界需要」以外の要素は互いに強めあう関係のため、外貨準備減少ループが際限なく続く状況へ陥りつつある。

「中国の夢」の実現に向けては、「GDP倍増計画」が実行され(+)、これにともない「資本ストック」は増加(+)するが、それは「不良債権」の増加(+)を引き起こす。現状でも危機的とされる「不良債権」の増加は、「先送り/モラル崩壊」へとつながる(+)ことになる。それは「市場メカニズム不全」を通して(+)、「製造業のコスト」増加(+)につながっていく。「製造業のコスト」増加(+)は「製造業企業数」を減少(−)させることになる。

一方、「GDP倍増計画」は「消費刺激」を誘う(+)が、景気の先行き懸念などで賃金の上昇がなければ、「個人貯蓄減少」につながり(+)、しっかりとした社会保障などが整備されなければ、「社会不安/二極化拡大」が表面化する(+)。これは「労働者保護」を強化する(+)方向に働き、「製造業のコスト増加」につながっていく。「製造業のコスト増加」は、「貿易黒字」の減少(−)につながり、「外貨準備高」も減少(−)する。

「社会不安/二極化拡大」の表面化(+)は、不満を外にそらすという意味で「地政学/地経学リスク」を増大(+)させ、こちらも「製造業企業数」を減少(−)させることになる。結果、「貿易黒字」が減少(−)し、「外貨準備高」も減少(−)する。こうして「中国の夢」の推進は、「外貨準備高」の減少(−)ループを強化させることになる。足もとの米中貿易戦争は「中国の夢」がアメリカを刺激した結果だが、「世界需要」の減少(−)を通じて「製造業企業数」を減少(−)させ、そのループを更に強化する。

「外貨準備高」の減少(−)ループで人民元の信頼が低下することにより、他国による人民元を基準とした「外貨建て国債発行」が行えなくなる(−)。これは「人民元レート」にとって下落要因(−)となるため、「資産逃避」による人民元の流出(−)が加速するほか、「為替介入」による人民元買い・外貨建て資産売り(−)を行うことになる。これらはそれぞれ、「外貨準備高」の減少要因(−)となる。

「製造業のコスト」増加(+)、米中貿易戦争による「世界需要」の減少(−)は、「中国の夢」に端を発している。中国が「中国の夢」を追い続ける限り、負のループが際限なく続くことになる。

足もとでは、香港のデモをどう収束させるかもポイントになる。デモの長期化は社会不安を煽り、既述の「社会不安/二極化拡大」の表面化(+)からのループを強化し、中長期的に政治面および資本流失という観点から中国の体力を消耗させる効果がある。アメリカとしてはトランプ大統領が武力鎮圧となれば「貿易合意が困難になる」とけん制することで、デモの長期化を図る思惑もうかがえる。中国は現状、どのルートを辿っても負の循環に陥りやすい状況であり、四面楚歌に陥っている。


※システムダイナミクスとは:マサチューセッツ工科大学(MIT)のジェイ・フォレスター教授によって、1965年に創案されたシミュレーション手法。当該システムが内在しているフィードバックループを解析するのに適していると言われる。ローマクラブの「成長の限界」において示された世界モデルで有名。世界モデルでは人口、資源、汚染、食糧、工業などの関連がシステムダイナミクスで示された。



《TN》

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