June 4, 2020 / 10:41 PM / a month ago

新型コロナウイルスの世界で迫られる二者択一(2)【中国問題グローバル研究所】


*07:39JST  新型コロナウイルスの世界で迫られる二者択一(2)【中国問題グローバル研究所】
【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、フレイザー・ハウイー氏の考察「新型コロナウイルスの世界で迫られる二者択一(1)【中国問題グローバル研究所】』の続きとなる。

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ここ数週間、米国は中国を狙った容赦ない一連の措置を講じてきた。最初の標的であったファーウェイが再び標的となっている。チップの設計と製造に関する新たな規則は、米国製のソフトウェアやハードウェア上で設計または製造されたコンピュータチップをファーウェイが利用することを制限し、事実上ファーウェイの足を引っ張ることになる。

世界がウイルスによる不況から抜け出そうとする中、両国間の貿易戦争が再び始まろうとしている。ちょうど先週、トランプ大統領は、米国が「関係を完全に断ち切れば」、5000億米ドルの節約になるだろうと示唆した。これが何を意味するのかははっきりせず、トランプ氏のベストセラー『Art of the Deal』の二国間貿易版なのかもしれないが、これはアメリカへの信頼を醸成するものではない。同盟国も困惑している。中国経済が受けている圧力を考えると、第1段階の合意からすでに履行できそうにないが、第2段階以降に希望を抱く人はいるのだろうか。

このコラムでも論じたように、トランプ大統領は、連邦政府の退職基金が中国の上場企業に投資されることを制限しようとした。トランプ大統領の介入により、MSCIのグローバル指数と連動して一部が中国国営企業に投資される予定だった連邦退職貯蓄投資理事会の投資計画は中止された。資本戦争における最初の具体的な一歩を踏み出したNASDAQが発表した新しい上場規則は、特に中国企業の上場に影響を与え、中国の中小企業の上場が難しくなりそうである。ルビオ上院議員とホワイトハウスからの政治的圧力がこの動きに一役買っていると考えざるを得ない。

こうした経済的な緊張と動きの根底にあるのは、もちろん、ウイルスの感染拡大についてトランプ大統領が中国を非難し続け、武漢とそのウイルス学研究所で何が起きたのかを徹底的に調査する必要があるという事実である。トランプ大統領が感染拡大の調査を要求するのはもちろん正しいが、中国の隠蔽と初期の失敗があったとしても、トランプ大統領がその後の数週間から数カ月間にリスクや誤情報を軽視していたということを否定することはできない。トランプ大統領は、中国を激しく非難しながらも指導者の習近平氏を称賛し喝采するという、相反する人格を演じている。今日の中国の行動は習近平という一人の人物によって動かされている。中国に対して怒りを表しながら、その指導者を偉大な人物であり友人だと称賛することはできない。

この嵐が吹き荒れる中、中国は手をこまねいていたわけではない。ウイルスがヨーロッパ中に広がると、中国はヨーロッパ諸国の支援者としての役割を大きく見せるために、各地の感染対策に関与し、嫌がらせのような宣伝を展開した。ウイルスを米軍が中国に持ち込んだという無意味な説を展開し、ウイルス感染が拡大し始めた12月と1月の初期の行動を明らかにすることを一貫して拒否してきた。開放性と透明性は中国共産党と相容れず、彼らが情報提供を拒否すれば、何が隠蔽されているのかについて、さらに憶測が広がるだけである。

さらに、中国は反発する国への嫌がらせを躊躇することもない。オーストラリアは、早いうちに国内のウイルス感染拡大を抑え込むことに成功した国だが、ウイルスの発生についての独立した調査を要求した。これが中国を怒らせ、中国はお返しにオーストラリア産の牛肉と大麦の輸入を制限し、ワインと乳製品にも制限を拡大しようとしている。すでに打撃を受けている経済への追い打ちである。

これが、各国が直面しようとしているロックダウン後の世界だ。協調の世界ではなく、真の分裂と不信の世界である。これは前世代の冷戦とは異なる。また違った世界なのだ。

ソ連とその同盟国とのつながりは、自由世界のほとんどの人々の日常生活にはほぼ無関係であった。中国の場合はこれとまったく異なる。中国は、ほぼすべての主要経済圏にとって第1位か第2位の貿易相手国なのである。

トランプ氏は米国の大統領として初めて、貿易での不当な行為について中国を非難し、世界で責任ある役割を果たそうとしていない中国を非難した。多くの国々、特にアジアの国々が中国の台頭と嫌がらせを目の当たりにする中、中国の脅威に対応しようとする姿勢はそれらの国々の懸念に同調するものとして歓迎されたが、米国は各国を団結させリードすることができていない。その代わりに、中国を罵り、暴れまわって退場しようとしている。WHOを脱退するという脅しははったりかもしれないが、必要なのは、米国がWHOに関与することである。WHOが中国の影響力を過度に受けているという米国の主張は正しい可能性が高い。なぜなら、中国は自らの政治的利益のために国際組織を標的にし、大きく弱体化させることに重点を置いているからである。その最たる例は、台湾が国内での流行を阻止した際立った成功例であるにもかかわらず、台湾をWHOから除外したことである。米国はWHOにとって最大の財政的貢献者である。なぜもっと大きな義務と責任を負わないのか。医療における世界的な協調の必要性はかつてなく高まっており、たとえ米国が新たな機関を設立したとしても、適切に機能させるためには、中国が加盟しなければならない。なぜなら、歴史が示すように、中国は何世紀にもわたって人獣共通感染症の発生源となっているからである。

G・W・ブッシュ大統領とオバマ大統領の対中関与政策に戻すことはできない。すべてがうまく機能し中国が責任あるステークホルダーになることを期待して、中国に関与し貿易を行ったが、その実現には至らなかった。中国を刺激しないように、批判的な声は無視され、中国に対する批判はかき消されたり、せいぜい秘密裏に行われたりした。そのような時代のことは、今後のための解決策にも指針にもならない。

しかし、トランプ大統領が現在何をしようとしているのかは、まったく明らかでない。英国はある意味で、新しい世界的現実の試金石である。ボリス・ジョンソン首相は12月の選挙で勝利すると、EU離脱を進めることを計画し、自由貿易の海原を航海するグローバル・ブリテンを喧伝したが、その世界はもはや存在しない。EUへの関与を減らしたいというジョンソン首相の願いは、WTO、米国および中国とのFTAにかかっていたが、WTOは事務局長が任期を1年残して辞任することを表明し、[A1] 暗礁に乗り上げている。米国のFTAには、中国との取引を制限する具体的な条項が盛り込まれるだろう。ジョンソン首相は、米国と中国のどちらかを選ぶという非常に厄介な立場にあり、ほとんど動きがとれないと感じている。ジョンソン政権はすでに、与党の主要メンバーの一部からの激しい抗議にもかかわらず、英国の5Gネットワークの非中核部分の構築にファーウェイが参加することに同意した。それが、米国が提案するどのような協定においても調査の対象となることは疑いない。

しかし各国は、中国と米国の二者択一を望んでいない。中国は、世界的なリーダーシップをとる立場にも、世界的な称賛を集める立場にもない。40年間の経済成長の後でさえ、中国は世界のどこにも真の友人を作ることができなかった。そして現在のオーストラリアへの対応は、長年にわたり相互に有益な関係を維持したとしても発言が気に入らなければ敵対的になるという典型的な例である。中国帝国に住むことや、その属国になることを歓迎する人はいない。しかし、米国と米国のリーダーシップは、最も必要とされている時に失われてしまった。中国に向けられた言葉による攻撃や経済的な攻撃を喜ぶ人もいるかもしれないが、その果てに米国が実際に何を望んでいるのかは非常に不明確である。より開かれ透明性があり公平な中国を目指しているのかもしれないが、習近平総書記と中国共産党には届いていない。米国との恐ろしい対立に国を引きずり込んだだけでなく、国内的にも経済的なストレスがかつてなく強まっていることから、習総書記は国内で大きな圧力を受けている。これまで中国は世界と連携しながら経済問題から抜け出すことができたが、今回はそうはいかない。

おそらく中国指導部は、11月の米大統領選でトランプ氏が交代し、新たなアプローチが取られることを期待しているのだろうが、確実とは言えない。そもそも、11月では遅すぎる。政治の世界では1週間は長い時間だが、ウイルスの時代には特にそうである。社会が活動を再開するにつれ、さらなる感染拡大のリスクが現実のものとなり、それに伴って経済がさらに影響を受け、緊急対策がとられることになる。しかし、米国のムードも変化している。中国に厳しい態度をとることは、現在の政治情勢の重要な要素である。現在トランプ大統領が迫っている二者択一は和らぐかもしれないが、いつも通りにはいかないのである。


写真:INGRAM_PUBLISHING/アフロ
※1:grici.or.jp/


《SI》

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